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俺と彼女と幼馴染み
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しおりを挟む「っはあぁぁ……」
「今日は突き過ぎた……最後は痛くしてごめんな」
ティッシュで互いの陰部の他、夏実の涙や口元の露もポンポンと優しく拭いてやり、謝って彼女を抱き締める。
それでも首を横に振ってくれる夏実の優しさに嬉しくなって、愛しい頭も「いい子いい子」と撫でてやった。
夏実の呼吸が整い、「上も脱いで裸でくっつきたい」という彼女の要望に添って、全裸で抱き合うと肌の熱さとエアコンの冷感がちょうど良くて心地いい。
「今日から少しずつ、このお家で一緒に暮らすんだね」
俺の目を見つめながらそう呟く可愛い夏実に軽いキスを落として
「今日からよろしくな、夏実」
今夜の内に言いたかった言葉の一つを彼女に伝える。
「っ……」
俺の言葉を受けてまた顔を赤らめる彼女は実に可愛く、愛おしくて……。
もう一つ話して起きたかった話題を出すのをやめようかと躊躇してしまう。
「ねぇ、夏実」
とはいえ、野崎さんからあんな話聞いてしまった上に
「嘘をつくな、とか……何でも包み隠さず俺に話せ、とか……そこまでは強制したくはないんだけどさ」
この時点まで夏実が俺にその事を黙ってるのって、やっぱりなんか変だ。という結論に達した俺は
「月曜日から野崎さんの電器店で店番手伝いするって、ホント?」
なるべく優しい口調で、なるべく笑顔を向けながら夏実にそれを質問した。
「えっ……」
叱るつもりで言ったんじゃないのに、夏実の肩がピクンと跳ね、表情を曇らせる。
「いや、怒ってないし叱るつもりは全くないよ……けど、友達との約束とはいえ俺にもちゃんと報告してほしいって思ったぞ」
なるべく叱らないし、なるべく優しく語りかける。……それを意識したつもりでも、夏実にとってはそれも「叱る」に感じられたらしく
「ごめんなさい」
と彼女が弱々しい声で謝ってきた。
「いやだから怒ってないし叱るつもりじゃないって。ただ……」
俺は彼女の額に自分のをコツッと軽く当てて
「俺にもちゃんと報告して欲しかったなって、寂しくなった」
バツの悪そうな顔をする夏実に額のグリグリを施す。
「本当に怒ってない? 寂しくなっただけ?」
尚も弱々しい声を出す夏実に、俺はもう一回グリグリをしてやりながら
「怒ってないって。もう俺は保護者役じゃないんだから叱りもしないしそんな事で怒りはしない……けど、一緒に暮らし始める仲なんだからそういう報告は夏実の口から聞きたかった。黙ってるなんて水臭いだろ」
そう優しく語りかける。
夏実は「キュウウゥゥッ」と、身体のどこから出したか分からないような高い声を出して
「だって滉くんの受験勉強を応援してあげたかったんだもん……滉くんは嘘ついてた私と違って高校入ってすぐに大学の進路決めて勉強頑張ってるんだもん」
そう、少しずつ俺に教えてくれた。
ノザキ電器店は夏前からこの時期にかけて夏物家電の需要が高まる。特に梅雨明けしてからはエアコン駆け込み注文が殺到するらしく、この時期ご両親は毎年朝から晩まで店を空けているのだそうだ。
夏休みに入ると、滉くんは平日の日中に店番を担当するのだそうだが今年は予備校の予定もあってそういう訳にいかない。
「今年の夏は店番出来る人足りなくて滉のお父さん一人でお客様のお宅を回らなきゃいけないから大変らしいよ」という茉莉ちゃんの話を聞いて、夏実は滉くんに店番手伝いをかって出たのだそうだ。
「手伝いをするって私が言ったのは、夏休み前だったんだけど……たまたま新居をこっちに決めたでしょ? だから尚更都合良いよねってなって。実は今週の昼間とかから少しずつ手伝う内容教えてもらってたの」
そして既に夏実はノザキ電器店で働くべく手伝い内容を学んでいたとは驚きだ。
「まさかとは思うけど、夏実がこっちの物件がいいって言ったのってそれが原因か?」
「ううん! それは違う! 絶対に違う!! 私だってその為だけに湊人と暮らす家を決めようなんて思ってないよ。
確かに普段から茉莉ちゃんと滉くんとでよく遊ぶエリアではあるんだけど」
野崎さんから話を聞いた時、即座に「まさか」と頭を過ぎったんだが、そこは違っていたようでホッとする。
「俺、野崎さん……じゃなくて、滉くんのお姉さんから話聞いた時にさ、『バイト未経験の子だから迷惑かけると思う』とは言っておいたよ。本音を言うなら月曜日の朝に滉くんの親御さんと話してお願いしますって頭下げたいところだけど、今の俺は保護者役でもなければ夏実の夫でもない。ただの彼氏っていう、ある意味中途半端な立ち位置だからさぁ。俺がいきなり来てそんな事したら親御さんに怪訝な顔されるだろうからやらないけど」
「じゃあ、やってもいいの? お手伝い」
夏実がまた俺を見つめてそんな事訊いてくるから
「俺、夏実をそこまでビビらせるくらい叱ってきたのか?」
と思わず聞き返してしまった。
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