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時をとめる7秒
1
しおりを挟む時刻は0時40分。
「意外に人って居るのね」
キョロキョロと辺りを見回す私に
「そうだよねー。ここは、それほど人気のサービスエリアって事なのかもね♪」
ジュンはフフッと軽く笑い、ソフトクリームに舌を伸ばした。
「そっかぁ……人気なら……こんなにお客さんが多いのね、深夜でも」
「まして週末だし。平日なら流石にここまで居ないんじゃないかな?」
「それもそっか……」
関東随一のサービスエリアともあって、フードコートは深夜とは思えないくらいの賑わいをみせているし、私が食べたいと欲したソフトクリームは
「どう? ユウちゃん。美味しい?」
「うん、想像の7倍美味しい」
「背徳の味、するでしょ?」
「うん、坦々麺の3倍くらいする」
とびっきりに美味しくて、スプーンの手が止まらない。
「店員さんにスプーンもらって良かったね」
「うん」
「ユウちゃんに喜んでもらえて良かった♡」
……というか、急いで食べてしまいたくて仕方がなかったんだ。
「デートみたい」って意識した熱い体をクールダウンさせたかったから。
「ごちそうさまでした」
「食べ終わるの早いねー! ユウちゃん凄い」
「おっ……なか、空いていたんだもの。当然よっ!」
けど、改めてジュンから「食べるの早い」とか言われてしまうのは恥ずかしかった。
(なんか、私だけガッついてるみたい……)
ジュンはスプーンを使わずともプレミアムで純白なソフト部分も繊細なコーン部分も綺麗に食していて、手慣れた感を出している。
初体験の私が幼い子どもみたいに見えてしまう。
「可愛いよね、ユウちゃんって♡」
綺麗に食べ終えたジュンは、チラッとこちらを見ながら色気のある声でそんな事を言ってきたから
「ちょっ!!! ばっ……バカにしないでよ!!!!」
つい大声を出してしまい
「ユウちゃん声大きいっ! シーッ!」
「!!!!」
周囲のお客さんに迷惑をかけ、せっかくクールダウンさせた体温がまた上昇する。
「バカにはしてないよ、全然っ♪♪」
ジュンは焦る私の隣にトンッと腰をおろして寄り添い、顔を近付ける。
「ちょっ……」
「素直な感想を口にしてるだけなんだよ♡ ユウちゃんはいつもどんな時でも可愛いなぁって思ってるし」
ジュンの指先は木の葉型のイヤリングを揺らして
「俺があげたイヤリングを日替わりでちゃんと付けてくれるユウちゃんの真面目さにキュンキュンしちゃってる♡」
「!!」
「ユウちゃん大好き♡」
サラッと私に「大好き」を告げた。
「!!!!」
直後私は口を両手で押さえてザザっと後退りする。
「ちょっとちょっとユウちゃあん、なんで離れちゃうのさぁ」
座っていたのがコの字型のソファで良かったと本気で思った。ただの対面型ソファじゃ逃げ場が無かったから。
「っ……また大声出しちゃいそうだったからに決まってるでしょうが! ジュンのバカっ!!」
「酷いなぁそんな言い方っ♪ フフッ♪」
私はジュンが馴れ馴れしく近付いて耳に触れようとしてきた事を咎めたつもりだったんだけど、ジュンは笑うばかりで全く堪えてない様子でいるし
「でも、『イヤリングが似合ってるなぁ』って思っているのは本当だよ。ショートボブの髪の隙間からイヤリングがチラ見えするのってセクシーで素敵だと思うし、大好きなユウちゃんが実際に付けてるのを目の当たりにしたらもっともっと好きになっちゃう♡」
後退りした私にまたスリスリ近寄って強いニコニコで応戦してくる。
「うっ……」
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