【完結】彼女が18になった

チャフ

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俺と彼女と恋待つ時

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 確かに夏実の言う通り、スマホで現在の駅周辺の施設を検索してみると生活のイメージがしやすい。
 まだ部屋の内見もしていない状態なのに、電車に乗ってその場所に近付いていくにつれ、俺自身もワクワクしてくる。
 30の俺がここまでの気持ちになるくらいなのだから18の夏実はその何倍も何十倍も希望に溢れているのだろう。

「バイトもいいけど卒業前までに免許取っとけば? もう18だから普通免許取れるんだし自動車学校の金くらい出すしあの辺確か近くになかったか?」
「自動車学校の費用も出してくれるの??」

 「また30と18との金銭的価値感の差が出たか?」と思い、今度は真面目にゆっくり言葉を選んで返答してみた。

「そりゃあ出すだろ。これから一緒に生活していくんだし必要経費だよ」
「一緒に生活……」

 一応「必要経費」の言葉を使って上手い事言ってみたつもりだが、それよりも「一緒に生活」の方が18歳の心に響いたらしい。

「週末の同棲から始めていくとはいえ、目的は一緒に生活していく準備って事だから」

 それを感じ取った俺も、同じ言葉を自分の心に響かせてほっこりとした気持ちになっていった。

「そっかぁ……そうだよねぇ一緒に生活するんだもんね。それに、私が免許取ったら何かあった時に湊人を車でお迎え出来るもんね!!」
「それに今の車、10年使ってるから夏実の運転で傷付けても何とも感じないし」
「わー酷い言い方! ちゃんと頑張るもん! 運動神経舐めないでよね!」
「そうだな、確かに夏実は動体視力も良いし運動神経良いから運転もこなせるイメージがあるよ」
「えへ♡」
「しっかり頑張れ。バイトも、自動車学校も」

 お互いの気持ちが分かっているから、マスクをしたまま意地悪な事を言っても冗談だと受け止めてくれる……それもちょっと嬉しい。



 そこまで喋っていたら、ちょうど目的の駅に辿り着いた。

 出発点とは違う駅ではあるものの、移動時間はやはり1時間で昨日とはほぼ変わらない。
 昨日の1時間は、村川くんや奥さんについての質問ばかりして不安や緊張を抱いていた夏実も、今じゃ希望に溢れた妄想会話を俺と沢山出来ていて、ホームに降りたち改札を出るまでの通路を歩く今でさえ妄想の続きが互いにポンポンと出て来る。

 18歳と30歳になってちょうど半月。
 肉体の関係を持って14日。

 まして結婚の意識を持ってまだ10日しか経っていないし、籍を入れる具体的な時期や日程もまだ何も決めていないけれど、短期間で色んな事がハイスピードで進んでいって、気持ちがそれに追いついているのかいないのかすら把握出来ないくらい、心も体もふわふわほわほわとしている。

「これから一緒に生活するの、すっごく楽しみ!!」

 手を繋いで改札を出たところで、夏実が俺の顔を見上げ更にキラキラした笑顔を見せる。

 強い日差しが急に照りつけてきたが、同時に開放的な青空や夏の空気を頭上に感じたのがさっきよりもずっと嬉しくなって

「俺も楽しみだ!」

 顔を覆っていた不織布マスクを取り去って、目の前の彼女に自分の出来得る限りの笑顔を向けた。

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