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165㎝の私
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「あっ!そうそうっ!……ジュン坊ったらさぁ、今日も集会に来ててびっくりしちゃったのよ! しかも仕事抜け出して来てるっていうから2度ビックリよ」
空の紙コップを初恵さんの手から回収しようとしたら、初恵さんが突然ジュン坊の話題を持ち掛けてきたものだから
「え!? 今日も?」
私はやや大きめの声で驚いた。
(そういえば……昨夜の穂高くんからのメッセージに「また明日」とか書いてあったんだっけ……?)
昨夜はウザくて既読無視をしてしまったのだが、穂高くんのあの文面から察するに定例集会が木曜日である事を知らないようだった。
「そうなのよ、聞いたら毎日くるものだって思い込んでたらしくて。毎週木曜日でいいって一応伝えておいたけどさ」
「…………そうなんですか。それはビックリしてたでしょうね」
私は口の端を引きつらせながら返事をしたのだけれど
「ビックリっていうか、ガックリ肩を落として帰っていったよ」
初恵さんのその言葉にグッと息を詰まらせる。
「っ」
「可哀想よねぇ仕事中抜け出してこっちまで来るだけでも大変だろうに」
「……」
「誰もジュン坊に教えなかったのかしら。薄情よねぇ私なら絶対に『金曜日は集会ないよ』って教えてあげたのに」
嫌味のない初恵さんの言葉は、今の私にとって「いい人居ないの?」よりも鋭利な刃物のように感じられる
「オフィス街からだいぶ離れてますからね……ここ」
「そうでしょう? 電車移動だけでも面倒だっていうのに、それでわざわざ来てみたら自分とは無関係な軽い報告がちょろっとされただけ。参加必須じゃないから集まりも悪い。そりゃジュン坊だって肩を落としちゃうでしょ」
「……」
(私だ……これは完全に私の所為だ。私が昨夜のメッセージに反応せず、集会の件も伝えなかったんだもの)
穂高くんが在籍している営業所からここまで電車で来るにしても乗り換えが面倒だし、そもそもここは穂高くんの担当エリア外だから本当に内緒で抜け出してたんだろう。
これは私が昨夜の段階で連絡事項としてメッセージを入れておくべきだったのかもしれない。
「……じゃあ、朝香ちゃん待たせちゃってるんで店の中に戻りますね」
気まずくなった私が離れようとすると、初恵さんは
「外寒いのに話で引き留めちゃってごめんね。コーヒー御馳走様」
と嫌味のない言葉を私に掛け、手を振ってくれた。
空の紙コップを初恵さんの手から回収しようとしたら、初恵さんが突然ジュン坊の話題を持ち掛けてきたものだから
「え!? 今日も?」
私はやや大きめの声で驚いた。
(そういえば……昨夜の穂高くんからのメッセージに「また明日」とか書いてあったんだっけ……?)
昨夜はウザくて既読無視をしてしまったのだが、穂高くんのあの文面から察するに定例集会が木曜日である事を知らないようだった。
「そうなのよ、聞いたら毎日くるものだって思い込んでたらしくて。毎週木曜日でいいって一応伝えておいたけどさ」
「…………そうなんですか。それはビックリしてたでしょうね」
私は口の端を引きつらせながら返事をしたのだけれど
「ビックリっていうか、ガックリ肩を落として帰っていったよ」
初恵さんのその言葉にグッと息を詰まらせる。
「っ」
「可哀想よねぇ仕事中抜け出してこっちまで来るだけでも大変だろうに」
「……」
「誰もジュン坊に教えなかったのかしら。薄情よねぇ私なら絶対に『金曜日は集会ないよ』って教えてあげたのに」
嫌味のない初恵さんの言葉は、今の私にとって「いい人居ないの?」よりも鋭利な刃物のように感じられる
「オフィス街からだいぶ離れてますからね……ここ」
「そうでしょう? 電車移動だけでも面倒だっていうのに、それでわざわざ来てみたら自分とは無関係な軽い報告がちょろっとされただけ。参加必須じゃないから集まりも悪い。そりゃジュン坊だって肩を落としちゃうでしょ」
「……」
(私だ……これは完全に私の所為だ。私が昨夜のメッセージに反応せず、集会の件も伝えなかったんだもの)
穂高くんが在籍している営業所からここまで電車で来るにしても乗り換えが面倒だし、そもそもここは穂高くんの担当エリア外だから本当に内緒で抜け出してたんだろう。
これは私が昨夜の段階で連絡事項としてメッセージを入れておくべきだったのかもしれない。
「……じゃあ、朝香ちゃん待たせちゃってるんで店の中に戻りますね」
気まずくなった私が離れようとすると、初恵さんは
「外寒いのに話で引き留めちゃってごめんね。コーヒー御馳走様」
と嫌味のない言葉を私に掛け、手を振ってくれた。
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