ネイルの残像

有森崎あたる

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25. 背後から

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トイレに入り込むと、水道の蛇口を捻り、バシャバシャと手を洗う千春。

(まさか、こんなところで昔のセフレに会うなんて…しかも、2人で初めて出かけた今日に会うなんて…最悪…健人、怒ってるよな…)

ジャーと水が吹き出る水道の蛇口をキュッと止める。

(仕方ない…過去なんて、今更変えれない…でも、いい気分じゃないよな…とにかく、健人には、もう何も関係ないってちゃんともう一回話そう…)

その時、千春の背後で、ギッとトイレの扉が開く音がした。
千春は、不意に人の気配を感じ、俯いていた顔を上げると、目の前の鏡を見てギョッと驚いた。
鏡に映っていたのは、まさとの姿だった。

「え?」

「よお、また会ったな…」

まさとは、舌をいやらしくペロッと出して口を舐めると、千春の後ろからに近づいてくる。

「新しいセフレか?それとも彼氏ができたのか?おーっと、お前は特定の相手は作らないんだったな…これからお楽しみか?いいねぇー、俺にも分けてくれよぉ」

と、戯けながら、ガバッと千春を背中から抱きしめ、シャツの裾をめくりあげると、体に手を這わし、乳首を触り始めた。

(し、しまった!油断したっ!)

「な、何するんだっ!やめてよ!離して!」

必死に抵抗するも、背が高く一回り体格のいいまさとの腕を千春がはらえる訳もなく、まさとの腕の中でジタバタするだけだった。

「やめて?何だよぉ、昔はあんなに抱き合ったのに、ほんとお前冷てぇーな、それとも何か?ハハ!そういうプレイがご希望か?」

いやらしくニタっと笑うと、まさとの手が千春のズボンのジッパーに手をかけたかと思うと、荒々しく下着の中に手を入れてきた。

「やめて!やめてよ!!!」

激しく抵抗し始めると、まさとは千春の口を手で塞ぎ、広めの洗面台に、ダンッ!と上半身を押し付けた。

(ヤバいっ!!!ヤられるっ!!!)

「…んんうぅぅっ!!!」

塞がれた口からは、声にならないうめき声がもれ、千春は必死に体を捻り、逃げようとするも、まさとに押さえつけられた体は、虚しくもビクリともしなかった。

「安心しろよ、お前のイイとこは、まだ覚えてる…すぐに天国見せてやるから、いい声で啼けよ…」

千春のズボンにまさとの手がかかり、ずり下ろされた、その時、

ダンッ!!!

「千春っっっ!!!」

トイレのドアが激しく開いたかと思うと、勢いよく、健人が飛び込んできた。

押さえ込まれ、ずり落ちたズボンから千春のお尻が目に入ると、健人は、カァァァァと頭に血が湧き上がったように、大声で叫んだ!

「きさまっっっーーー!」

激情した健人は、力強く握りしめた拳を大きく振りかざし、まさとの頬をガツンと殴りつけた!

「っっうっ!!!」

小さくうめき声を上げながら、まさとの大きな体がふらぁっと後ろへ崩れてゆく。

「逃げるぞっ!!!」

健人は千春を抱き起こし、手を引くと、ダァァーとトイレの外へ走り出た。
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