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第一章 見習い聖女編
第十九話 王子の事情
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エレーナは謁見の間から、別の広い部屋へと移動した。
広いとはいえ、何十人も入るほどではないため、入室する人数は制限された。
エレーナ側は五人
エレーナ、
シスター・クレア、
グリッセン、
サイモン教皇、
ドルーズ騎士団長。
王家側も五人
エドワード国王、
マリアンヌ王妃、
シリウス第一王子、
フィリップ第二王子、
それに大柄の騎士が一名。
マゼラン大司教もこの場にいるのだが、彼はエレーナ側とも王族側とも言えない位置に立っている。
彼はどちらの陣営なのだろうか。
エレーナ側の椅子は二つ用意してあった。
左の椅子にエレーナ、右にサイモン教皇が座る。
エレーナの左にグリッセン、椅子の真ん中にドルーズ騎士団長、そしてサイモン教皇の右にシスター・クレアが立っている。
王家陣営は、騎士以外の四人全員が座っている。
「ふん、久しいな、ドルーズよ」
相手側の騎士がドルーズ騎士団長に話しかけた。
「おお。騎士団対抗の親善試合ぶりであるな、ブラッドリーよ。息災であったか?」
ドルーズが嬉しそうに応えた。
相手の騎士はブラッドリーというのか。
「ククク、親善試合か。なつかしいな。俺様の足元に這いつくばる貴様の顔が今でも鮮明に思い浮かぶわ」
「うむ、あのときは我輩の完敗であった。だが次はそうはいかぬぞ?」
(え? ドルーズが負けたの? 聖女の加護をバッチバチに常備した聖騎士スーパーグリッセンと互角に渡りあう剛腕の騎士が?)
とはいえ、本人は負けたことを悔しいと思っていない風で、なぜかドルーズよりもブラッドリーのほうが悔しそうな顔をしている。
「……貴様はいつもそうだ。いつも俺様の上を歩いてやがった。だが今は違う! 今では俺様のほうが上だ!」
「む? 勝負は時の運でもあるのだぞ? 前回勝ったからといって貴殿の方が上とは、ちと早計ではないか?」
「……試してみればわかる」
「これこれ、剣から手を離さぬか、ブラッドリー! 場をわきまえよ! 我輩に剣を抜かせるでない!」
「余裕ぶりやがって……。俺様がその気なら、そっちの者、全員をこの場で殺せるのだぞ? お前も含めてな」
聞き捨てならない発言だった。
まさかのエレーナ、生命の危機である。
――へ? 殺すの? 私達全員を? いったいなぜ?
頭に疑問符が浮かび上がったが、エレガントに対応することにした。
「ブラッドリー殿といいましたか。頭に血が上っているのかもしれませんが、あなたの発言が王家の指示であると捉えられることを理解していますか? ――国王陛下。護衛の者にこのような暴言を許すということは、王家がアストレア教に対し、明確な謀反の意思を持っていると判断せざるを得ませんが?」
「まさか。謀反の意思など王家にはありません。おい、ブラッドリー、控えぬか。余は勝手な行動を許した覚えはないぞ」
エドワード国王が形ばかりの叱責をした。
どうやら本気でたしなめる気はなさそうだ。
ブラッドリーの手は、まだ剣に置かれている。
(なんなの? まるで茶番のようなやり取りね。王家に対する印象を悪くして、王家側に何の利点があるというのかしら?)
「……わかりました。知り合いに会ってつい軽口を叩いてしまった、ということにしておきましょう。ですがブラッドリー殿、次はありませんよ?」
エレーナの言葉に、ブラッドリーがフンと鼻を鳴らし、剣から手を離した。
「グリッセン、あなたも落ち着きなさい」
左に立つグリッセンを見やると、剣の柄を握りしめ、今にも抜剣しそうだった。
「……はい。失礼しました、エレーナ様」
グリッセンが剣から手を離すと場の緊張が緩和し、エレーナは人知れず胸をなでおろした。
(話がぜんぜん進まないわ。私との婚姻が不満ならそう言ってくれればいいのに)
もしや婚姻を中止させようとしている?
婚約中止は願ったりなのだが、アストレア教会としては?
初代聖女様の言いつけを破ることになるのだが、どんなペナルティがあるのだろう?
「……それでは聖女様との婚約の儀を続けさせていただく。シリウス、聖女様にご挨拶を」
国王の強引な進行に、シリウス王子が嫌そうな顔でエレーナに目を向ける。
「……シリウス・クルーウェルだ」
「………………」
え?
終わり?
まさかこれで挨拶が終了したの?
うそでしょ?
「では聖女様のご挨拶を」
国王の発言に耳を疑う。
どうやらシリウス王子の挨拶は終わったらしい。
(いやいや。おかしいでしょ? こんな嫌そうなる相手と婚約なんてありえないから)
「……私の挨拶の前にお聞きしたいのですが、シリウス殿下はなにか思うところがあるのでしょうか? あるのならば、ぜひ聞かせていただきたいのですが? このままでは婚約の儀を中止せざるを得ません」
エレーナは当然の疑問をぶつけた。
「そうですな。ワシらアストレア教の役目は聖女様の安寧に他なりません。それには当然、婚姻後の生活も含まれておりますじゃ。なのに、シリウス王子からは聖女様に対する害意しか感じられませぬ。理由も聞かぬまま、我らが宝である聖女エレーナ様を結ばせると、本気で考えておるのか? それとも王よ、もしや聖女様との婚約を中止なさるつもりなのか?」
サイモン教皇がエレーナの援護をする。
「むぅ、中止は困るな。おい、シリウス、どうして聖女様にそのような態度をとるのか説明せよ」
意外にも王様は婚約に賛成らしい。
てっきり、反対なのかと思ったが。
かといって、エレーナとの婚約をどうしても成立させたいって感じでもない。
おそらく、聖女の力に疑問を持っているのだろう。
平民の小娘の血を王家に迎えたくはないが、教会を敵に回したくもないので仕方なく、といったところか。
「俺は……ずっと努力してきた」
ん? シリウス王子の自分語りが始まったか。ふんふん。努力してきたのね。とにかく続きを聞いてみよう。
「物心ついたときから、王になるべく育てられてきた。俺自身も王になることを望んだし、王になるための厳しい課題も死ぬ思いでこなしてきたんだ」
ふむふむ。見かけによらず努力家ってことか。まぁ自己申告だけど。
「王としての心構えを学び、剣の修業、国家運営のための勉強もずっとずっと頑張ってきた。それもこれも王になるためだ」
ああ、なるほどね、とエレーナは納得した。
ただの平民嫌いかと思ったら、違ったようだ。
シリウスは第一王子である。
王家の第一王子に生まれたのだから、王になるのは当然だ。
シリウス王子は立場にあぐらをかくことなく、努力を重ねてきたと。
なのに、聖女が生まれてしまった。
聖女との婚姻は、王位継承権の放棄を意味する。
つまり今までの努力がすべて無駄になったのだ。
エレーナが聖女として現れたから……。
シリウス王子の立場からしたら、おいそれと納得できるものではないだろう。
エレーナは王子に対し、申し訳ない気持ちになった。
狂犬だとか、残念王子だとか、心の中で罵倒したことも反省した。
彼には彼なりの事情があったのだ。
というわけで、偏見ゼロ&フラットな気持ちで続きを聞くことにした。
「なのに汚らわしい平民から聖女が生まれたという知らせがあった瞬間から、すべてが変わってしまった」
ん? ケガラワシイヘイミン?
「俺が優秀なばかりに、黒毛の猿と婚姻を結び、死ぬまで猿の世話をしなければならなくなったのだ」
ん? クロゲノサル?
「俺は生まれながらの王だ! 王となるべく生まれ、王となるべく生きてきた王の中の王だ! 俺の役割は平民猿の飼育係なんかじゃねぇんだよ1」
……ダメだこいつ。選民思想&平民差別主義に、どっぷり染まったどうしようもない人間だわ。
少し見直してしまったことを後悔しながら、となりを見ると。
グリッセンは怒りのあまり、ぎりぎりと歯を食いしばっていた。
サイモン教皇とシスター・クレアは、今まで見たこともないような表情をしている。
例えるなら、家族を惨殺した犯人が、目の前で眠りこけているのを発見したときの顔だ。
さすがドルーズ騎士団長は平常心……と思ったら、握りしめた拳からポタポタと血が落ちている。
表情が普段通りなのが、逆に恐ろしい。
あれ? もしや王子様ってば、大ピンチなのでは?
広いとはいえ、何十人も入るほどではないため、入室する人数は制限された。
エレーナ側は五人
エレーナ、
シスター・クレア、
グリッセン、
サイモン教皇、
ドルーズ騎士団長。
王家側も五人
エドワード国王、
マリアンヌ王妃、
シリウス第一王子、
フィリップ第二王子、
それに大柄の騎士が一名。
マゼラン大司教もこの場にいるのだが、彼はエレーナ側とも王族側とも言えない位置に立っている。
彼はどちらの陣営なのだろうか。
エレーナ側の椅子は二つ用意してあった。
左の椅子にエレーナ、右にサイモン教皇が座る。
エレーナの左にグリッセン、椅子の真ん中にドルーズ騎士団長、そしてサイモン教皇の右にシスター・クレアが立っている。
王家陣営は、騎士以外の四人全員が座っている。
「ふん、久しいな、ドルーズよ」
相手側の騎士がドルーズ騎士団長に話しかけた。
「おお。騎士団対抗の親善試合ぶりであるな、ブラッドリーよ。息災であったか?」
ドルーズが嬉しそうに応えた。
相手の騎士はブラッドリーというのか。
「ククク、親善試合か。なつかしいな。俺様の足元に這いつくばる貴様の顔が今でも鮮明に思い浮かぶわ」
「うむ、あのときは我輩の完敗であった。だが次はそうはいかぬぞ?」
(え? ドルーズが負けたの? 聖女の加護をバッチバチに常備した聖騎士スーパーグリッセンと互角に渡りあう剛腕の騎士が?)
とはいえ、本人は負けたことを悔しいと思っていない風で、なぜかドルーズよりもブラッドリーのほうが悔しそうな顔をしている。
「……貴様はいつもそうだ。いつも俺様の上を歩いてやがった。だが今は違う! 今では俺様のほうが上だ!」
「む? 勝負は時の運でもあるのだぞ? 前回勝ったからといって貴殿の方が上とは、ちと早計ではないか?」
「……試してみればわかる」
「これこれ、剣から手を離さぬか、ブラッドリー! 場をわきまえよ! 我輩に剣を抜かせるでない!」
「余裕ぶりやがって……。俺様がその気なら、そっちの者、全員をこの場で殺せるのだぞ? お前も含めてな」
聞き捨てならない発言だった。
まさかのエレーナ、生命の危機である。
――へ? 殺すの? 私達全員を? いったいなぜ?
頭に疑問符が浮かび上がったが、エレガントに対応することにした。
「ブラッドリー殿といいましたか。頭に血が上っているのかもしれませんが、あなたの発言が王家の指示であると捉えられることを理解していますか? ――国王陛下。護衛の者にこのような暴言を許すということは、王家がアストレア教に対し、明確な謀反の意思を持っていると判断せざるを得ませんが?」
「まさか。謀反の意思など王家にはありません。おい、ブラッドリー、控えぬか。余は勝手な行動を許した覚えはないぞ」
エドワード国王が形ばかりの叱責をした。
どうやら本気でたしなめる気はなさそうだ。
ブラッドリーの手は、まだ剣に置かれている。
(なんなの? まるで茶番のようなやり取りね。王家に対する印象を悪くして、王家側に何の利点があるというのかしら?)
「……わかりました。知り合いに会ってつい軽口を叩いてしまった、ということにしておきましょう。ですがブラッドリー殿、次はありませんよ?」
エレーナの言葉に、ブラッドリーがフンと鼻を鳴らし、剣から手を離した。
「グリッセン、あなたも落ち着きなさい」
左に立つグリッセンを見やると、剣の柄を握りしめ、今にも抜剣しそうだった。
「……はい。失礼しました、エレーナ様」
グリッセンが剣から手を離すと場の緊張が緩和し、エレーナは人知れず胸をなでおろした。
(話がぜんぜん進まないわ。私との婚姻が不満ならそう言ってくれればいいのに)
もしや婚姻を中止させようとしている?
婚約中止は願ったりなのだが、アストレア教会としては?
初代聖女様の言いつけを破ることになるのだが、どんなペナルティがあるのだろう?
「……それでは聖女様との婚約の儀を続けさせていただく。シリウス、聖女様にご挨拶を」
国王の強引な進行に、シリウス王子が嫌そうな顔でエレーナに目を向ける。
「……シリウス・クルーウェルだ」
「………………」
え?
終わり?
まさかこれで挨拶が終了したの?
うそでしょ?
「では聖女様のご挨拶を」
国王の発言に耳を疑う。
どうやらシリウス王子の挨拶は終わったらしい。
(いやいや。おかしいでしょ? こんな嫌そうなる相手と婚約なんてありえないから)
「……私の挨拶の前にお聞きしたいのですが、シリウス殿下はなにか思うところがあるのでしょうか? あるのならば、ぜひ聞かせていただきたいのですが? このままでは婚約の儀を中止せざるを得ません」
エレーナは当然の疑問をぶつけた。
「そうですな。ワシらアストレア教の役目は聖女様の安寧に他なりません。それには当然、婚姻後の生活も含まれておりますじゃ。なのに、シリウス王子からは聖女様に対する害意しか感じられませぬ。理由も聞かぬまま、我らが宝である聖女エレーナ様を結ばせると、本気で考えておるのか? それとも王よ、もしや聖女様との婚約を中止なさるつもりなのか?」
サイモン教皇がエレーナの援護をする。
「むぅ、中止は困るな。おい、シリウス、どうして聖女様にそのような態度をとるのか説明せよ」
意外にも王様は婚約に賛成らしい。
てっきり、反対なのかと思ったが。
かといって、エレーナとの婚約をどうしても成立させたいって感じでもない。
おそらく、聖女の力に疑問を持っているのだろう。
平民の小娘の血を王家に迎えたくはないが、教会を敵に回したくもないので仕方なく、といったところか。
「俺は……ずっと努力してきた」
ん? シリウス王子の自分語りが始まったか。ふんふん。努力してきたのね。とにかく続きを聞いてみよう。
「物心ついたときから、王になるべく育てられてきた。俺自身も王になることを望んだし、王になるための厳しい課題も死ぬ思いでこなしてきたんだ」
ふむふむ。見かけによらず努力家ってことか。まぁ自己申告だけど。
「王としての心構えを学び、剣の修業、国家運営のための勉強もずっとずっと頑張ってきた。それもこれも王になるためだ」
ああ、なるほどね、とエレーナは納得した。
ただの平民嫌いかと思ったら、違ったようだ。
シリウスは第一王子である。
王家の第一王子に生まれたのだから、王になるのは当然だ。
シリウス王子は立場にあぐらをかくことなく、努力を重ねてきたと。
なのに、聖女が生まれてしまった。
聖女との婚姻は、王位継承権の放棄を意味する。
つまり今までの努力がすべて無駄になったのだ。
エレーナが聖女として現れたから……。
シリウス王子の立場からしたら、おいそれと納得できるものではないだろう。
エレーナは王子に対し、申し訳ない気持ちになった。
狂犬だとか、残念王子だとか、心の中で罵倒したことも反省した。
彼には彼なりの事情があったのだ。
というわけで、偏見ゼロ&フラットな気持ちで続きを聞くことにした。
「なのに汚らわしい平民から聖女が生まれたという知らせがあった瞬間から、すべてが変わってしまった」
ん? ケガラワシイヘイミン?
「俺が優秀なばかりに、黒毛の猿と婚姻を結び、死ぬまで猿の世話をしなければならなくなったのだ」
ん? クロゲノサル?
「俺は生まれながらの王だ! 王となるべく生まれ、王となるべく生きてきた王の中の王だ! 俺の役割は平民猿の飼育係なんかじゃねぇんだよ1」
……ダメだこいつ。選民思想&平民差別主義に、どっぷり染まったどうしようもない人間だわ。
少し見直してしまったことを後悔しながら、となりを見ると。
グリッセンは怒りのあまり、ぎりぎりと歯を食いしばっていた。
サイモン教皇とシスター・クレアは、今まで見たこともないような表情をしている。
例えるなら、家族を惨殺した犯人が、目の前で眠りこけているのを発見したときの顔だ。
さすがドルーズ騎士団長は平常心……と思ったら、握りしめた拳からポタポタと血が落ちている。
表情が普段通りなのが、逆に恐ろしい。
あれ? もしや王子様ってば、大ピンチなのでは?
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