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102.死体は語る

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「館田さん・・・・・。」

「うん?」

「弥多彦くんと翼くんは、どうします?」

「状況だけ伝えて・・・撤収してもらおう。」

「これは・・・彼らには目の毒だ。」

「そうですよね。」

「そして、村の人を呼んでもらおうかな。」

「あと、高田院長も。」

「高田院長・・・ですか?」

「うん、高田院長は昔、検死の仕事もしてらっしゃったんだ。」

「そうだったんですね。」

「じゃあ、よろしく頼むよ。」

「分かりました。」才羽さんは物置小屋を出て、

レシーバーで弥多彦と翼くんに連絡を取り始めた。

木製の椅子に座らせて、

後ろに・・・両腕が手錠がかけられている。

これで、彼は身動きが取れないようになっている。

僕は遺体に触れないように、黒スーツのポケットを弄(まさぐ)った。

「やっぱり、有ったな。」

僕はスーツ上着の内ポケットからスマホを取り出した。

「わあ・・・・。バッテリーがギリギリだったんだな。」

「3%って・・・あ!!」

そのスマホは強制終了してしまった。

僕が画面を表示させてしまったからだろう。

「しょうがない。どこかで充電しよう。」

「スマホの解析はそれからだ。」

僕はそれ以外にポケット内に遺品が無いか探しまくった。」

死体の状態が良くないので、スーツにも体液が付着している。

が、そんなコト構っている状況では無い。

僕は、そのまま続けた。

「ん?」僕はポケットの中に手応えを感じた。

何か固いものが存在している。それを取り出した。

「こ、これは・・・。」僕は驚いた。

「館田さーーーん!!」才羽さんの声が外から聞こえて来る。

「うん?」

「弥多彦くんと翼くんに自警団の手配を頼んでおきました。」

「高田院長も、こちらに向かってます。」

「そうかあ。ありがとう。」

「で、どうですか?何か分かりました?」

「うーーん・・・。腐乱が酷いんで・・・。」

「ポケットの中にはスマホが有ったから・・・、」

「これバッテリー切れ起こしてるから充電してから解析できるかな?」

「オオー!?」

「これが坂東財務大臣のモノなら、」

「何かしらの情報がゲットできそうですね!?」

「うん、それと・・・」

「これが別のポケットに入っていたんだが・・・・。」

僕は才羽さんに固形物を見せた。

「これは?」

才羽さんはさっぱり分からないと言った表情だ。

「これは・・・珪藻土だよ。」

「珪藻土?」

「うん、内装工事で使われているモノだね。」

「何故、こんなモノがポケットに?」

「分からない・・・。」

「でも、何かしらの意味を持っていると思う。」

「はあ・・・。」

「内装工事の職人さんに聞いてみようと思う。」

・・・・・・僕は、

この色の珪藻土が使われていたトコロを知ってはいるが、

もしかしたら、また別の所に使われているかも知れない。

「なるほど。」

「あと、気になるのが・・・・・。」

「何ですか?」

「仮にこの遺体が坂東財務大臣のモノだとして・・・。」

「はい。」

「犯人は、何故、この場所で?」

「遺体を隠さずに置いていたんだろう?」

「う~ん。分かりませんねえ。」

「僕は、その事自体が、何か意味を持っているような気がするんだ。」

「日本の政府の要人がこんなトコロで死んでいた。」

「どう考えたって、普通じゃ無い。」

「それは、確かにそうですよね。」

「何か・・・、何かが引っかかるんだよねえ?何かが・・・?」

「李王鬼が寄こしたステルス部隊ってのは、考えられないですか?」

「考えられない訳じゃ無いんだけど・・・。」

「まあ、館田さん、取り敢えず、このスマホの解析をしましょう!」

「何かの糸口が見つかるかも知れませんよ!」

「うん、そうだね。」僕は、才羽さんに促され、

取り敢えず物置小屋から出た。


「プハー」僕は、口を塞ぐようにして被っていたタオルを外した。

物置小屋の外には、

弥多彦と翼くんが片手にそれぞれ銃を持って待っていてくれた。

「才羽先生・・・。」

「うん、ちゃんと、ここで待ってくれていたんだね。」

「はい。」

「弥多彦くん、翼くん、協力ありがとう。」

「ここからは大人の役目だ。」

「サーバー棟に戻っていいよ。」僕は二人を促した。

「そうか・・・。」弥多彦も意気消沈している。

「弥多彦、行こうか。」翼くんが促す。

「そうだな。」二人は揃って是松村長宅の方向に歩いて行った。

「・・・・・・。」僕は黙って2人を見守る。

こんな状況を子供に見せられる訳が無い。

「館田さん、俺達はこれからどうします?」

「うん、高田院長の検死に立ち会った後、是松村長に会う。」

「是松村長に?ですか?」

「うん、報告しないとね。色々と・・・。」

「まあ、村長ですから・・・。当然ですよね。」

「まあ、村長と言うより、事務次官だった・・・・。」

「はい?」

「いや、何でもない。何でもないんだ。」

この嫌な予感を、誰かに止めてほしい。

その時は本気でそう思っていた。


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