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2月の陸橋
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しおりを挟む「ごめん……ごめん、ユウちゃん」
私は少し泣いて、その間ジュンが背中を撫でてくれていた。
単純に悲しかった。
ずっとこのままうずくまって
ずっとずっと泣いていたかった。でも……
(でも……私はもう子どもじゃない)
歯を食い縛り、私は立ち上がる。
(泣いてなんかいられないんだ……私の所為で商店街みんな困惑しているし、その不穏な空気が今店番してる朝香ちゃんに伝わるのはもっと嫌だ)
「ユウちゃん……」
私はジュンから半歩離れ、それから振り返る。
「大丈夫だから。私は」
視界に入ったジュンはとても心配そうに私を見つめている。
「本当よ! もう大丈夫。
ジュンは『ごめん』って何回も言うけど、それって結果論でしょ。きっとあなたから取り壊し日を聞いたとしても『皐月の手紙を取りに行こう』という気持ちにはならなかったと思う」
「ユウちゃん」
「昨日から取り壊し作業始まって、清さんの退院は今日だった……それが運命なんだって思う事にする」
冷静に考えると確かにそうなるのだ。
どんなifがあろうとも、皐月の手紙は無くなってから切望する……きっと私はどの道こうなっていた筈だ。
「集会所に戻るよ。心配かけてごめんね、ジュン」
だから私は彼に向かって精一杯笑ってみせた。
ジュンと早足で集会所に戻ると、予想通り重苦しい空気に包まれていて、田上くん初恵さん清さんから「ごめんなさい」を沢山言われた。
「私はもう大丈夫です。これ以上ここに居たら弟子に迷惑かかるので店に戻らせていただきます。こちらこそご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした」
私は皆に深々と頭を下げ、気丈に振る舞う事にした。
それは私の本意でもあったけれど、正直「隣にジュンが居てくれる」という安心感から出来たと言っても良い。
「清さんがお世話になった方は、今出来うる仕事を真っ当したに過ぎないと私は解釈しています。清さんについた嘘とやらは聞かなかった事にします。
ですから、清さんがその方に感謝の意を込めて花束を贈る気持ちも棄てずにいてほしいと私は願いますし、田上くん奥さんにはご自身のお考えでご判断されてほしいです。そこに私への情は込めない方が今回の場合良いのではないでしょうか」
私は皆にまっすぐ目を向けて、最後にこんなお願いをした。
「私からの個人的な要望は一つです。
今回の話はここにいらっしゃる皆様のお心に留め、多言を避けてもらいたいのです。
特に私の弟子である朝香ちゃんと、過去に深く関わっている亮輔くんには……知らないままでいてほしいんです」
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