【完結】この花言葉を、君に

チャフ

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2月の陸橋

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「朝香ちゃん、閉店時間になったからすぐに上がっちゃってね」

 15時30分からの4時間。
 私はとにかく弟子を不安がらせないよう仕事に徹した。

「ありがとうございます! 夕紀さん♪」

 それはとても辛い事であったけれど、SSR的な笑顔を見るとその頑張りも報われた気がしてくる。

「明日からの亮輔くんとの旅行、楽しんできてね」
「はいっ! 明日は祝日ですし夕紀さんにとって大事な日なんですから、ゆっくりと体を休めて1日過ごして下さいね」
「うん、そうする♪」
「勿論、ご自身のお体を良い意味で甘やかしちゃって下さいねっ!」
「フフッ、そうする♪」
「絶対に絶対にスペシャルなお土産、いっぱい用意して帰ってきますからっ!! そこはりょーくんと意見が一致してますんでっ!!」

 やっぱり朝香ちゃんは元気で可愛い。
 自然と笑みがこぼれてしまうし、やはり私は師としてこの笑顔を守りたいと改めて思った。

「ほらほらこんなところで油売ってないで……って、亮輔くんが迎えに来たよっ!」

 私は店のシャッターを締める直前に長身男性の姿を視界に入れるとすぐに弟子の背中をポンポンと叩き身支度を急がせる。

「お姉さんこんばんは♪」

 それからすぐに勝手口を開け、サラッとした黒髪マッシュショートの亮輔くんを店内に迎え入れた。

「こんばんは亮輔くん。明日からの旅行、楽しみにしてるんじゃない?」

 上目遣いでイジワルな言い方をしてみると

「っ」

 彼は瞬間的に首から上を真っ赤にさせて恥ずかしそうに目を伏せた。

「フフッ♪ そりゃそうよね♡ 大好きな朝香ちゃんとの初一泊旅行だもの♡」
「それは……はい、そうですね。彼女の隣に歩けている今がめちゃくちゃ幸せですし」

 亮輔くんとは皐月の件で色々あったものの、やはり彼の行動そのものはピュアで可愛らしいと感じる。

(手紙が読めなくなったから、皐月の真意は分からないまま……
 だけど、皐月が亮輔くんにも想いを寄せた気持ちは分かるのよね)

 妹を自身の出来得る全てを使って救おうとしてくれた亮輔くん。
 叶わず散ってしまった彼の初恋は、今、こうして私の「第二の妹」である朝香ちゃんへと実を結んでいる。
 
「うん♡ 道中気をつけて。めいいっぱい楽しんでね♡」

 私は「旅行」で父と母を亡くしたから、どうしても「事故に気をつけて」がすぐに口をついてしまう。
 だから彼と彼女に暗い気持ちにならないよう、いつも以上に愛情持った声掛けに努めたし

「はいっ!! お姉さんにいっぱいお土産買いますからねっ!! 期待してて下さいね!!」

 やはり亮輔くんの幸せや笑顔も、朝香ちゃん同様見守りたいと強く思った。


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