69 / 113
時をとめる7秒
3
しおりを挟む
「ちょっとだけ、ユウちゃんをビックリさせられたらいいなって思うんだ。
イチゴの花のイヤリングを見つけた時もね、それを思ったんだ。イチゴってありふれてるけど、花をプレゼントする人ってなかなか居ないでしょ?
その上、ユウちゃんの口から『妹さんは白くて小さな花をいつも渡してきた』なんてエピソード聞いたし。ちょっと今燃えてるっていうか」
「……」
「勝てるわけないって分かりきってるし、もしかしたらその『珍しいお花』ってのも妹さんからもらっちゃってる可能性もあるんだけどね」
「……」
「花屋で売ってないようなレベルの珍しさだといいなって思うんだけどねー♪ どうなんだろうねー」
ジュンは私の想像していた以上に、真面目な人なんだと……その時思った。
(根っからのチャラ男だと思い込んでいたんだ……私は。ずっと、昔から)
「…………ごめんねユウちゃん。
気が付いたら、俺ばっかり喋ってるよねぇ? バカだよなぁ~♪ うるさくてごめんね、本当に」
私が黙ったままでいるから、ジュンは咄嗟にそう謝ってきた。
「ううん……」
彼は私が「話がつまらないから黙っている」と感じたのかもしれない。
「そうだ! 食べ終わった事だし、散歩してみよっか♪ 展望台から見る夜景、めちゃくちゃ綺麗だから」
ソファから私と同時に立ち上がりながら2人分のトレイをヒョイっと持ち上げ
「食べ終わった食器くらい私が片付けるのに」
「いいのいいの。力仕事は俺に任せてよー♪」
そう言って素早く返却口へ持っていきササッと戻ってきた。
「力仕事なの? 返却するのが」
「重たいもの持つ事全般を力仕事って言わない?」
真面目なジュンの喋る内容がやはりおちゃらけていて、また笑いが込み上げる。
「ふふっ♪ そうかもね」
「でしょ♡」
私の表情を、ジュンは嬉しそうに見つめ返した。
「外、寒いだろうから俺のジャケット貸してあげる」
「ああ……ありがとう」
自動ドアを通過する直前、私の肩にジュンのジャケットが覆い被さる。
「体デカくないからユウちゃんの全身をあっためらんないんだけど」
彼の言う通り、身長がさほど変わらない細身のメンズジャケットは私の体にピッタリとフィットしていて
「ううん……充分あったかいと思う。ありがとう」
私にとっては充分に嬉しかった。
イチゴの花のイヤリングを見つけた時もね、それを思ったんだ。イチゴってありふれてるけど、花をプレゼントする人ってなかなか居ないでしょ?
その上、ユウちゃんの口から『妹さんは白くて小さな花をいつも渡してきた』なんてエピソード聞いたし。ちょっと今燃えてるっていうか」
「……」
「勝てるわけないって分かりきってるし、もしかしたらその『珍しいお花』ってのも妹さんからもらっちゃってる可能性もあるんだけどね」
「……」
「花屋で売ってないようなレベルの珍しさだといいなって思うんだけどねー♪ どうなんだろうねー」
ジュンは私の想像していた以上に、真面目な人なんだと……その時思った。
(根っからのチャラ男だと思い込んでいたんだ……私は。ずっと、昔から)
「…………ごめんねユウちゃん。
気が付いたら、俺ばっかり喋ってるよねぇ? バカだよなぁ~♪ うるさくてごめんね、本当に」
私が黙ったままでいるから、ジュンは咄嗟にそう謝ってきた。
「ううん……」
彼は私が「話がつまらないから黙っている」と感じたのかもしれない。
「そうだ! 食べ終わった事だし、散歩してみよっか♪ 展望台から見る夜景、めちゃくちゃ綺麗だから」
ソファから私と同時に立ち上がりながら2人分のトレイをヒョイっと持ち上げ
「食べ終わった食器くらい私が片付けるのに」
「いいのいいの。力仕事は俺に任せてよー♪」
そう言って素早く返却口へ持っていきササッと戻ってきた。
「力仕事なの? 返却するのが」
「重たいもの持つ事全般を力仕事って言わない?」
真面目なジュンの喋る内容がやはりおちゃらけていて、また笑いが込み上げる。
「ふふっ♪ そうかもね」
「でしょ♡」
私の表情を、ジュンは嬉しそうに見つめ返した。
「外、寒いだろうから俺のジャケット貸してあげる」
「ああ……ありがとう」
自動ドアを通過する直前、私の肩にジュンのジャケットが覆い被さる。
「体デカくないからユウちゃんの全身をあっためらんないんだけど」
彼の言う通り、身長がさほど変わらない細身のメンズジャケットは私の体にピッタリとフィットしていて
「ううん……充分あったかいと思う。ありがとう」
私にとっては充分に嬉しかった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる