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★異世界からの来訪者★

自覚

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コンコンコンッ

ガチャッ


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広々とした部屋に扉をノックする音が鳴り響いた。
扉をノックした音の主はそのまま扉を開けて部屋へと入ってきた。





入ってきたのは、低い位置でツインテールをしており、メイド服を着たおよそ14歳前後くらいの少女であった。





メイド服の少女は目覚めている雪音を視界に入れ、目を見開いた。





「お嬢様!!お目覚めになられたのですね!!もう5日も眠ったきりで…!!このままお目覚めにならなかったらどうしようかと…!!」





メイド服の少女は涙目になりながら雪音のベッドに縋り付いてきた。





雪音は見覚えのない少女に困惑するが、ふと口から勝手に言葉がこぼれ落ちた。





「心配かけたわね。リリス。もう大丈夫よ。」




「お嬢様!!本当に大丈夫なんですね…ずっとずっとお嬢様がお目覚めになるのをお待ちしておりました!!」




リリスと思しき少女が安堵の涙を流しているのを横目に、雪音は意図せず自分の口から出た言葉に、少女をリリスと呼んだことに困惑していた。




“なぜ?どうして??私は彼女を知らないはずなのにどうして名前を知っているの??どうして勝手に言葉がでたの??”




雪音は戸惑いながらも、布団を握っている手を見てふとしたことに気がついた。




"え…どうして私の手こんなに小さいの??私今年で大学生よ!?こんな…まるで…子どもみたいな…そんな…まさか”




「お嬢様、どうなさいましたか??やはりまだどこかお加減がよろしくありませんか??」




「いえ、大丈夫よ。ありがとう。それよりも…ねえ、リリス、鏡を持ってきてもらえるかしら??」




「かしこまりました。ただいまお持ちいたします!!」




リリスから鏡を受け取り、緊張しながら雪音はその鏡を覗き込んだ…




しかし、そこにはいつも見慣れていた少し日に焼けた肌に黒髪に少しツリ目気味の黒い瞳の日本然とした造りの自分の顔ではなく、陶器のような真っ白な肌にふわふわロングのストロベリーブロンドの髪、大きなタレ目気味なピンクの瞳の3歳くらいの美少女が写っていた。




"え…待って…この子は誰!?どうして鏡に私でなくこの子が写っているの!?“




雪音は茫然と鏡を見つめながら、信じたくない一心でリリスに尋ねた。



「ねえ、リリス。私の名前と年齢を教えてもらえるかしら??」



「えっ…お嬢様のお名前と年齢ですか??」



「ええ。ずっと眠っていたものだから少し頭がぼーっとしてしまって…」



「かしこまりました。お嬢様のお名前はネージュ・ベノワ様。今度のお誕生日で4歳になられます。」



"やっぱり…今の私はもう天宮雪音ではないのね。ネージュ・ベノワ。今年で4歳だから現在は3歳かしら??どうして私がネージュ・ベノワとなっているのか…。以前の私はどうなってしまったのかしら…。"



鏡を置き、そっと目を伏せながら考え込んでいるネージュを見て、リリスが見かねて声をかけてきた。



「お嬢様、本当にもうお身体は大丈夫なのでしょうか??ご無理はされておりませんでしょうか??あんなことがあったばかりですので…」



「リリス…あんなこととは…??なにがあったのかしら??」



「何も覚えていらっしゃらないのですか??無理もありません。
今日はお目覚めでたくさんお話しもされましたから、お疲れかと思います。
もし、お嬢様が望まれるのでしたら、明日、私の知る限りの顛末をお話させていただきます。
ですので、今日のところはどうか、ごゆっくりとお休みになられてください。
旦那様、奥様にもお嬢様がお目覚めになられたことをお伝えさせていただきますので…」



「ええ…分かったわ。では、今日のところは休むことにするわ。」



「かしこまりました。それでは失礼致します。」


リリスが部屋から出て行った後、微睡む意識の中、雪音はこれからのこととネージュのことを考えながら眠りについた。




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ここまで閲覧いただき、ありがとうございます!!
今回は少し長めのお話となっております。
次回からは、ネージュが寝込んでいた理由と雪音がネージュになるまでの空白の時間が徐々に明かされていきます。
数話続くかと思いますのでお付き合いいただければ嬉しいです。


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