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「ユウちゃんって、どんなデザインでも似合っちゃうよね♡ これを作った作家さんのモデルになれちゃうんじゃない?」
「ぅ……」
「実はね、その作家さん、今度新作を出すんだって♪ 販売予定日を店員さんから確認済みだから、販売日来たらすぐに買いに行こうと思ってるんだ♡」
正直、ちょっとウザいなって思ってしまったんだけど……
「白いお花のデザインらしいよ♡ しかも珍しい花なんだってさ♪ ユウちゃんも気にならない?」
ジュンの「白いお花」というワードに私の体はピクンと反応し
「珍しいって……どんな花?」
ちょっとだけ興味が湧いてきた。
「ふふふー♡ 気になるでしょユウちゃんも♡」
ジュンは勝ち誇ったかのような笑みを見せて私と適度な距離をとる。
「『白いお花』くらいなら別にって感じだけど『珍しい』まで聞いちゃうと確かに……ちょっと」
ジュンがプレゼントしてくれたイヤリングは全て雑貨屋に卸している無名の作家の作品だというのを以前聞いた。
花を模したイヤリングは13あるうち1番最初にもらったイチゴの花だけだったし、そのイチゴの花がとても精巧に作られていてより力が入った作品のように感じられたから「イチゴとは別の白い花のイヤリング作品が近々販売される」と聞けば興味が出てくるのも仕方がなかったのだ。
「『珍しいって、どのくらい珍しいんですかね?』って店員さんに訊いてみたんだよ。そしたらその店員さんも『珍しい』っていう部分が気になってるみたいでさぁ~店としてもめちゃくちゃ期待してるみたいだよ♪」
「店側も……どんなイヤリングになるのか知らないんだ?」
「そうみたい。楽しみで仕方ないよ~俺も♡ 販売前だけど予約しちゃったもん♡♡♡」
ジュンは、自分が身につけるわけでもないのにワクワクした表情をしている。
「じゃあ、入荷次第ジュンに連絡がいくんだ?」
私の問いに、ジュンは少年みたいなキラキラ瞳で
「うんっ!! 入荷の連絡が来たら即買いに行っちゃう♡ 面倒な書類作成やらなきゃいけなくっても急に遠くのお客さんへ納品しに行かなきゃってなっても、なんとかして抜け出して! 必ずっ!!」
力こぶを腕に作りながら自信満々にそう言い放った。
「ブッ……ふふっ」
その「たとえ火の中水の中」的な言い回しが面白くて私は思わず吹き出してしまう。
「やった♪ ウケた♡」
私の反応に嬉しくなってる彼の様子もまた可笑しい。
「そりゃ笑っちゃうでしょ! たかがイヤリングなのにっ……」
「俺にとっては『たかが』じゃないんだってば! ユウちゃんに、本当に付けてもらいたいなーって思ってるんだから」
「そうかもしれないけどぉ」
可笑しさで私は腹筋がつりそうになってお腹をスリスリさする。
「イチゴの花も珍しいって思ったけどさぁ、めちゃくちゃユウちゃんに似合っていたし次も期待しちゃうじゃん?」
ジュンは直後、優しい目付きになって
「俺はね、本気で『珍しいといいな』って、思ってるんだ。
何の変哲もない『普通の白い花』なら妹さんから既に何回ももらってるだろうなって、思うから」
……そう、続けて話し
「……」
何故にジュンがそこまでイヤリングを心待ちにしているのか……その意味を知った。
「ユウちゃんにとっては大事な家族だもん。妹さんに勝てるなんて思ってないよ、最初から」
「……」
「っていうか、勝てるわけないから。12年半前からずっとユウちゃんは『妹が居るから早く帰らなきゃ』って、俺の誘いを断ってきたようなかっこいい人だし」
「……」
「今はたまたま、ユウちゃんが俺の誘いに乗ってこうしてご飯食べに行けてるけど、俺はちゃんと理解しているよ。
たとえユウちゃんが俺の事を好きになってくれたとしても、順番は『家族の次』なんだって」
「…………」
瞬間に言いたい言葉が、喉のところまで上がって……それからシュウッと降下して胃液に溶かされる。
「ぅ……」
「実はね、その作家さん、今度新作を出すんだって♪ 販売予定日を店員さんから確認済みだから、販売日来たらすぐに買いに行こうと思ってるんだ♡」
正直、ちょっとウザいなって思ってしまったんだけど……
「白いお花のデザインらしいよ♡ しかも珍しい花なんだってさ♪ ユウちゃんも気にならない?」
ジュンの「白いお花」というワードに私の体はピクンと反応し
「珍しいって……どんな花?」
ちょっとだけ興味が湧いてきた。
「ふふふー♡ 気になるでしょユウちゃんも♡」
ジュンは勝ち誇ったかのような笑みを見せて私と適度な距離をとる。
「『白いお花』くらいなら別にって感じだけど『珍しい』まで聞いちゃうと確かに……ちょっと」
ジュンがプレゼントしてくれたイヤリングは全て雑貨屋に卸している無名の作家の作品だというのを以前聞いた。
花を模したイヤリングは13あるうち1番最初にもらったイチゴの花だけだったし、そのイチゴの花がとても精巧に作られていてより力が入った作品のように感じられたから「イチゴとは別の白い花のイヤリング作品が近々販売される」と聞けば興味が出てくるのも仕方がなかったのだ。
「『珍しいって、どのくらい珍しいんですかね?』って店員さんに訊いてみたんだよ。そしたらその店員さんも『珍しい』っていう部分が気になってるみたいでさぁ~店としてもめちゃくちゃ期待してるみたいだよ♪」
「店側も……どんなイヤリングになるのか知らないんだ?」
「そうみたい。楽しみで仕方ないよ~俺も♡ 販売前だけど予約しちゃったもん♡♡♡」
ジュンは、自分が身につけるわけでもないのにワクワクした表情をしている。
「じゃあ、入荷次第ジュンに連絡がいくんだ?」
私の問いに、ジュンは少年みたいなキラキラ瞳で
「うんっ!! 入荷の連絡が来たら即買いに行っちゃう♡ 面倒な書類作成やらなきゃいけなくっても急に遠くのお客さんへ納品しに行かなきゃってなっても、なんとかして抜け出して! 必ずっ!!」
力こぶを腕に作りながら自信満々にそう言い放った。
「ブッ……ふふっ」
その「たとえ火の中水の中」的な言い回しが面白くて私は思わず吹き出してしまう。
「やった♪ ウケた♡」
私の反応に嬉しくなってる彼の様子もまた可笑しい。
「そりゃ笑っちゃうでしょ! たかがイヤリングなのにっ……」
「俺にとっては『たかが』じゃないんだってば! ユウちゃんに、本当に付けてもらいたいなーって思ってるんだから」
「そうかもしれないけどぉ」
可笑しさで私は腹筋がつりそうになってお腹をスリスリさする。
「イチゴの花も珍しいって思ったけどさぁ、めちゃくちゃユウちゃんに似合っていたし次も期待しちゃうじゃん?」
ジュンは直後、優しい目付きになって
「俺はね、本気で『珍しいといいな』って、思ってるんだ。
何の変哲もない『普通の白い花』なら妹さんから既に何回ももらってるだろうなって、思うから」
……そう、続けて話し
「……」
何故にジュンがそこまでイヤリングを心待ちにしているのか……その意味を知った。
「ユウちゃんにとっては大事な家族だもん。妹さんに勝てるなんて思ってないよ、最初から」
「……」
「っていうか、勝てるわけないから。12年半前からずっとユウちゃんは『妹が居るから早く帰らなきゃ』って、俺の誘いを断ってきたようなかっこいい人だし」
「……」
「今はたまたま、ユウちゃんが俺の誘いに乗ってこうしてご飯食べに行けてるけど、俺はちゃんと理解しているよ。
たとえユウちゃんが俺の事を好きになってくれたとしても、順番は『家族の次』なんだって」
「…………」
瞬間に言いたい言葉が、喉のところまで上がって……それからシュウッと降下して胃液に溶かされる。
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