川石男(ロックマン)伝説

赤沼

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第一章:川石男・『将来の夢』編

ロックマンの抱いた夢 1

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※ロックマンの人となりを知ってもらうために、彼が25~32歳で抱いた将来の夢を紹介します。(紹介順が夢の順番です)


①、マンガ家


「マンガ家のなりかたを教えてくれ」

 ある夏の日、ロックマンに『相談がある』と呼び出されました。するとロックマンは、会った早々に、こんな事を聞いてきたのです。
 あまりに脈絡のない相談に、頭に『?』マークが浮かばせながらもロックマンに聞いてみました。

「ロックマン、マンガ描いてたの?」
「いや、描いてないけど、なりたいから教えてくれ」

 私は、漫画もイラストもまったく描けません。それでも、知っている範囲でロックマンに教えました。出版社への持ち込み。マンガ賞への応募。私が知っているのは、その程度の事でした。ロックマンは熱心にふむふむと聞き、話し終わった私に「ありがとう」と言いました。

「ところで、なんでいきなりマンガ家になりたくなったの?」
「小学校の頃、みんなでやった落書きが楽しかったから、これを仕事にしたいと思ったんだ」

 ……いやね、志す理由は人それぞれあると思いますよ。楽しいって理由は、とてもすばらしいものだと思います。
 ただし、その心を小学校から持ち続け、少しでもマンガを描いていれば、ですが。

 普段から仕事の愚痴が絶えないロックマン。そんなロックマンが急にマンガ家志望だなんて、ただの現実逃避にしか思えません。
 でも、きっかけはどうでも、それが本物の気持ちになることもあります。だから私は、少しでもロックマンを応援してやろうと思いました。

「ロックマンが本気でマンガ家になりたいなら、今から1週間で、どんなにつまらなくて絵が汚くてもいいから、5ページなにか描いて持ってきて。とりあえず、期限を決めてなにかを描いてみよう」
「わかった! なんか、プロっぽくて楽しいな。じゃ、1週間後に連絡する」

 ロックマンは、意気揚々と帰っていきました。


 が、1週間後……連絡ありません。
 2週間後……連絡ありません。

 仕方がないので私から電話してみました。すると、ロックマンは、少し暗い声で電話に出ました。

「……俺……もう諦めた。期間を決められて描くのが、こんなに辛いと思わなかった」

 連絡がこない時点で分かっていましたが、やっぱり予想通りの答えでした。

「……そうか。ところで、どこまで描いた? せっかくだから見せてくれないか?」
「……いや、描いてない。描こうとはしたんだけど……」

 ひとコマも描いていませんでした。おそらく、鉛筆すら握ってないでしょう。

 こうして、ロックマンのマンガ家への夢は潰えました。(概ね25歳)

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