【完結】この花言葉を、君に

チャフ

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キュウッと締め付けられる

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「戻ろうっか……散歩に」

 私は左側を向いて、ジュンの顔を久しぶりに見る。

「そうだね」

 私の話を受けてか、とても辛そうで痛そうな表情をしていた。

「ジュンはショック受けなくていいのよ。私の家族の、くだらない話なんだから」

 私がそう言い返すとジュンはその大きくて熱い手のひらで私の頭をポンポンしながら

「くだらないなんて言わないで……大事な話を俺なんかにしてくれてありがとう」

 そう言い、涙目を細めて微笑んだものだから

「   」

 無意識に私の左目から涙がこぼれ落ちる。

「ユウちゃんの辛い気持ち、俺にも伝わるよ。ユウちゃんの話は笑って聞き流せないけど、だからこそ嬉しい」
「……」
「俺は馬鹿だしチャラいけど、話は聞けるから」


ーーー

『ジュンくんなら……遠野の色んな部分を理解してくれそうな雰囲気あるんだけどなぁ』

ーーー

 ふと、私の脳内に「双子の弟」のセリフがリフレインする。

(田上くんが言っていた事……本当だったのかも)

 急に私の心がキュウッと締め付けられた。


「田上くんに謝らなくちゃ……田上くんとの喧嘩の原因は私なの。私が変に頑固になっちゃったから」

 珈琲店に戻るまでの帰り道、私はジュンの顔を見つめながらそう話すと

「あー、そういえばさっき健人も同じような事言ってたよ。ユウちゃんの店に寄る直前に健人とも話したんだ」

 と、ジュンは兄貴分みたいな風を吹かせる。

「そうだったんだ……」
「健人言ってたよ『家族を沢山亡くした親友に酷い事いっぱい言っちゃった』って。
 『出来ればまた明日もちゃんと楽しく会話したい』って」
「そっか……」

 偶然なのかそれともか、ジュンの口から「脳内家族」や「双子の弟」というワードが無い。
 私はその意味を探りつつ、細く長い息を吐いた。

(私も私で、そろそろ卒業しないといけないなぁ「脳内家族」や「家族ごっこ」)

 田上くんは反省していたようだったけど、「脳内家族に付き合うのを辞める」と宣言したのは本心でもあったのだろうと思う。

 ジュンへの「好き」の気持ちを押し殺すのか解放するかの前に、私はもうとっくのとうに「ごっこ遊び」をしてはいけない年齢に達しているのだ。
 義郎さん裕美さんが私を娘のように、朝香ちゃん亮輔くんが私を姉のように想ってくれる気持ちは純粋に受け止め、甘え過ぎてはいけないと心に強く思う事にした。






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