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線香花火

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100.坂東財務大臣捜索開始

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大神陽子のお見舞い?を終えた僕達は

帰りの車の中で話し合う。

「李王鬼と権守社長は、お互いのパートナーなのは分かった。」

「坂東財務大臣と権守社長がグルなのは、分かるんだけど・・・・・。」

「え?なんですか?館田さん?」

「以前、才羽さんが言っていたよね?」

「尖閣諸島や原発を中国が侵攻しているって。」

「はい。人工衛星の観測で、それは間違いないですね。」

「で、日本の自衛隊は尖閣諸島や原発を必死で守っているんですよね?」

「はい。それも間違いないですね。」

「坂東財務大臣は、日本をどうしたかったんだろう?」

「もしかして自分だけ安全地帯に逃げ込んでいるのかな?」

「え?ええ?館田さん、どういう意味ですか?」

「いやあ、やってる事が矛盾してないかな?」

「坂東財務大臣・権守社長・李一家・・・というか中国だね。」

「この連中は一蓮托生なのかなあ?」

「あ・・・、ああ、なるほど。」

「曲がりなりにも、日本の財務大臣が・・・、」

「デフォルトのみならず、中国の侵攻を手助けするって・・・、」

「何かピンと来ないんだよね。」

「でも、海宝総理大臣は、記者会見してデフォルト宣言してますよ。」

「そうなんだよね。だから・・・日本をデフォルトする・・・」

「ここまでは連中は画策していた。」

「だけど、中国が侵攻してくるのは想定外だったんじゃ無いかと。」

「う~~~ん、どうなんでしょうね?」

「海宝総理大臣と坂東財務大臣も一蓮托生だったのか?」

「分からない。けど、普通に考えて彼らは日本人だよ。」

「それも政府の要人だ。」

「ならば、山路証券の社長である権守社長も・・・ですよ。」

「うん、まあ、そうなんだけどね。」

「取り敢えずさ、海宝総理大臣・坂東財務大臣・権守社長・李一家と中国。」

「どういう組み合わせがグルになっていたか、ハッキリさせたいよね。」

「そうですよね。そうしないと対策の建てようが無いですもんね。」

「じゃあ、今後の方針は、決まったね。」

「牧坂の救出と坂東財務大臣の居所だ。」

「坂東財務大臣の居所は簡単に見つけられると思いますよ。」

「まだ、インターネットが生きている内は。」

「じゃあ、才羽さんは、それ優先してやってもらえる?」

「僕は牧坂の救出方法を考えるよ。」

「了解です!早速サーバー棟に帰りましょう。」

「そうだね。」


サーバー棟に戻った僕達は、中央監視室で黙々と作業していた。

坂東財務大臣の居所を探し出す為だ。

「まずは、霞が関にハッキングですねえ。」

「そうだね。」

「官僚のデータサーバーには閣僚の個人情報も管理されている筈だからね。」

「はい!!・・・・・・・。」

「どう?才羽さん?」

「・・・・・・日本の悪口を言うのは気が引けますが・・・・。」

「え?」

「セキュリティーが、ガバガバですねえ?」

「そうなんだ?」

「本当に危機意識無い国だなあ・・・?」

「申し訳ない。」僕はなぜだか謝った。

「おかげでハッキングしやすくて助かりますが・・・。」

「こんな状況で功を奏すとは・・・だね。」

「はい。」

「どう?」

「暗号の解析に小一時間でしょうね。」

「そうなんだ。」

「その間に、食事しておこうか?」

「そうですね!そうしましょう。」

「食事しながら、牧坂の救出方法を考えよう。」

「はい。」

「おーい!弥多彦くん!悪いけど、監視室見ておいてくれるかい?」

中央監視室はパソコンとサーバーを冷やすために

空冷のエアコンの音が結構五月蝿い。

なので、同じ部屋でも大声で呼ばないと

場所が離れていると聞こえないのだ。

「はーい!了解でーす!」弥多彦が大声で返事した。

弥多彦は本当に才羽さんに従順だ。

そして、弥多彦の横には翼くんがいる。

翼くんも弥多彦とは、馬が合うのか?妙に仲が良い。

あちらで二人で何かしら話し込んでいる。

「さあ、館田さん行きましょう。」

「そうだね。」そう言うと僕達は階段を降りて1Fのリビングに入った。

「奥さんが作ってくださった惣菜を湯煎しますね。」

「うん、ありがとう。僕は飲み物を用意するよ。」

「よろしくです。」

大の男が二人して

狭いキッチンで調理している様は気持ち悪いかも知れない。

そして、

準備が終わってダイニングテーブルに出来上がった惣菜を皿に広げる。

「では、頂きましょうか?」

「うん。」

「頂きます。」男二人で声を揃えて手を合わせる。

そして、食べ始めた。

「相変わらず、奥さんの料理は美味しいですね~。」

「ありがとう。彼女は昔から料理が好きだったからねえ。」

「僕も助かってる。」

「お?ノロケですか?」

「いやあ、そんなつもりは無いけど・・・」

「日頃、本当に好きでやってるのが見てても分かるんだ。」

「そうなんですか?」

「うん、学校の給食センターの栄養士も自分から名乗り出たり、」

「味噌や醤油の醸造を習いに行ったり・・・。」

「へえ?勉強熱心ですねえ?」

「うん、習いに行ってると言うより本当に好きでやってるっぽい。」

「いずれにしろ、良妻賢母な奥さんですね。」

「ありがとう。」そんな会話を続けて食事を終えかけていると・・・・。

プルルルルルルルルルルルル・・・・。

リビングに置いてある内線電話が鳴り響いた。

「あ、モグモグ、俺が取りますよ。」

才羽さんはそう言うと、受話器を取った。

「もしもし?サーバー棟です。」

「はい、どうも。お世話になります。」

「はい・・・はい・・・はい・・・」

「はいーーーーーーーーーー!!!???」

才羽さんはいきなり大声を出した。

僕の飲んでいた味噌汁を鼻から吹き出してしまった。

ツーーーーーン・・・・。鼻の中が染みる。

僕は、ダイニングの上に置いてあった

布巾で取り敢えず顔を拭いた。

「dkgjoひwmふぉd・・・ゴホゴホ!!」

「どうしたの!?才羽さん!?」

「あ、すみません!館田さん!養鶏場からの電話です!」

「養鶏場?」

「はい!・・・・・・・・鳥インフルエンザが・・・・。」

「ええーーーーーーーー!!??」

僕は、驚いた。


僕達は、食事もそこそこに才羽さんの運転で村の養鶏場へ。

ここの養鶏場は木造建築で、

一般的なブロイラーのような陰気臭さは一切無い。

風通しも良くて、日光も入り込んでいる。

昼間には隣の広大な空き地で「平飼い」のような事もさせているらしい。

が、今回はそれが仇になったようだ。

鶏にストレスをかけずに育成させるために敢えて平飼いしていたらしい。

「館田さん・・・この鶏から陽性反応が・・・。」

農場主が死んでいる鶏を僕達に見せた。

「陽性反応が出たのは間違いないのですか?」僕は農場主に聞いた。

「はい、今日の朝、こいつの様子がおかしかったので」

「採血して確認しました。先程急死しました。」

「何で・・・?今まで、こんな事一度も無かったのに・・・。」

デフォルトになって外から食材の調達が出来ない今に・・・?

「分かりません・・・。」

「館田さん、これは早く決断しないと・・・。」

才羽さんが困惑しながらも僕を促した。

「殺処分・・・ですか?」農場主が悲しそうな表情で僕に聞く。

「そうですね・・・・・。お辛いでしょうが。」

僕はそう言うしか無かった。

「う、うう・・・。」農場主がうつむいて泣き出した。

「やっと・・・、やっとなんですよ?」

「この村での養鶏場が軌道に乗ってきたのは・・・。」

「そうですよね。今まで試行錯誤を繰り返して、」

「これから・・・って、時に。」

僕は彼と一緒に養鶏場経営に携わってきただけに

彼の苦労が如何程のものだったかは、よく知っていた。

「館田さんにも、たくさん助けて頂いたのに・・・。」

農場主は鶏の死体を持つ手が震えていた。

「・・・僕のことは良いんですよ。」

「館田さん、殺処分ってどうするんですか?」才羽さんが聞いてくる。

「うん、鶏を密室に閉じ込めて炭酸ガスでやるんだ。」

「う、うう・・・。」それを聞いた農場主は更に嗚咽していた。

辛い現実だがそれしか方法が無い。

「密室に使えそうな建物有りますか?」

「・・・・・・飼料置き場を・・・飼料の備蓄をどければ。」

「分かりました。それで行きましょう。」

「僕は炭酸ガスの手配を。」

「才羽さんは人の手配をお願いします。」

僕は、淡々と準備を始めようとした。

「これで、密閉状態になったかな?」

「はい、ブルーシートとガムテープでありとあらゆるトコロを塞ぎました。」

「村民の皆さん、御協力ありがとうございます!」

僕は大声で、手伝ってくれていた村民に礼を言った。

来てくれた村民は、

自警団10人あとは農場主家族・僕・才羽さんで、合わせて13人。

それで、3時間かかった。

タイベックの作業服は全く通気性が無い。

梅雨明けのこの時期に、この作業はかなりの疲弊を伴う。

手伝ってくれていた作業員も皆ヘロヘロだ。

飼料置き場にはまだ生きている鶏が鳴き声を出している。

「炭酸ガスのバルブを・・・開けますか?」僕は農場主に聞く。

残酷かも知れないが

他人に自分が育てていた鶏を殺められるのは

辛いかもと思って聞いてみた。

「・・・・・すいません。私には無理です・・・。」

「どうか、お願いします・・・・。」農場主はうつむいたままだ。

「館田さん・・・・。」

才羽さんが、汗ダクになっている自分の顔を拭き取りながら、

僕を促す。

「うん、そうだね。」

「じゃあ、僕がこのバルブを開けますね?よろしいですか?」

「はい・・・はい・・・はい・・・お願いします。」

「・・・・・・・・・。」

僕は、その返事を聞いてから、無言で炭酸ガスのバルブを開けていった。

シューーー・・・・・・・ーーーーーーーーーーーーーーーー!!

炭酸ガスが流れる音が小さい音から大きい音に変わっていく。

それと同時に飼料置き場内の鶏の鳴き声が大きくなる。

「!!・・・・・・・・・・・・・。」農場主は辛そうだ。

シューーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

僕はバルブを全開にした。

だんだん、力強かった鶏の鳴き声が少しずつ、

数が減っていき・・・声が小さくなっていった。

「!!・・・・・・・・・・・・。」農場主は見ていられないようだ。

飼料置き場を離れていった。

・・・・・・そして、完全に鳴き声は収まってしまった。

「館田さん、鳴き声が止みましたね・・・。」

「うん。」

「このあとは?」

「そこの掘った穴にブルーシートを敷いてから、」

「一羽ずつ袋詰した死体を収めて行って下さい。」

「あ、もう後は僕達がしますんで、ご自宅で休んでいて下さい。」

僕は農場主に言った。

きっと、この作業は農場主には辛すぎるだろう。

死んだ鶏を袋詰するなんて。

「どうせ、このまま生きていても、」

「いずれは〆て殺して皆さんの食事になるんですけどねえ・・・。」

農場主が言った。

「なのに、なんでこんなに悲しいんだろう?」農場主は続けて言った。

「やはり、丹精込めて育てていたら、」

「こういう死に方されたら悲しくて当然だと思います。」

僕は僕なりにフォローした。

「すみません。すみません。」農場主はそう言いながら

何度も頭を下げながら宿舎に戻って行った。

「皆さん、この袋に一羽ずつ入れて下さい!」

「よろしくお願いします!」

「はい!」「はい!」

十人の自警団の方々は本当に積極的に協力してくれる。

「しかし・・・館田さん・・・。」才羽さんが僕に話しかける。

「ん?」僕は鶏の死骸を袋に詰めながら返事した。

「先日は、水力発電のダムの下流の畑が全滅。」

才羽さんも死骸を袋に詰めながら喋る。

「・・・・・。」

「今回、村の鶏・・・・・鶏肉が全滅。」

「・・・・・。」

「この村、食料がやばいことになってませんか?」

才羽さんの言う通りだ。

「実際、村民約1500人の食料の備蓄って・・・如何程なんですか?」

「最近、バタバタしているんで正確な数値は把握してないんだけど。」

「はい。」才羽さんは慣れてきたのか手際良く死骸を袋に詰めていく。

「2週間・・・かな?」

「な!!??」

「正確に分からないけどね。」

「村の経理からはじき出した予想だよ。」

「自生している山菜や川魚、じびえなどを応急的に確保しても」

「・・・たかが知れているしね。」

「じゃあ、一刻も早く、日本がデフォルトから復興してもらわないと・・・・。」

「そうだよね。」

「もうどっちにしたって、このままじゃあ、この村も壊滅してしまう。」

「ならば、牧坂さんの救出と坂東財務大臣の居場所を探し出さないと。」

「うん。」僕は思わず、死骸を袋に詰めた腕に力が入った。

「もう、霞が関のサーバーのセキュリティーの解析は終わっている筈です。」

「あ、もう、そんな時間か?じゃあ、サーバー棟に戻らなきゃいけないね。」

「俺、ちょっと弥多彦くんに電話してきます。」

「うん。よろしく。」

才羽さんは、そう言うと、農場主の自宅に走って行った。

僕は、袋詰を続けていた。

「館田さん。」一緒に作業していた自警団の人が僕に話しかける。

「はい?」

「村の外に出るのは、相変わらず危険なんですよね?」

「うん、そうだね。外国人暴徒が暴れているからね。」

「でも、このままでは、この村の食料が・・・・・。」

「分かってる。なんとかしないと、皆、餓死してしまう。」

「私たちに出来ることが有れば、何でも言って下さい!」

「うん、分かった。そう言ってもらえると心強いよ。」

そんな会話をしていると、農場主の宅から、才羽さんが走ってやってきた。

「た、た館田さーーーーん!!」

「ん?」

「大変でーーーーーーす!!」

「何が?」

「坂東財務大臣が!!」

「うん?」

「坂東財務大臣が!!」

「だから、どうしたの?」

「霞が関のサーバーのハッキングに成功して、」

「坂東財務大臣のスマホを突き止めたんですが・・・。」

「弥多彦くんが、やったの?それ?」

「はい!!」

「成長したねえ・・・・?」

「そんな呑気なコト言ってる場合じゃなくて・・・ですね?」

「弥多彦くんが、成長してくれたら才羽さんも嬉しいでしょ?」

「いや、もうそんなコトはどうでも良くて・・・ですね?」

「そこは喜ぼうよ、才羽さん!」

「いや、もう、・・・・結論から言うとですね!」

才羽さんもイライラしてきたようだ。

「うん?」

「坂東財務大臣は・・・・・、この八雲村に居るんですよ!?」

「はい?」

「だ・か・ら・・・」

「坂東財務大臣はこの村に居るんですよ!」

「・・・・・正確にには坂東財務大臣のスマホが、」

「この村に・・・ってコトです!!」

「え?・・・・・・・」

「ええーーーーーーーー!!??」

なんだ?この予想外の展開は?


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