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第三部 ━━第八章━━
━━ 三節 ━━
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星は雲に隠れてしまい、天候が怪しくなる。
馬を走らせてどれくらい経ったのだろう。
月光を頼りに森の中を進んでいたのだが、さすがに足元が見えなくなると、不安になってくる。
私は、意識を集中させ、植物や生き物から発する魔力を暗視しながら障害物を避けていく。
やがて、大粒の雨が降りだし、地面がぬかるんで、蹄の泥がはねる。
手綱を使い、馬の目となって上手く誘導しているかに思えたそのとき━━。
ゴギャッ。
何かに激突してしまった。
慌てて馬から飛び降り、魔力を手中に集めて発光させた。
手で擦り、外傷を探すが見当たらなかったため、ひとまず安心する。
しかし、何にぶつかったのだろう?
かなり強い衝撃だったのだが…。
辺りを見渡していると、物陰で何かが動いた。
近寄ると、白い生足が目に入り、言葉を失う。
そんな、バカな…。
それは、薄汚れた着衣を身にまとった女性だった。
長い髪は乱れ、表情は分からないが、右腕は折れて骨が突出しており、膝から下もあり得ない方向に曲がっている。
地面に倒れている複雑骨折の重傷者を前に、私は動揺してしまう。
何故気付かなかった!?
ちゃんと魔力を視認していたのに…。
そう、生物には皆魔力があるため、たとえ視界が悪くても感知出来ないわけが━━。
そのとき、ハッとした。
…、魔力!?
再度、女性に目をやる。
やはり、おかしい。
通常、生き物が亡くなる瞬間は、体内の魔力がほとんど放出され、残った僅かな魔力は、灰色の光を発し続けるもの。
だが、彼女の魔力は、既に黒い。
この現象は、以前にも…。
見覚えのある光景に、胸が騒ぐ。
この現象は、死後、時間が相当経過していないと発生しないのだ。
つまり━━。
女性は、左腕を支えに、今にも倒れそうな体勢で、ぎこちなく立ち上がる。
露出する肌は青白く、服は泥まみれでアザや傷だらけなのに血を流していない。
髪の隙間から、だらりと垂れ下がる頬の皮膚が目に入る。
何よりも、死臭が鼻に刺さった。
これは、腐人だ。
外れた顎をカクカク動かし、ゆっくりと足を引きずりながら、こちらへ向かってくる。
私は、すかさず魔力弾を放ち、吹き飛ばすが、不自由な足で立てなくなったのか、地面を這いつくばる。
厄介な相手に出くわしたものだ。
━━死人が甦る事件は、昔からあった。
仮死状態の者が目を覚ましたり、死人に成りすましていた者など、科学的根拠のある事例ばかりだった。
しかし、腐人の場合は、何の前触れもなくこの世に現れた。
50年程前、突如、戦地や墓地で死んだ者が生き返り、人を襲う出来事が起こったのだ。
特に、この金之大陸は、魔女狩りで処刑されて亡くなった者が多く、宗教信者達が、神の怒りに触れた、人類の終わりは近いと、大騒ぎになったこともあった。
当時、私も興味があって腐人を捕縛し、調べたことがあったが、甦る原因までは、ハッキリと解明できなかった。
ただ、分かったことは、腐人は、黒い魔力によって動くということ。
そして、動く生き物の魔力に寄ってくるということだ。
世間は、死者が復活するこの現象を“輪廻現象”と呼んだ━━。
そのとき、森の奥から物音が聞こえてきた。
暗くて何も見えないが、徐々に音が近付いてくる。
しかも、一ヶ所どころじゃない。
私は、急いで魔力を吸収し、空中に5発放った。
辺りを照らし、視界が良くなると、闇に隠れていた者達が姿を現した。
冗談、だろ。
死者の群れが、私を囲んでいた。
よく見ると、腐人の大半が女性。
おそらく、魔女狩りにあった者達の死体が近くに遺棄されていたのだろう。
身体中が傷だらけで、生々しいものばかり。
当時の拷問が、どれほど残酷だったのか、目で感じ取れる。
私は、魔力を地に巡らせ、雑草や木の魔力に干渉する。
さらに、意識を集中し、枝や植物の成長を早め、腕や足など腐人達の動きを封じ込める。
一体一体に魔力を集中させ、爆発させるが、脳みそが飛び散ろうと、胴体が無くなろうと、止まることを知らない。
両腕を広げ、降り続ける水滴を手中に溜める。
水玉を幾つも分裂させ、丸氷を錬成し、腐人に目掛けて一斉に撃ち放つ。
腕や頭を撃ち抜かれ、肉片が吹き飛ぶが、亡者の行進は止まらない。
何故、これほどまでの数に気付かなかった!?
疑問を感じているうちに、這いつくばっていた腐人に足首を掴まれた。
振り払うため蹴り上げると、腕が引きちぎれただけで、何の解決にもならなかった。
それなら━━ッ。
腐人に手をかざし、黒い魔力を全て搾り取ってみせた。
すると、腐人は力尽きたのか、動かなくなり、手中の魔力をそのまま近寄ってくる群れに撃ち放つ。
直撃して後退したものの、歩み続ける現状に舌打ちし、足首を掴んだままの腕を引き剥がす。
次から次へと…、今日は厄日だッ。
嫌気をさしながら馬に乗り、正面に魔力を集中させ、障壁をつくっては突進する。
こうなったら、強行手段である。
腐人を何体も撥ね飛ばし、後ろを返り見ることなく前だけを向く。
…、なんとか振り切ることができた。
深く安堵し、胸を撫で下ろす。
植物の発する魔力を頼りに、暗い道なき道を駆ける。
ふと思ったのだが、腐人の存在に気付けなかったのは、黒い魔力が暗闇と同化していたためだったのではないか!?
生き物は皆、色鮮やかな魔力を発するため、視界が悪くても視認することができる。
だが、黒色は感じ取ることは出来ても、暗闇での判断は難しい、ということか。
100年生きていても、まだまだ“未熟”、か…。
魔力の追究に、終わりは見えない。
だからこそ、心が奮い立つというもの。
こんな状況だというのに、私は、つい鼻で笑ってしまった。
森の中を疾走していくうちに、開けた場所に出た。
目の前には、荒れ狂う激しい波しぶき、そして、横殴りの暴風雨が私を襲った。
断崖絶壁の崖の上で、私は、すぐさま手綱を引き、馬の足を止める。
今まで障害物があったため、強風に煽られずに済んだのだろう。
そして、いきなりの突風に、馬は体勢を崩してしまう。
やがて、ぬかるんだ地面が崩れ、馬と共に崖から滑落してしまった。
海水は冷たく、波も高い上に、身体が重くて浮くことしか考えられない。
必死に岸を目指して泳ぐが、流されて逆に遠ざかっていく。
まずいッ、このままでは━━。
焦って冷静さを失った私に、背後からさらに恐ろしい恐怖が襲いかかってきた。
巨大な波が無防備の私を飲み込み、その拍子に肺に溜め込んでいた空気を吐き出してしまう。
動けば動くほど苦しくなり、徐々に身体に力が入らなくなる。
流されているのか、沈んでいるのかもわからなくなってきた。
意識が遠退いていき、私は、海の気紛れに身を任せることにした。
━━雲が去り、水平線から朝陽が顔を出す。
冷めきった身体は、浜辺に打ち上げられ、動く様子がない。
…珍しいな、客人だ。
通りがかった影が、近寄ってはそれをしばらく眺める。
人だと分かると仰向けにし、ゆっくり顔を近付け、柔らかい唇を合わせる。
すると、魔力が口を通して流れ込み、中枢にある魔力に反応した。
次第に血が通ったかのように全身に広がり、身体に生気が戻ってきた。
身体の底から温まり、意識が戻った彼は、喉の奥から塩気でむせてしまう。
咳き込む彼に、ついクスクスと笑ってしまい、目を回しつつも傍に座っている“私”に焦点を合わせる。
黒く短い髪に褐色の肌、そして、澄んだ青い眼。
虚ろの瞳には、“私”の姿が映っていた。
馬を走らせてどれくらい経ったのだろう。
月光を頼りに森の中を進んでいたのだが、さすがに足元が見えなくなると、不安になってくる。
私は、意識を集中させ、植物や生き物から発する魔力を暗視しながら障害物を避けていく。
やがて、大粒の雨が降りだし、地面がぬかるんで、蹄の泥がはねる。
手綱を使い、馬の目となって上手く誘導しているかに思えたそのとき━━。
ゴギャッ。
何かに激突してしまった。
慌てて馬から飛び降り、魔力を手中に集めて発光させた。
手で擦り、外傷を探すが見当たらなかったため、ひとまず安心する。
しかし、何にぶつかったのだろう?
かなり強い衝撃だったのだが…。
辺りを見渡していると、物陰で何かが動いた。
近寄ると、白い生足が目に入り、言葉を失う。
そんな、バカな…。
それは、薄汚れた着衣を身にまとった女性だった。
長い髪は乱れ、表情は分からないが、右腕は折れて骨が突出しており、膝から下もあり得ない方向に曲がっている。
地面に倒れている複雑骨折の重傷者を前に、私は動揺してしまう。
何故気付かなかった!?
ちゃんと魔力を視認していたのに…。
そう、生物には皆魔力があるため、たとえ視界が悪くても感知出来ないわけが━━。
そのとき、ハッとした。
…、魔力!?
再度、女性に目をやる。
やはり、おかしい。
通常、生き物が亡くなる瞬間は、体内の魔力がほとんど放出され、残った僅かな魔力は、灰色の光を発し続けるもの。
だが、彼女の魔力は、既に黒い。
この現象は、以前にも…。
見覚えのある光景に、胸が騒ぐ。
この現象は、死後、時間が相当経過していないと発生しないのだ。
つまり━━。
女性は、左腕を支えに、今にも倒れそうな体勢で、ぎこちなく立ち上がる。
露出する肌は青白く、服は泥まみれでアザや傷だらけなのに血を流していない。
髪の隙間から、だらりと垂れ下がる頬の皮膚が目に入る。
何よりも、死臭が鼻に刺さった。
これは、腐人だ。
外れた顎をカクカク動かし、ゆっくりと足を引きずりながら、こちらへ向かってくる。
私は、すかさず魔力弾を放ち、吹き飛ばすが、不自由な足で立てなくなったのか、地面を這いつくばる。
厄介な相手に出くわしたものだ。
━━死人が甦る事件は、昔からあった。
仮死状態の者が目を覚ましたり、死人に成りすましていた者など、科学的根拠のある事例ばかりだった。
しかし、腐人の場合は、何の前触れもなくこの世に現れた。
50年程前、突如、戦地や墓地で死んだ者が生き返り、人を襲う出来事が起こったのだ。
特に、この金之大陸は、魔女狩りで処刑されて亡くなった者が多く、宗教信者達が、神の怒りに触れた、人類の終わりは近いと、大騒ぎになったこともあった。
当時、私も興味があって腐人を捕縛し、調べたことがあったが、甦る原因までは、ハッキリと解明できなかった。
ただ、分かったことは、腐人は、黒い魔力によって動くということ。
そして、動く生き物の魔力に寄ってくるということだ。
世間は、死者が復活するこの現象を“輪廻現象”と呼んだ━━。
そのとき、森の奥から物音が聞こえてきた。
暗くて何も見えないが、徐々に音が近付いてくる。
しかも、一ヶ所どころじゃない。
私は、急いで魔力を吸収し、空中に5発放った。
辺りを照らし、視界が良くなると、闇に隠れていた者達が姿を現した。
冗談、だろ。
死者の群れが、私を囲んでいた。
よく見ると、腐人の大半が女性。
おそらく、魔女狩りにあった者達の死体が近くに遺棄されていたのだろう。
身体中が傷だらけで、生々しいものばかり。
当時の拷問が、どれほど残酷だったのか、目で感じ取れる。
私は、魔力を地に巡らせ、雑草や木の魔力に干渉する。
さらに、意識を集中し、枝や植物の成長を早め、腕や足など腐人達の動きを封じ込める。
一体一体に魔力を集中させ、爆発させるが、脳みそが飛び散ろうと、胴体が無くなろうと、止まることを知らない。
両腕を広げ、降り続ける水滴を手中に溜める。
水玉を幾つも分裂させ、丸氷を錬成し、腐人に目掛けて一斉に撃ち放つ。
腕や頭を撃ち抜かれ、肉片が吹き飛ぶが、亡者の行進は止まらない。
何故、これほどまでの数に気付かなかった!?
疑問を感じているうちに、這いつくばっていた腐人に足首を掴まれた。
振り払うため蹴り上げると、腕が引きちぎれただけで、何の解決にもならなかった。
それなら━━ッ。
腐人に手をかざし、黒い魔力を全て搾り取ってみせた。
すると、腐人は力尽きたのか、動かなくなり、手中の魔力をそのまま近寄ってくる群れに撃ち放つ。
直撃して後退したものの、歩み続ける現状に舌打ちし、足首を掴んだままの腕を引き剥がす。
次から次へと…、今日は厄日だッ。
嫌気をさしながら馬に乗り、正面に魔力を集中させ、障壁をつくっては突進する。
こうなったら、強行手段である。
腐人を何体も撥ね飛ばし、後ろを返り見ることなく前だけを向く。
…、なんとか振り切ることができた。
深く安堵し、胸を撫で下ろす。
植物の発する魔力を頼りに、暗い道なき道を駆ける。
ふと思ったのだが、腐人の存在に気付けなかったのは、黒い魔力が暗闇と同化していたためだったのではないか!?
生き物は皆、色鮮やかな魔力を発するため、視界が悪くても視認することができる。
だが、黒色は感じ取ることは出来ても、暗闇での判断は難しい、ということか。
100年生きていても、まだまだ“未熟”、か…。
魔力の追究に、終わりは見えない。
だからこそ、心が奮い立つというもの。
こんな状況だというのに、私は、つい鼻で笑ってしまった。
森の中を疾走していくうちに、開けた場所に出た。
目の前には、荒れ狂う激しい波しぶき、そして、横殴りの暴風雨が私を襲った。
断崖絶壁の崖の上で、私は、すぐさま手綱を引き、馬の足を止める。
今まで障害物があったため、強風に煽られずに済んだのだろう。
そして、いきなりの突風に、馬は体勢を崩してしまう。
やがて、ぬかるんだ地面が崩れ、馬と共に崖から滑落してしまった。
海水は冷たく、波も高い上に、身体が重くて浮くことしか考えられない。
必死に岸を目指して泳ぐが、流されて逆に遠ざかっていく。
まずいッ、このままでは━━。
焦って冷静さを失った私に、背後からさらに恐ろしい恐怖が襲いかかってきた。
巨大な波が無防備の私を飲み込み、その拍子に肺に溜め込んでいた空気を吐き出してしまう。
動けば動くほど苦しくなり、徐々に身体に力が入らなくなる。
流されているのか、沈んでいるのかもわからなくなってきた。
意識が遠退いていき、私は、海の気紛れに身を任せることにした。
━━雲が去り、水平線から朝陽が顔を出す。
冷めきった身体は、浜辺に打ち上げられ、動く様子がない。
…珍しいな、客人だ。
通りがかった影が、近寄ってはそれをしばらく眺める。
人だと分かると仰向けにし、ゆっくり顔を近付け、柔らかい唇を合わせる。
すると、魔力が口を通して流れ込み、中枢にある魔力に反応した。
次第に血が通ったかのように全身に広がり、身体に生気が戻ってきた。
身体の底から温まり、意識が戻った彼は、喉の奥から塩気でむせてしまう。
咳き込む彼に、ついクスクスと笑ってしまい、目を回しつつも傍に座っている“私”に焦点を合わせる。
黒く短い髪に褐色の肌、そして、澄んだ青い眼。
虚ろの瞳には、“私”の姿が映っていた。
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