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━━第六章━━
━━ 三節 ━━
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ハルカ達は、愕然とした。
一面の記事を見つめ、衝撃の事実を突き付けられる。
「…まあ、遠路遥々来ていただいて悪いが、そういうことだ」
重たい空気をかき消すかのように、ハガが口を開く。
「僕達もついさっきそのことを知らされたんだけど、信じられないよね。
僕達もそうだよ。
居ない間にこんなことになっていただなんて…」
クレフも上手く言葉に出来ず、3人にどうフォローしたら良いか分からずにいる。
いくら英雄といえど、予測不可能な病に襲われたら敵わない。
魔女を倒すための騎師団が、一人失ってしまった。
どうする?
自分達は、どうしたら良い!?
これからの方針が頭に浮かばず、ハルカとタオは顔見合わせ、あのお気楽なヒヨリでさえ、言葉を失う有り様である。
「取り敢えず、今日は帰って━━」
そのとき、外からサイレンが鳴り響いた。
「…火事?」
「いや、これは━━」
突然の警報に、戸惑うハルカ達。
ハガは、急いで棚の上にあるラジオに手を伸ばし、電源をつける。
『緊急速報です。
只今、デメテル城に収監されていた囚人達が脱獄したという情報が入りました』
「「「「「はァッ!?」」」」」
その場にいた全員が、耳を疑った。
「オイッ!! ちょっと待てッ!?」
「一体どういう━━!?」
「静かにしろ、お前等ッ」
動揺するクレフとキサラギに注意するハガ。
『なお、リサー王および使用人達も人質に捕られ、城に立て籠っている模様━━』
━━デメテル城。
百人近くの囚人達が闇から解放され、発狂するほど歓喜した。
警備する兵士から武器を奪い、殺してまわっている。
日頃の訓練で、このような状況は想定されておらず、躊躇いと戸惑いが兵士達を混乱させる。
そんな中、玉座に脚を立てながら座る中年が、床に手をつけるリサー王に剣を向ける。
「あ"ァ~、最ッ高の気分だ」
鼻から大きく息を吸い、新鮮な空気を肺に入れる。
濃い髭を生やし、やつれているが、忘れ去ることの出来ない、人生の汚点がそこにあった。
「チーグル。
貴様ッ、どうやって━━」
「なんだよ、オヤジ。
親子の感動の再会だってのに…。
ここは普通泣くとこだろが」
汚い肌で満面の笑みを見せる。
すると、2人の武将が兵士を何人も引き連れて入ってきた。
「お~っと、これはこれは。
元王子様じゃねェッスか」
「…相変わらず生意気な口だな、オルロフ」
短髪で額と目にシワがあり、両耳にはピアス。
マント付きの鎧を身にまとい、脚には影踏男を装備。
タバコを口に咥え、緊張感のない態度のオルロフにイラつくチーグル。
「そういえば、聞いたぜオルロフ。
今じゃ大将なんだってな」
「おかげさまで、こうして堂々とタバコが吸えるようになりましたわ」
白い煙を鼻から出して見せる。
「何呑気にこんな状況で吸ってんですかッ!!」
身長が低く、赤髪のマッシュで目が隠れ、長いローブを着た若者に指摘を受ける。
「こんな状況だからこそだよ、アレーニ。
こういう時に吸うタバコって、なかなかオツなもんよ?」
「非常識ですッ!!」
チーグルは、一瞬、アレーニの左手首にはめている青白い腕輪が目に入った。
「おい小僧、お前の着けているそれは、まさか━━」
「“荳樹男”。
ご存じのとおり、ジャックシリーズの一つです」
それを聞いて、吹き出してしまった。
「ブッハハハハハッ!! ってことは何か!?
こんな若僧にジャックを持たせる程、この国は落ちぶれちまったのかよ!?」
ムキになったアレーニに、ボソッと止めるようささやく。
「無闇に動くな。
アイツの持っている得物が普通じゃないのは知ってるだろ」
リサー王に当てている剣は、切っ先が丸く、両刃がない。
「“執行男”。
振動を利用し、あらゆるものを斬る刑剣。
どうやって手に入れたか知らねェが、発動した瞬間、王の首が飛ぶぞ」
アレーニが強く舌打ちをし、チーグルは、その様子を見て満足している。
「そうそう、オヤジ。
オレの提燈男は何処にある?」
チーグルの狙いに、周りがざわめいた。
「アンタ、まだアレに執着してんのか?」
「黙れ、オルロフ。
英雄の剣だか何だか知らないが、あのジェンフォンが作った兵器、発動出来ないわけがないんだ」
オルロフは、呆れた。
考えていることが幼稚で、昔から何も変わってないことに。
「なァ頼むよ、オヤジ。
可愛い息子のためだと思ってさ」
「…囚人の息子など持った覚えはないッ。
気安く呼ぶでないわ!!」
リサー王の態度に頭にきたチーグルは、立ち上がっては、何度も蹴りを入れた。
「ンだとッ!! このッ!! クソジジィ!!」
我が王のあられもない姿に、見ていられなくなったアレーニは飛び出そうとするが、瞬時にオルロフの腕で遮られてしまう。
「━━沈めたよ」
オルロフが落ち着いて代弁すると、王に対する暴力を止め、ゆっくりこっちを向いた。
「何だと!?」
「沈めたッつッてんだよ。
先日、英雄が亡くなったんでな。
今後、アレを使いこなす者が出てくることはあるめェと思って、海で散骨と一緒に沈めちまったのさ」
それを聞いたチーグルは、オルロフに向かって怒鳴る。
「テメェ、都合の良いこと抜かしてんじゃねェぞ!!
英雄だァ!? そんなもん存在するわけが━━」
「世間知らずのお前に教えてやっけど、提燈男を使い、火之大陸を制覇した奴がいたんだよ。
シャンディ・ヤン・イゥマオという男がなッ!!」
“ヤン・イゥマオ” …って、まさか!?
「そう、今は亡き至高の錬金術師、ジェンフォン・ヤン・イゥマオの“孫”だ」
チーグルは、驚きの事実に固まってしまった。
━━ギルド・ガーネット。
「そんな、城を占拠されただなんて…」
ラジオから流れる情報に、言葉を失う一同。
「…そうだ、兵達は何やってんだッ!?」
「王を人質に捕られている時点で、手も足も出せないんだろう。
万事休すってやつだな」
ハガは、冷静を保ちつつ、天井を見上げる。
なんか、大変なことになってきたな…。
ハルカは、デメテルに来て早々、こんな騒動に遭遇してしまうとは思ってもみなかった。
「…助けに行こう」
ヒヨリが呟き、周りは唖然とした。
「何言ってんだアンタ!?」
「そうだよ姐さんッ!!
オレ達には関係な━━」
ヒヨリの真剣な目つきに、ハルカの口は止まってしまった。
「ハルちゃん、アタシ、助けたい。
じゃないと、アタシの心はスッキリしないから。
人を助けるのに理屈なんていらないんだよ」
「姐さんの意見を聞いてるんじゃないんだよッ!!
余計なことに首を突っ込むもんじゃ━━」
「そうだな、やろうか」
突如、タオが割って入ってきた。
「タオさんッ!?」
意外にもタオが乗り気であることに、ハルカは驚いた。
「ハルカ、君の言い分もわかる。
しかし、私もつい最近まで国を守るため尽力を尽くしていた身。
罪人達を見過ごす訳にはいかない」
そう告げた元国王は、不安なハルカの肩を軽く叩く。
「安心しろ。
幸い、世界最強の2人がここにいるじゃないか」
タオは、優しく笑みを交わす。
「胸を張れ、怖がることは何もない」
あれ?
なんか、オレも行く流れになってね!?
タオを説得しようとしたそのとき、キサラギが口を挟んできた。
「オイオイ、勝手に話を進めんな」
「僕等も行くよ」
クレフ達も急についていくと言い出し、さすがのハガも止めに入った。
「ハガ、2人の言う通りだよ。
それに、誰かが代わりに動くのを待っていたら、状況はどんどん悪化していく一方だよ。
僕等がやらなくちゃ」
ごもっともな発言に、キサラギは、つい笑ってしまった。
「ハッ、うちらの大将がああ言ってんだ。
これはもう腹括るしかねェぜ。
ハガさん」
ニヤけるキサラギを睨み付けていると、何やら上の階で物音が聞こえてきた。
「何だ?」
暴れているのか、激しく物が壊れる音が耳に入ってくる。
「アレだよ、お前等が居ない間、バイトで犬の世話をしてたんだよ」
「犬?」
ハガが目を泳がせながら説明する。
「あ、ああ、なかなか世話のかかる大型犬でさ」
しかし、聞こえてくるのは、犬の咆哮ではなく、男性の唸り声。
「ハガ…?」
「ハガさん…?」
目を合わせようとしない相手からの言い訳は、もはや無意味であった。
皆、ドタバタと階段を駆け上ると、整理整頓されていない荷物が床に散乱し、その中心に人が倒れていた。
その者は、体格が大きく、両手両足に丈夫な枷がかけられている。
側頭部と後頭部を刈り上げ、残った髪は乱れている。
シャープな顔つきには、鼻の下と顎に薄い髭が目立つ。
黒い長袖のアンダーシャツに、ベージュのカーゴパンツ。
口のまわりにマスクを着けているせいか、声を上手く発することが出来ない。
「この人って…」
髪の隙間から、怒りに満ちた鋭い眼光。
見るものを怯ませ、特にクレフとキサラギは血の気が引いた。
「シャ…、シャンディ、さん…」
気まずい空気の中、クレフは、ボソッと彼の名を呼んだ。
一面の記事を見つめ、衝撃の事実を突き付けられる。
「…まあ、遠路遥々来ていただいて悪いが、そういうことだ」
重たい空気をかき消すかのように、ハガが口を開く。
「僕達もついさっきそのことを知らされたんだけど、信じられないよね。
僕達もそうだよ。
居ない間にこんなことになっていただなんて…」
クレフも上手く言葉に出来ず、3人にどうフォローしたら良いか分からずにいる。
いくら英雄といえど、予測不可能な病に襲われたら敵わない。
魔女を倒すための騎師団が、一人失ってしまった。
どうする?
自分達は、どうしたら良い!?
これからの方針が頭に浮かばず、ハルカとタオは顔見合わせ、あのお気楽なヒヨリでさえ、言葉を失う有り様である。
「取り敢えず、今日は帰って━━」
そのとき、外からサイレンが鳴り響いた。
「…火事?」
「いや、これは━━」
突然の警報に、戸惑うハルカ達。
ハガは、急いで棚の上にあるラジオに手を伸ばし、電源をつける。
『緊急速報です。
只今、デメテル城に収監されていた囚人達が脱獄したという情報が入りました』
「「「「「はァッ!?」」」」」
その場にいた全員が、耳を疑った。
「オイッ!! ちょっと待てッ!?」
「一体どういう━━!?」
「静かにしろ、お前等ッ」
動揺するクレフとキサラギに注意するハガ。
『なお、リサー王および使用人達も人質に捕られ、城に立て籠っている模様━━』
━━デメテル城。
百人近くの囚人達が闇から解放され、発狂するほど歓喜した。
警備する兵士から武器を奪い、殺してまわっている。
日頃の訓練で、このような状況は想定されておらず、躊躇いと戸惑いが兵士達を混乱させる。
そんな中、玉座に脚を立てながら座る中年が、床に手をつけるリサー王に剣を向ける。
「あ"ァ~、最ッ高の気分だ」
鼻から大きく息を吸い、新鮮な空気を肺に入れる。
濃い髭を生やし、やつれているが、忘れ去ることの出来ない、人生の汚点がそこにあった。
「チーグル。
貴様ッ、どうやって━━」
「なんだよ、オヤジ。
親子の感動の再会だってのに…。
ここは普通泣くとこだろが」
汚い肌で満面の笑みを見せる。
すると、2人の武将が兵士を何人も引き連れて入ってきた。
「お~っと、これはこれは。
元王子様じゃねェッスか」
「…相変わらず生意気な口だな、オルロフ」
短髪で額と目にシワがあり、両耳にはピアス。
マント付きの鎧を身にまとい、脚には影踏男を装備。
タバコを口に咥え、緊張感のない態度のオルロフにイラつくチーグル。
「そういえば、聞いたぜオルロフ。
今じゃ大将なんだってな」
「おかげさまで、こうして堂々とタバコが吸えるようになりましたわ」
白い煙を鼻から出して見せる。
「何呑気にこんな状況で吸ってんですかッ!!」
身長が低く、赤髪のマッシュで目が隠れ、長いローブを着た若者に指摘を受ける。
「こんな状況だからこそだよ、アレーニ。
こういう時に吸うタバコって、なかなかオツなもんよ?」
「非常識ですッ!!」
チーグルは、一瞬、アレーニの左手首にはめている青白い腕輪が目に入った。
「おい小僧、お前の着けているそれは、まさか━━」
「“荳樹男”。
ご存じのとおり、ジャックシリーズの一つです」
それを聞いて、吹き出してしまった。
「ブッハハハハハッ!! ってことは何か!?
こんな若僧にジャックを持たせる程、この国は落ちぶれちまったのかよ!?」
ムキになったアレーニに、ボソッと止めるようささやく。
「無闇に動くな。
アイツの持っている得物が普通じゃないのは知ってるだろ」
リサー王に当てている剣は、切っ先が丸く、両刃がない。
「“執行男”。
振動を利用し、あらゆるものを斬る刑剣。
どうやって手に入れたか知らねェが、発動した瞬間、王の首が飛ぶぞ」
アレーニが強く舌打ちをし、チーグルは、その様子を見て満足している。
「そうそう、オヤジ。
オレの提燈男は何処にある?」
チーグルの狙いに、周りがざわめいた。
「アンタ、まだアレに執着してんのか?」
「黙れ、オルロフ。
英雄の剣だか何だか知らないが、あのジェンフォンが作った兵器、発動出来ないわけがないんだ」
オルロフは、呆れた。
考えていることが幼稚で、昔から何も変わってないことに。
「なァ頼むよ、オヤジ。
可愛い息子のためだと思ってさ」
「…囚人の息子など持った覚えはないッ。
気安く呼ぶでないわ!!」
リサー王の態度に頭にきたチーグルは、立ち上がっては、何度も蹴りを入れた。
「ンだとッ!! このッ!! クソジジィ!!」
我が王のあられもない姿に、見ていられなくなったアレーニは飛び出そうとするが、瞬時にオルロフの腕で遮られてしまう。
「━━沈めたよ」
オルロフが落ち着いて代弁すると、王に対する暴力を止め、ゆっくりこっちを向いた。
「何だと!?」
「沈めたッつッてんだよ。
先日、英雄が亡くなったんでな。
今後、アレを使いこなす者が出てくることはあるめェと思って、海で散骨と一緒に沈めちまったのさ」
それを聞いたチーグルは、オルロフに向かって怒鳴る。
「テメェ、都合の良いこと抜かしてんじゃねェぞ!!
英雄だァ!? そんなもん存在するわけが━━」
「世間知らずのお前に教えてやっけど、提燈男を使い、火之大陸を制覇した奴がいたんだよ。
シャンディ・ヤン・イゥマオという男がなッ!!」
“ヤン・イゥマオ” …って、まさか!?
「そう、今は亡き至高の錬金術師、ジェンフォン・ヤン・イゥマオの“孫”だ」
チーグルは、驚きの事実に固まってしまった。
━━ギルド・ガーネット。
「そんな、城を占拠されただなんて…」
ラジオから流れる情報に、言葉を失う一同。
「…そうだ、兵達は何やってんだッ!?」
「王を人質に捕られている時点で、手も足も出せないんだろう。
万事休すってやつだな」
ハガは、冷静を保ちつつ、天井を見上げる。
なんか、大変なことになってきたな…。
ハルカは、デメテルに来て早々、こんな騒動に遭遇してしまうとは思ってもみなかった。
「…助けに行こう」
ヒヨリが呟き、周りは唖然とした。
「何言ってんだアンタ!?」
「そうだよ姐さんッ!!
オレ達には関係な━━」
ヒヨリの真剣な目つきに、ハルカの口は止まってしまった。
「ハルちゃん、アタシ、助けたい。
じゃないと、アタシの心はスッキリしないから。
人を助けるのに理屈なんていらないんだよ」
「姐さんの意見を聞いてるんじゃないんだよッ!!
余計なことに首を突っ込むもんじゃ━━」
「そうだな、やろうか」
突如、タオが割って入ってきた。
「タオさんッ!?」
意外にもタオが乗り気であることに、ハルカは驚いた。
「ハルカ、君の言い分もわかる。
しかし、私もつい最近まで国を守るため尽力を尽くしていた身。
罪人達を見過ごす訳にはいかない」
そう告げた元国王は、不安なハルカの肩を軽く叩く。
「安心しろ。
幸い、世界最強の2人がここにいるじゃないか」
タオは、優しく笑みを交わす。
「胸を張れ、怖がることは何もない」
あれ?
なんか、オレも行く流れになってね!?
タオを説得しようとしたそのとき、キサラギが口を挟んできた。
「オイオイ、勝手に話を進めんな」
「僕等も行くよ」
クレフ達も急についていくと言い出し、さすがのハガも止めに入った。
「ハガ、2人の言う通りだよ。
それに、誰かが代わりに動くのを待っていたら、状況はどんどん悪化していく一方だよ。
僕等がやらなくちゃ」
ごもっともな発言に、キサラギは、つい笑ってしまった。
「ハッ、うちらの大将がああ言ってんだ。
これはもう腹括るしかねェぜ。
ハガさん」
ニヤけるキサラギを睨み付けていると、何やら上の階で物音が聞こえてきた。
「何だ?」
暴れているのか、激しく物が壊れる音が耳に入ってくる。
「アレだよ、お前等が居ない間、バイトで犬の世話をしてたんだよ」
「犬?」
ハガが目を泳がせながら説明する。
「あ、ああ、なかなか世話のかかる大型犬でさ」
しかし、聞こえてくるのは、犬の咆哮ではなく、男性の唸り声。
「ハガ…?」
「ハガさん…?」
目を合わせようとしない相手からの言い訳は、もはや無意味であった。
皆、ドタバタと階段を駆け上ると、整理整頓されていない荷物が床に散乱し、その中心に人が倒れていた。
その者は、体格が大きく、両手両足に丈夫な枷がかけられている。
側頭部と後頭部を刈り上げ、残った髪は乱れている。
シャープな顔つきには、鼻の下と顎に薄い髭が目立つ。
黒い長袖のアンダーシャツに、ベージュのカーゴパンツ。
口のまわりにマスクを着けているせいか、声を上手く発することが出来ない。
「この人って…」
髪の隙間から、怒りに満ちた鋭い眼光。
見るものを怯ませ、特にクレフとキサラギは血の気が引いた。
「シャ…、シャンディ、さん…」
気まずい空気の中、クレフは、ボソッと彼の名を呼んだ。
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