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【番外編】私とコーヒー
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しおりを挟む私は毎朝、自分でコーヒーを淹れて飲む。
「1ヶ月振りのグアテマラアンティグア……」
私は数日前に店の焙煎機で丁寧に煎った珈琲豆を電動コーヒーミルにかけ、少々粗めに挽き始めた。
そこからは、息をするように私の体は動いていく。
小鍋に水を入れ火にかけたら冷蔵庫を開けて、ネルが入った保存容器と浄水された水のボトルを取り出しネルだけ小鍋の中に落とす。
ボトルの水を電気ケトルに注いでスイッチを入れる。
ネルの煮沸消毒が終わったら小鍋を火から下ろして湯を捨て、ネルを軽く洗って絞りしっかり水気を切り、持ち手のついた金具にネルを通していく。
電動コーヒーミルのスイッチを切って挽いた珈琲をネルの中に入れて縁をトントンと軽く手で叩いて粉を平らにならし、真ん中だけほんの少し窪ませる。
沸いた湯をドリップポットに一旦注いでからカップにも移しカップを温めつつ湯を90度より下回るように温度を下げる。
適温になった湯をドリップポットに戻したらいよいよ湯を粉に落としていく。最初は湯を粉に乗せるイメージで少量だけ。粉を蒸らす為だ。
蒸らしが終わったらゆっくり、一定のスピードでコーヒーが落ちるように湯を注いでいく。
1杯分抽出出来たらネルをサーバーから外して、サーバーに溜まったコーヒーの濃度が均等になるように少しだけサーバーを揺らす。
出来上がったコーヒーを緑色の陶器製カップに注いだら、ようやく完成だ。
「やっぱり美味しい……」
私は生まれて初めてコーヒーという飲み物に出会った日の事を懐かしみながら、ダイニングの椅子に腰掛けゆっくりとその香りや味を楽しむ。
「もう、25年も前になるのか……私も歳をとったもんよね……」
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