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━━第十一章━━

━━ 六節 ━━

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水平線から顔を出したばかりの太陽。

そして上空から3隻の飛空挺が、海面を走るボートへ照準を定める。

砲弾は、ボートの脇に外れ、席にしがみついているハルカが悲鳴を上げる

「うわァァァァァ!!」

大きく揺れ、身動きが取れない状況か。 

砲弾が、こちらにまっすぐ向かってきた。

やられるッ!!

死を免れないと悟った瞬間、砲弾が寸前で爆発した。

衝撃でボートは跳ねて水しぶきを上げる。

「━━オイ」 

すると、聞き覚えのない声が、目を閉じて身構えてるハルカの耳に入ってきた。 

恐る恐る振り返ると、 そこには、銀髪の子供が立っていた。 

ハイカットの靴にすね当て、そして、複数のポケットがあるジョガーパンツ。

白いテックウェアの下から、わずかにシャツがはみ出ており、銀髪の下には般若の仮面があった。 

こいつは、何者なんだ!?

一体、いつからそこに!?

「いつまで縮こまっている気だ?
さっさと舵をとれ」 
 
「えッ!? はッ!!」 

得体の知れない相手から指摘され、慌ててステアリングを掴みに行く。 

後ろにいる般若に目をやる。 

背格好は自分より小さく、声から判断して少年。

その上、こんな危機的状況なのに、冷静でいられるこの少年は一体…。 

すると、少年は何かを見つけたのか、ある方向へと指を指し示した。

「…助かりたかったら、あの“太陽”を目指せ」 

「何言って━━ッ!?」

その時、自分の目を疑った。

その方向の先には、輝きが小さくも、もう一つの太陽・・・・・・・が存在していたのだ 。

「なん、で…!?」

目を丸くしているうちに、後方からの追撃によって、波はさらに荒れる。

そんな中、平然と過ごしている少年の目は、飛空艇から離さない。

飛空艇の翼が凍結し始め、急速に侵食していった。

追ってくる飛空艇は、次々と大気中の水分によって、氷漬けにされていく。

「安らかに眠れ」

やがて、エンジンも艦内の魔導兵士達の心臓も停止し、いくつもの氷塊が海へと沈んでいった。

あの数の飛空艇を一瞬で…。

空高く立つ水柱 を背に、少年はハルカと対面する。 

「ホント、お前は悪運に強いな」 

「へッ?」

「見てみろよ」 

顎で指し示されたため、前を向き直すと、もう一つの太陽が、みるみる光量を増していった。 

「━━“幻日”ってのは、空気中の氷晶に太陽光が屈折して現れる自然現象」

少年が説明しているうちに、ボートは幻日へと吸い寄せられていく。 

舵が、ビクとも━━ッ!? 

「 知ってるか? 金と火之大陸を挟むこの海域は、昔から船や飛行艇の事故が多いって話を…」

ハルカは頭が混乱し、話を聞いている余裕がないのか、少年が仮面を外して素顔をあらわにした。

「実際、この海域は高濃度魔力領域のため、破壊的な嵐が起きやすい理由なんだが━━」 

肌が小麦色、重で大きな目だが、どこか気力がない。
鼻筋が通っており、端正な顔つきをしている。

「レンズを合わせるように、幻日が向こう側へと繋ぐ門となるんだ」

そして、風圧によって前髪で隠れていた紋様が、ハルカの目に入り、驚愕する。

「お前ッ!!」 

ハルカが最後まで言う前に、幻日が海面と伸びる一本の柱へと変わり、あまりの眩しさに前を向くことができず、咄嗟に身構えてしまう。

やがて、二人は魔力に満ちた光の中へと飲み込まれ、消えてしまった。

海も静寂を取り戻し、水面には何も残らなかった。

幻日、それは吉兆の前触れとも言われている。

しかし、ハルカは絶望する。

なぜなら、これから始まる旅は、今までにない苦行であり、我が身を滅することになるのだから…。





━━第十一章 完━━
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