【完結】彼女が18になった

チャフ

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俺と彼女と幼馴染み

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「あれっ? 今日の夏実の団子頭、ちょっとオシャレになってるんだな」

 実家の門扉を閉めたところでようやく、夏実の頭が団子にアレンジがかかっている事に気付いた。

「もうっ! 湊人気付くの遅いよぅ。夏だし、今年はまとめ髪に凝ってみようと思ってね♪」

 夏実は少々不機嫌顔になりながらも、自慢げに細かな編み込み部分を俺に見せつけてくる。

「それ、完全に村川くんの影響だろうが」

 凝った編み込みも可愛くて似合ってるとは思うけど、どうしてもド変態新入社員のメガネ姿がチラついてしまう。

「てへ♡」
「まぁ……可愛いくて良いとは思うよ」
「ありがと♡」

 だが夏実の笑顔でそれも中和され、自然と和やかな気持ちに落ち着いた。

(まぁ、色んな人の影響受けるのは良い事だから、村川くんの顔がチラついても気にしてはいけないなぁ。実際夏実が一層可愛くなってるのは確かなんだし)

「明日はねー、お団子じゃなくてもっと可愛いヘアアレンジにするの。期待しててね湊人♡」
「うん、期待してる♡」



 薗田家の扉を夏実に開けてもらい

「おはようございます。遅くなってすみません」

 俺は相変わらずの丁寧な言い方で奥のリビングに居る筈の晴美さんに呼びかける。

「みなとくん! 久しぶり~!! 昨日お母さんから連絡あって、朝一ですぐ来ちゃった♪」

 だが、玄関前にすぐ来てくれたのは夏実の姉 菜央なおちゃんだ。

「菜央ちゃん久しぶり……あれ? ゆうちゃんは? 晴美さんが抱っこしてるの?」
「ううん、今朝はお義母かあさんに預かってもらってるの。だから昼前にはここ出ないといけなくて。まだ一歳だから何かしらの誤飲が怖いし」
「そっか……まだ一歳だもんな」
「そうなの。だから早朝の収穫終えて車出してすぐこっち帰ってきたってわけ」
「……それは遅くなってごめん」
「いいのいいの! みなとくん仕事大変なのになっちゃんとの生活の為に急いで新居見つけて忙しくしてたんでしょ? そりゃこんな時間になるまで寝ちゃうよねぇ~……ま、私は毎朝3時半に起きてますけどね!!」
「うわー……嫌味ヤバイな!!」

 夏実の姉なのだから、当然俺とも付き合いは長い。なので玄関先で突っ立ってるだけでこれほどポンポン会話が自然と弾む。

「んもぅ、2人ともそんなとこで喋ってないで……湊人も早く上がって!」

 俺と菜央ちゃんの親しげな会話にちょっといたのか、夏実は不機嫌な顔つきになりながら俺の腕をグイグイ引っ張る。

「あぁ、晴美さん待ってるもんな……お邪魔します」
「お母さんはリビングだよ。チョコの箱もいっぱいありすぎてどれ開けていいか分からないから冷蔵庫入れてるよー」

 菜央ちゃんは3人の会話をスパッとやめて、先にリビングの方へと廊下を歩き出した。
 その歩き姿はかつての、男なら誰しも振り向く白い肌と巨乳スレンダー体型ではなく……義父母と同居しながらの農家暮らしと待望の長男誕生の慌ただしさの表れとも言える健康的な小麦肌とふくよかな体型らしい感じの足音を立て、歩く度に色んな部位が軽く揺れてそうな身体のしなりをしている。
 他の男なら、きっとその変化にガッガリしてしまうのだろう。しかし俺としては昔から「晴美さんと菜央ちゃんは似ている」と感じていて、寧ろこの体型になるのは当然のことだったんじゃないかと思う。

(まさか農家の嫁と呼ばれる立場の人になるとは思わなかったけど……)

 俺は菜央ちゃんが昔から「ダイエット! ダイエット!!」と口にし無理をして男好みの体型維持をする苦労を横目で見ていたから「早起きして農業の仕事するのは大変だろうけどなんだか幸せそうだな」という感想を持ってしまう。
 ふくよかになったっていうだけで過剰な肥満状態になったって訳じゃない。現在授乳中の爆乳感からしてみれば今の方が体型バランスは取れているのかもしれない。



 菜央ちゃんを先頭に、隣では夏実に腕を抱きつかれながらリビングに入り

「おはようございます晴美さん」

 と俺から朝の挨拶をすると

「湊人くんおはよう。どの箱開けたらいいか分かんないから早く冷蔵庫開けて持ってきてちょうだい!」

 週末ゲームでストレス発散出来てる成果や今回の一件の効果が出ているのか、晴美さんの機嫌が幾分良さそうで「イージーモードだ」と少しホッとする。

「じゃあ冷蔵庫開けてきますね」

 女性3人には先に座ってもらい、俺は薗田家の冷蔵庫を開け、中央に押し込められている4箱の内の1つを取り出す。

(本当に晴美さんや菜央ちゃんの機嫌が良くて助かった。
 2人ともハードモードだったら冷蔵庫に仕舞わずその場で全箱の包みを開封してただろうからな……)

 一応中身はどれも同じ商品を注文していたし、夏実には「その内二箱は会社用だから!」と念押しはしておいた。だから逆に4箱全部無事な事に拍子抜ける。
 先に食べてしまってるのかと思いきや、ちゃんと俺を待っていてくれていた……それほどこの店からクール便で届けられたチョコレートのと、つまりはそういう事なんだろう。

(うーん……村川くんはチョコレートを小皿に移し替えて差し出してくれていたけれど、今回ばかりは箱に詰められた状態でそのまま出した方がいいだろうか?)

 しばし頭の中でその選択をグルグルと回した後、夏実に取り皿を出すよう頼んでみる。
 それから包装紙だけ開けた状態でテーブルの真ん中にそれを置いた。

「俺はホームページで画像見た程度だから実物はまだ知らないけど、やっぱり晴美さんが先に包みを開けて中をしっかり見てたあげた方がいいんじゃないですか? なんですから」

 俺はそう呼びかけ、食器棚に立つ夏実から取り皿を半分受け取って晴美さんと菜央ちゃんの前にそれぞれ置く。

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