3 / 36
★異世界からの来訪者★
自覚
しおりを挟む---------------------------------------
コンコンコンッ
ガチャッ
---------------------------------------
広々とした部屋に扉をノックする音が鳴り響いた。
扉をノックした音の主はそのまま扉を開けて部屋へと入ってきた。
入ってきたのは、低い位置でツインテールをしており、メイド服を着たおよそ14歳前後くらいの少女であった。
メイド服の少女は目覚めている雪音を視界に入れ、目を見開いた。
「お嬢様!!お目覚めになられたのですね!!もう5日も眠ったきりで…!!このままお目覚めにならなかったらどうしようかと…!!」
メイド服の少女は涙目になりながら雪音のベッドに縋り付いてきた。
雪音は見覚えのない少女に困惑するが、ふと口から勝手に言葉がこぼれ落ちた。
「心配かけたわね。リリス。もう大丈夫よ。」
「お嬢様!!本当に大丈夫なんですね…ずっとずっとお嬢様がお目覚めになるのをお待ちしておりました!!」
リリスと思しき少女が安堵の涙を流しているのを横目に、雪音は意図せず自分の口から出た言葉に、少女をリリスと呼んだことに困惑していた。
“なぜ?どうして??私は彼女を知らないはずなのにどうして名前を知っているの??どうして勝手に言葉がでたの??”
雪音は戸惑いながらも、布団を握っている手を見てふとしたことに気がついた。
"え…どうして私の手こんなに小さいの??私今年で大学生よ!?こんな…まるで…子どもみたいな…そんな…まさか”
「お嬢様、どうなさいましたか??やはりまだどこかお加減がよろしくありませんか??」
「いえ、大丈夫よ。ありがとう。それよりも…ねえ、リリス、鏡を持ってきてもらえるかしら??」
「かしこまりました。ただいまお持ちいたします!!」
リリスから鏡を受け取り、緊張しながら雪音はその鏡を覗き込んだ…
しかし、そこにはいつも見慣れていた少し日に焼けた肌に黒髪に少しツリ目気味の黒い瞳の日本然とした造りの自分の顔ではなく、陶器のような真っ白な肌にふわふわロングのストロベリーブロンドの髪、大きなタレ目気味なピンクの瞳の3歳くらいの美少女が写っていた。
"え…待って…この子は誰!?どうして鏡に私でなくこの子が写っているの!?“
雪音は茫然と鏡を見つめながら、信じたくない一心でリリスに尋ねた。
「ねえ、リリス。私の名前と年齢を教えてもらえるかしら??」
「えっ…お嬢様のお名前と年齢ですか??」
「ええ。ずっと眠っていたものだから少し頭がぼーっとしてしまって…」
「かしこまりました。お嬢様のお名前はネージュ・ベノワ様。今度のお誕生日で4歳になられます。」
"やっぱり…今の私はもう天宮雪音ではないのね。ネージュ・ベノワ。今年で4歳だから現在は3歳かしら??どうして私がネージュ・ベノワとなっているのか…。以前の私はどうなってしまったのかしら…。"
鏡を置き、そっと目を伏せながら考え込んでいるネージュを見て、リリスが見かねて声をかけてきた。
「お嬢様、本当にもうお身体は大丈夫なのでしょうか??ご無理はされておりませんでしょうか??あんなことがあったばかりですので…」
「リリス…あんなこととは…??なにがあったのかしら??」
「何も覚えていらっしゃらないのですか??無理もありません。
今日はお目覚めでたくさんお話しもされましたから、お疲れかと思います。
もし、お嬢様が望まれるのでしたら、明日、私の知る限りの顛末をお話させていただきます。
ですので、今日のところはどうか、ごゆっくりとお休みになられてください。
旦那様、奥様にもお嬢様がお目覚めになられたことをお伝えさせていただきますので…」
「ええ…分かったわ。では、今日のところは休むことにするわ。」
「かしこまりました。それでは失礼致します。」
リリスが部屋から出て行った後、微睡む意識の中、雪音はこれからのこととネージュのことを考えながら眠りについた。
---------------------------------------
ここまで閲覧いただき、ありがとうございます!!
今回は少し長めのお話となっております。
次回からは、ネージュが寝込んでいた理由と雪音がネージュになるまでの空白の時間が徐々に明かされていきます。
数話続くかと思いますのでお付き合いいただければ嬉しいです。
12
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~
楠富 つかさ
ファンタジー
都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。
我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。
和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます
富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。
5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。
15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。
初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。
よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる