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2、暗闇に灯る炎
しおりを挟む………………。
…………。
「……ぅ、う……ここは……?」
目を開けると、周囲はすっかりと闇に包まれていた。
視線の遥か先に微かに瞬く儚い光は星明りだろうか。しかし、その星明りらしき光も、カサカサと揺れる枝葉に遮られて、満足に届かない。
どうも俺は仰向けに寝ているらしい。
周囲の様子を確認しようと身体を動かそうとしてみるが、何かに固定されているように手も足も動かせない。指は動くが、指だけ動いてもどうしようもない。
それに、やけに頭が痛くて考えがまとまらない。
「……俺はいったい、どうなったんだ……?」
少しぼやけた頭を奮い起こして、意識を失う前に思考を巡らせる。
確か……魔物の青年を始末しようとして…………そこから先の記憶が無い。
まさか、あの魔物に反撃されたのか?
……いや、それはありえない。俺の束縛魔法は完璧だ。あんな魔物ごときにどうにかできる訳が無い。
自分の身に何が起こったのかまったく理解できずに混乱してしまう。
くそ……。せめてこの頭痛さえ無ければ、もう少し考えもまとまるのに。
そんなことを考えていると、ざっざっと草を踏み鳴らしながらこっちに近付いてくる気配に気付いた。
首を捻ってそちらを向くと、タイマツの灯りが近付いてきていた。
タイマツが照らしているのは……あの、狼の魔物の青年だった。
「……目が覚めたみたいだな」
火に照らされた顔が、俺を見下ろしていた。
瞳は憎悪に歪み、俺に刻まれた身体は包帯に包まれている。
「……お前がやったのか? 今なら許してやる。また縛られたくなかったら、今すぐ俺を自由にしろ」
「こんな状況で、まだそんな口が叩けるのかよ。ほら、自分がどうなってるか見てみろよ」
魔物がタイマツを俺に向けた。そして俺は、ようやく自分がどうなっているか知ることができた。
ツルだ。何重にも編まれたツルが、ロープのように俺の手足を縛り上げていたのだ。
「縛られてるのはどっちか分かったか?」
「こんなもの、俺の魔法で……」
意識を集中させ、ツルを焼き切る炎を生み出す……
はずだった。
「……あれ……? バカな……なんで!?」
どんなに集中しようが、魔力がまったく収集していかない。
火球はおろか、爪先程の炎さえも出ないのだ。
「アンタを縛っているツルは『魔法喰いの樹木のツル』だ。そのツルに巻かれている限り、魔法は一切使えない」
絶望と言う名の鐘の音が、頭の中で鳴り響く。
俺は、こんなところで、こんな薄汚い魔物に殺されて人生を終えるのか……?
「安心しろ。お前は殺さない」
俺の心を見透かしたように、魔物の少年が語りかけた。
ほっ、としたのも束の間――
「お前には、俺が味わった何倍もの屈辱を味わってもらわないとならないからな」
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