【完結】この花言葉を、君に

チャフ

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【番外編 その後のお話】兄弟になろう(side亮輔)

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 今年もあと数日で終わってしまう。

「ねー、先生ってきょうだい居るの?」

 俺は去年と同じく家庭教師の短期バイトに精を出していた。

「きょうだい?」
「うん、お兄さんお姉さんとか」

 小学生相手であっても、物事を教えるのは難しい。

「お兄さんお姉さんか……」

 そして無邪気なプライベート質問に笑顔で答えるのも、やはり難しいと思った。

「居ないの?」
「居るよ」

 確かに、俺にはきょうだいが居る。

「そうなんだ! お兄さん? お姉さん?」
「兄がね、1人居るよ」

 8歳上で、昔から優秀で……

「どんなお兄さん? 優しい?」
「……」

 親の期待を背負っていて、今は親父の右腕となって会社を動かしている次期社長だ。

 けれど、それをそのまま生徒に話す事が出来なかった。

「先生……どうしたの?」
「あっ」

(しまった……)

 黙り込んだ俺に気を遣わせてしまったと、自己嫌悪に陥る。

「ごめんね、休憩終わっちゃった。
 続きを始めようっか……次は算数の応用問題だったね」


 家庭教師の生徒相手なのだから、適当に頷いておけば良かった。真面目に返答しなくても、きっとバレない。

 けれど……

 実の兄貴が「優しい」だなんて言えなかった。
 俺には兄貴に優しくしてもらった記憶がないのだから……。
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