【完結】彼女が18になった

チャフ

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俺と彼女の甘い露

★1

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「屋上レストランが素敵過ぎの緊張し過ぎだったから、味がよく分からなかったよぅ」
「その割にはコース料理完食してたけど?」
「お腹はいっぱいになったよ? でももう何の料理を食べたのか記憶が飛んじゃったぁ」

 バースデーディナーコースを済ませて再び部屋に戻るまでの短い時間、夏実と初めて恋人繋ぎをした。
 てっきり彼女から恋人繋ぎについての感想が出て来るのかと思いきや、終始「食事中に緊張した」話ばかり繰り返していて面白い。

「テーブルマナーは間違ってなかったし、分からなくなったとしても俺の動きを真似すれば良かったんだよ」

 今だって恋人繋ぎの指を少しずらして、彼女の薬指にはめられている指輪を俺の指先で軽くクイクイと弄っているのに無反応だったので、夏実は本当に食事での緊張感を引き摺っていて頭もパニックを起こしているのだろう。

 だが、今からは完全に2人きりの夜が始まる。
 可愛らしい夏実でもこの意味をちゃんと理解している筈だ。


 部屋の扉が閉まる音が、突然俺の理性を壊す。

「俺の首に手を回して」
「えっ?」

 夏実の両腕が自分の首にかけられたのを確認した俺は、彼女をお姫様抱っこしてベッドの上に優しく寝かせる。

 本来なら風呂にでも入れさせてあげて、少しでも彼女の緊張をほぐしてやらなければならないのに

「悪い……俺もう、我慢出来ない」

 ネクタイを外し胸元のボタンを開けて大きく息を吸うと、そのままの勢いで彼女の口の中の水分を吸い取った。

「んっ」

 彼女の唾液を嚥下えんげする度に、口内にとろりとした水蜜桃すいみつとうのような甘さが広がる。


 夏実の唾液が甘い。
 とにかく甘い。

「っく……」
「……っはぁっ」

 食事前にこの部屋で舌先のキスをした時よりも、断然今の方が甘くって……。

「さっきのコース、スイーツあったっけ?」

 息をハアハアさせながらそんな質問をするおっさんの態度は、夏実の瞳にキモく映ったんじゃないかと思う。

「……え?」
「ヤバイ、俺も何食ったか覚えてないみたいだ」

 お姫様抱っこした時は「夏実の頭に詰まっているものを取り除いて俺の事しか考えられないようにしてやろう」なんて思っていたのに、既にもう俺の頭がそうなってしまっていて「余裕なくてキモいエロおやじだな」と心の中で自虐した。

 唾液の甘さをもっともっとたのしみたかったが、これ以上すると本気で嫌われてしまいそうだ。

 ッチュッ……

 果たして意味があるのか分からないけれど

 チュッ

 ……ッチュ

 チュッ……ク……。

 リップ音を立てた潤みのあるキスを夏実に施し、俺が今抱えているドロドロとした汚い邪な考えを、夏実の柔らかい唇でもって少しでも浄化出来たら……なんて希望を持つ。


 再び唇を離すと、夏実も息をハアハアさせながら

「湊人のえっち」

 と、大人の女みたいなセクシー声で汚い俺の心を更に誘う。

「そうだよ、昨日まで知らなかっただろ?
 俺は夏実が思う以上に……エッチな男なんだ」

 やっぱり浄化なんて出来る訳がなかった。
 大好きな夏実の声で更に興奮し、ハアハア言いながらも可憐な彼女に「自分はエロくて汚くてキモいおっさんである」という意味合いの自己申告をする。

「夏実」
「なぁに?」
「昨日までの俺と今の俺、どっちがいい?」

 今朝、恐らく夏実は微睡まどろんでいる俺に向かって「ガマンしなくていい」と、夢と同じ台詞を実際口にしたのだろう。

「昨日までの湊人と、今の湊人って……どういう意味?」

 少女の思う「ガマン」が俺にとってどのレベルのものだったのか、夏実はよく理解していなかったんじゃないだろうか?

「どっちの俺がいいのか選ばせてあげようか。今ならまだ俺も『ガマン』がきくから。
 今後俺が夏実にどう接するべきかどう接したらいいかを夏実の意見を聞いておきたいんだ。
 夏実の望む俺の姿で接してあげられるよう、俺も努力するからさ」

 夏実の口にした「ガマンしなくていい」は、単に「手を出してこない彼氏に少しでもエッチで積極的になってもらいたい」という狙いがあった……そのくらいはおっさんの俺でも想像出来る。
 だからガマンという名の拘束具を全て取り払った真っさらな俺の姿にドン引きされないよう、そのような選択を夏実に課すことにした。

「どっちの湊人が良いか……かぁ」

 夏実は目線は俺の顔へとボーっと向けているもののしばらく「んー」と鼻声を鳴らしながら何かを考えているようだった。

「うん、夏実も18になったし、今まで夏美に課してきた『ガマン』を今日で解く事になる。それは夏実にとって良い事であってほしいと思っているし、俺もこれから夏実との時間を心地良く過ごしたいとも考えているから」
「今の湊人はエッチ……それって、今までの『みなとくん』は嘘の姿だったってこと?」

 夏実は俺が課した難題を咀嚼そしゃくしようとしてくれているのだろう、こんな状況下にしては頭が良く働いている。

「嘘じゃないよ。夏実の事は可憐で可愛いと思っているし、軽いキスや握手みたいな手繋ぎも嫌ではなかった。たとえ夏実がエッチな今の俺を選んだとしても、今まで以上に夏実を大事に大切に扱おうとは考えているよ」
「でも、ずっと湊人が『みなとくん』のままでいて……『湊人』の部分をガマンしてたんじゃ、私達は進展しないままになっちゃうんだよね?」

 夏実はやっぱり賢い子だと思った。
 俺の曖昧な「昨日の俺」と「今の俺」を瞬時に「理性的な俺」と「欲望的な俺」に脳内変換をして意見を述べてくれている。

「そういう事になるね」
「うーん……それはなんか嫌だなぁ」
「じゃあ、ガマンしないエッチな俺を選ぶ?」
「でも湊人の言う『ガマンしない俺』ってさぁ、私が想像出来ないくらい欲望全開でヤバイって意味なんでしょ?」
「夏実がどんな想像してるか分からないけど、少なくとも同年代の女の子が経験する以上にエロくてやらしい事は頭の中で想像してるよ、俺は」
「じゃあ、めちゃくちゃヤバイ人じゃん湊人って! 逆に言えばずっとそれを隠して私と付き合ってたんだもん。
 湊人っていっつも私のする事なす事に冷静に対応してくれていて、叱る時はピシャッと叱ってくれるし勉強も先生並に詳しく教えてくれるし。なのに、そんなエッチでヤバイ部分を私に隠していたんだね」

 右手で口元を押さえて俺から目を反らす夏実の仕草に恥じらいがあって、彼女はまさに俺の理想的な純朴少女だと感じた。
 ……まぁ学校生活以外の面でではあるが、なるべくそうであってほしいと俺が仕向けた部分もあるんだろうけど。

「一回りも歳下の夏実と付き合っている時点で俺は変態でヤバイ男っていう事だ。ドン引きしただろ?」


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