4 / 9
25時のバレンタイン・キス ②-1 〜バレンタイン前日〜
しおりを挟む
バレンタイン前日。
キッチンに立つ僕は、早速レシピサイトを目の前に、初めてのお菓子作りに奮闘する!
『トリュフチョコレートの作り方』のサイトを開け、エプロンをつけ、シャツの袖を捲りあげて、やる気満々!気合だけは充分入っている!
「えっーーーと、まずはチョコを刻む…と」
お店の袋からチョコを取り出し、丁寧に包み紙を開けていく。
わざわざ、輸入食料品のお店まで足を運んで買った、フランス産の高級板チョコ。
シンプルで余計な飾りもなく、四角いその板チョコは、真ん中にお店のロゴマークが刻まれており、それがさらに洗練された高貴さを際立たせていた。
そのチョコを惜しげもなく、まな板の上で細かく刻んでいく。
「どれくらい細かく?合ってる?合ってるよね???」
包丁を小刻みに動かし、ガリッガリッと音を立てて小さくなっていくチョコレート。
ぎこちなく包丁を持つ手が、時折震える。
何度も読み返したレシピサイトをまた見ては、僕は間違えていないか?確認する。
「えっとぉ…次は、生クリームを沸騰させる…と…」
コンロの壁に掛けてある片手鍋を手にした途端、ブブッー、ブブッーと、キッチンカウンターの上に置いていた僕のスマホが突然振動する。
マナーモードにしていたスマホの画面に浮かび上がる、彼の名前。
「もしもし?」
「あ?俺だけど…」
いつも聞く彼の声。
だけど、今日は、何だかトーンが低い。
「何?今ちょっと手が離せないんだけど…」
と、言い終わらないうちに、電話の向こうで聞こえたざわつく雑音、そして、トゥルルルと鳴り響くベルの音と、まもなく発車します…のアナウンスの声。
(え?)
僕は思わず、耳を疑った。
(彼は?どこにいる?)
「ごめん」
電話から聞こえる彼の少し曇った声。
「実は、仕事で少しトラブって…急に大阪に行かないといけなくなったんだ」
「…へ?」
(大阪…???)
僕は、思いもしない話に、声が裏返った。
「明日には必ず帰るから…あっ!新幹線きたっ…じゃ、乗るから、また後でかける…」
「えっ、ちょ…帰るって…」
と、僕が尋ねる前に、電話はとっくに切れていた。
(新幹線?え?東京駅にいたってこと?大阪?なに?出張???急に???トラブってて…」
急に飛び込んできた多くのワードに、僕の頭はこんがらがる!
「帰るって、何時になるんだよ…大阪なのに…」
無機質なスマホに向かって呟く僕。
「わかってるのかよ?!明日は!初めてのバレンタインデーだよ!!!」
僕は、行き場のない怒りをスマホに向け、ソファに投げつけた。
「2/14は、一緒にイルミネーションスポットを見に行きたいんだ」
「おっ!そこ、最近やってるとこだよね、イルミネーションとオブジェの幻想的な世界が見れるやつ。俺も見たいと思ってたんだ、いいよ、行こう」
「ほんと?楽しみー!」
「前の晩から、そっちに泊まりにいくよ」
ついこの前の、彼とのやり取りが脳裏をかすめる。
「今日の夜にはもう、一緒にいるんじゃなかったのかよ…」
口をキュッと結び、手を固く握る僕。
ー明日には必ず帰るからー
彼の言葉を思い出す。
(明日…明日必ず帰ってくる…)
僕は、祈るように心で繰り返すと、またキッチンに戻り、生クリームを片手鍋にトプットプッと流し入れる。
チラッとレシピを見返す。
挫けそうな気持ちを奮い立たせるように、レシピを大きな声で読み上げる。
「えっと…生クリームを弱火で沸騰直前までに温める…と」
指でコンロのスイッチをえいっ!と力強く入れる。
「作るって決めたんだ…それに、ちゃんと帰ってくるって言ったし…」
(大丈夫…きっと…)
キッチンやテーブルに広げたチョコや、ココアパウダー、バレンタイン用の小物。
(この日のために、材料も買ったし、いろんなところを見て回って、パッケージも集めたんだ…)
「あっ!!!」
生クリームを入れた片手鍋の鍋肌が、ふつふつと泡立ってきた。
僕は慌てて、刻んだチョコを入れ、
「混ぜる!混ぜる!!」
初めてのお菓子作りに、僕は集中するように声を出し、自分を励ましながら、1人キッチンで格闘する。
そして、願った。
(明日には、絶対帰ってこいっ!)
キッチンに立つ僕は、早速レシピサイトを目の前に、初めてのお菓子作りに奮闘する!
『トリュフチョコレートの作り方』のサイトを開け、エプロンをつけ、シャツの袖を捲りあげて、やる気満々!気合だけは充分入っている!
「えっーーーと、まずはチョコを刻む…と」
お店の袋からチョコを取り出し、丁寧に包み紙を開けていく。
わざわざ、輸入食料品のお店まで足を運んで買った、フランス産の高級板チョコ。
シンプルで余計な飾りもなく、四角いその板チョコは、真ん中にお店のロゴマークが刻まれており、それがさらに洗練された高貴さを際立たせていた。
そのチョコを惜しげもなく、まな板の上で細かく刻んでいく。
「どれくらい細かく?合ってる?合ってるよね???」
包丁を小刻みに動かし、ガリッガリッと音を立てて小さくなっていくチョコレート。
ぎこちなく包丁を持つ手が、時折震える。
何度も読み返したレシピサイトをまた見ては、僕は間違えていないか?確認する。
「えっとぉ…次は、生クリームを沸騰させる…と…」
コンロの壁に掛けてある片手鍋を手にした途端、ブブッー、ブブッーと、キッチンカウンターの上に置いていた僕のスマホが突然振動する。
マナーモードにしていたスマホの画面に浮かび上がる、彼の名前。
「もしもし?」
「あ?俺だけど…」
いつも聞く彼の声。
だけど、今日は、何だかトーンが低い。
「何?今ちょっと手が離せないんだけど…」
と、言い終わらないうちに、電話の向こうで聞こえたざわつく雑音、そして、トゥルルルと鳴り響くベルの音と、まもなく発車します…のアナウンスの声。
(え?)
僕は思わず、耳を疑った。
(彼は?どこにいる?)
「ごめん」
電話から聞こえる彼の少し曇った声。
「実は、仕事で少しトラブって…急に大阪に行かないといけなくなったんだ」
「…へ?」
(大阪…???)
僕は、思いもしない話に、声が裏返った。
「明日には必ず帰るから…あっ!新幹線きたっ…じゃ、乗るから、また後でかける…」
「えっ、ちょ…帰るって…」
と、僕が尋ねる前に、電話はとっくに切れていた。
(新幹線?え?東京駅にいたってこと?大阪?なに?出張???急に???トラブってて…」
急に飛び込んできた多くのワードに、僕の頭はこんがらがる!
「帰るって、何時になるんだよ…大阪なのに…」
無機質なスマホに向かって呟く僕。
「わかってるのかよ?!明日は!初めてのバレンタインデーだよ!!!」
僕は、行き場のない怒りをスマホに向け、ソファに投げつけた。
「2/14は、一緒にイルミネーションスポットを見に行きたいんだ」
「おっ!そこ、最近やってるとこだよね、イルミネーションとオブジェの幻想的な世界が見れるやつ。俺も見たいと思ってたんだ、いいよ、行こう」
「ほんと?楽しみー!」
「前の晩から、そっちに泊まりにいくよ」
ついこの前の、彼とのやり取りが脳裏をかすめる。
「今日の夜にはもう、一緒にいるんじゃなかったのかよ…」
口をキュッと結び、手を固く握る僕。
ー明日には必ず帰るからー
彼の言葉を思い出す。
(明日…明日必ず帰ってくる…)
僕は、祈るように心で繰り返すと、またキッチンに戻り、生クリームを片手鍋にトプットプッと流し入れる。
チラッとレシピを見返す。
挫けそうな気持ちを奮い立たせるように、レシピを大きな声で読み上げる。
「えっと…生クリームを弱火で沸騰直前までに温める…と」
指でコンロのスイッチをえいっ!と力強く入れる。
「作るって決めたんだ…それに、ちゃんと帰ってくるって言ったし…」
(大丈夫…きっと…)
キッチンやテーブルに広げたチョコや、ココアパウダー、バレンタイン用の小物。
(この日のために、材料も買ったし、いろんなところを見て回って、パッケージも集めたんだ…)
「あっ!!!」
生クリームを入れた片手鍋の鍋肌が、ふつふつと泡立ってきた。
僕は慌てて、刻んだチョコを入れ、
「混ぜる!混ぜる!!」
初めてのお菓子作りに、僕は集中するように声を出し、自分を励ましながら、1人キッチンで格闘する。
そして、願った。
(明日には、絶対帰ってこいっ!)
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
処女姫Ωと帝の初夜
切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。
七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。
幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・
『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。
歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。
フツーの日本語で書いています。
隠れSな攻めの短編集
あかさたな!
BL
こちら全話独立、オトナな短編集です。
1話1話完結しています。
いきなりオトナな内容に入るのでご注意を。
今回はソフトからドがつくくらいのSまで、いろんなタイプの攻めがみられる短編集です!隠れSとか、メガネSとか、年下Sとか…⁉︎
【お仕置きで奥の処女をもらう参謀】【口の中をいじめる歯医者】
【独占欲で使用人をいじめる王様】
【無自覚Sがトイレを我慢させる】
【召喚された勇者は魔術師の性癖(ケモ耳)に巻き込まれる】
【勝手にイくことを許さない許嫁】
【胸の敏感なところだけでいかせたいいじめっ子】
【自称Sをしばく女装っ子の部下】
【魔王を公開処刑する勇者】
【酔うとエスになるカテキョ】
【虎視眈々と下剋上を狙うヴァンパイアの眷属】
【貴族坊ちゃんの弱みを握った庶民】
【主人を調教する奴隷】
2022/04/15を持って、こちらの短編集は完結とさせていただきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
前作に
・年下攻め
・いじわるな溺愛攻め
・下剋上っぽい関係
短編集も完結してるで、プロフィールからぜひ!
潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは
マフィアのボスの愛人まで潜入していた。
だがある日、それがボスにバレて、
執着監禁されちゃって、
幸せになっちゃう話
少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に
メロメロに溺愛されちゃう。
そんなハッピー寄りなティーストです!
▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、
雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです!
_____
▶︎タイトルそのうち変えます
2022/05/16変更!
拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です
2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。
▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎
_____
体育倉庫で不良に犯された学級委員の話
煉瓦
BL
以前撮られたレイプ動画を材料に脅迫された学級委員が、授業中に体育倉庫で不良に犯される話です。最終的に、動画の削除を条件に学級委員は不良の恋人になることを了承します。
※受けが痛がったりして結構可哀想な感じなので、御注意ください。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる