上 下
32 / 35
★関係修復★

第1回お菓子作り①

しおりを挟む





屋敷がシンっと静まり返った頃、廊下に幼女特有の甲高い声が響いた。


「リリス!!はやく~!!」


ネージュは珍しく興奮した様子で頬を紅潮させながらリリスのスカートの裾を引っぱっていた。


「ふふっ。お嬢様は余程今日が楽しみだったんですね。」


「もちろんよ!!りあんりょうりちょうのおりょうりはとってもおいしいのよ??
けどね、やっぱりゆきねのときにたべていたごはんがこいしくなるのよ!!」


「雪音様のときのお食事ですか??
それほど、こちらとは違うんでしょうか??」


「ええ!!こちらのごはんはどちらかというとそざいのあじをいかしたものがおおいでしょう??
けどね、ゆきねのときのごはんはあっさりしたものもこってりしたものもたくさんあったの!!」


「あっさりにこってりですか??」


ネージュの言葉に想像ができないのか頭にハテナを浮かべるリリス。


「そうよ!!なにより、いちばんちがうのはおかしよね!!
こちらはあじよりもとにかくたくさんおさとうをつかうのがいいとされているでしょう??
けどね、むこうはおさとうをたくさんつかうんじゃなくておいしさにこだわったおかしもあまくないおかしもたくさんあるのよ!!」


「そうなんですか…。
甘くないお菓子というと、本日お嬢様が作られるものでしょうか??」


「ええ!!けどね、きょうのはかんたんにできるちょっとしたおかしなの!!
…おにいさまがきにいってくれるといいんだけど。」


興奮した様子から一転し、急に立ち止まり不安げな様子を見せるネージュ。


「大丈夫ですよ。お嬢様が一生懸命作られたものでしたら、きっとソージュ様もお気に召されるでしょう。」


「そうだといいな…。でもね!いちばんにできあがったらリリスにたべてもらうの!!
きょうつくるものいがいにもね、おいしいものはたーっくさん!あるのよ!!」


リリスの言葉に安心したのか気を取り直し目をキラキラ輝かせながらネージュは歩みを進めた。
そんなネージュの背をリリスは一瞬眩しそうに見つめ、すぐに後を追ったのであった。


ガチャッ


「失礼致します。リアン料理長。
ネージュお嬢様をお連れ致しました。
この度は厨房の使用許可をいただいたこと、改めてお礼申し上げます。」


「りあんりょうりちょう。ありがとうございます。
ほんじつから、よろしくおねがいしますね。」


「…はい。お待ちしておりました。」


今日のリアンも窓際に立っていたためか、綺麗な黒髪が月明かりに照らされ艶めいており、とても美しかった。
昨日も思ったがリアンはとても落ち着きがあり物静かなようだ。


「ところで、本日はどのようなものを作られるご予定でしょうか??
一応、材料は一通り揃えてありますが…もうすでに何かお考えがあるのでしょうか??」


「ええ。きのうもいっていたように、あまくないおかし…つまりしょっぱいおかしをつくります!!」


「しょっぱいお菓子…ですか??
昨日もそのようなことをおっしゃっておりましたが、そんなもの聞いたこともございませんが…。」


何を言っているんだと言わんばかりに訝しげな表情をするリアン。


「とりあえず、つくってみるのでりあんりょうりちょうもめしあがってみてください。」


「…そうですね。まずは作ってみましょう。
材料は何を使われますか??
明日の朝食分の材料はすでに仕込みで避けてありますので、お好きなものを使っていただいて構いません。」


「ありがとう。それでは、これとこれとこれをつかわせてもらいますね。」


「….そんなに少なくてよろしいのですか??
お砂糖は使われないのですね。」


「ええ。わたしがいまからつくるのはあまくないおてがるおかしですから。」


リアンはいよいよ何を言っているのか理解できずに困惑した表情をしている。
そんなリアンを見てネージュとリリスは物静かなわりには表情がよく変わるな…なんて思っていたのはリアンには秘密だ。


「リリス。ネージュはリリスもしってのとおり、りあんりょうりちょうとのやくそくがあるからじぶんでちょうりはできないの。
だからね、じっさいのちょうりはリリスにおねがいしてもいい??」


「ええ!もちろんです!!
そのつもりで本日は参りましたからね。
まずは何からすればよろしいですか??」


申し訳なさそうにするネージュ。
ネージュに頼られるのが嬉しいのかリリスは軽く腕まくりをしながら張り切って答えた。


「そうね…まずは…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

更新の間が空いてしまって申し訳ありません!!
月末月初で忙しくて頻度が落ちてしまいました…。
次回、ネージュの作るお菓子の正体が判明します。
リアンが誰と似てるのか皆様も推測して楽しんでいただければ嬉しいです!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

もう彼女でいいじゃないですか

キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。 常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。 幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。 だからわたしは行動する。 わたしから婚約者を自由にするために。 わたしが自由を手にするために。 残酷な表現はありませんが、 性的なワードが幾つが出てきます。 苦手な方は回れ右をお願いします。 小説家になろうさんの方では ifストーリーを投稿しております。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...