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王子と私②
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「アーリー、もうすぐ13歳の誕生日だね。何か欲しいものはある?」
「私はクリス様と1日過ごしたいと思います。」
「私と?宝石やドレスはいらないの?」
「いりませんわ。宝石やドレスは他の方からもいただけますが、クリス様との時間はクリス様と出ないと得られません。とても贅沢で我儘なお願いです。」
「アーリー…」
王子が真っ赤になって口元を抑えた。なんだか凄く可愛い。天使みたい。
「あと、1日の過ごし方は私が決めたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ。わかった。必ず時間を空けるよ。楽しみにしていて。」
キッラキラの笑顔で頷いてくれた。
誕生日当日、王子が公爵家へやって来た。
今日は1日公爵家で過ごしていただくことになったのだ。お気に入りの庭にあるガゼボに案内する。流石は公爵家、ガゼボといっても20人は軽く入れる大きさだ。豪奢なソファーやテーブルが備わって居て、美しい庭が一望できる。
「クリス様、こちらへどうぞ。」
「ありがとう。素敵な所だね。」
王子は機嫌が良さそうにニコニコと笑っている。私も微笑んで王子の隣に腰掛けた。
ガゼボのソファーは、ふかふかでかなり気持ち良い。お茶菓子などを勧めながら、思い切って自分のしたかったことを言ってみる。
「クリス様、お願いがあるのですが・・・。」
「なんだい?わたしにできることなら叶えてあげるよ。」
いざ、言おうとすると恥ずかしさが込み上げてもじもじしてしまう。
「アーリー?怒ったりしないから言ってご覧?」
「・・・。膝枕をしたいのですが。」
「膝枕?どのようにするの?」
(王族の方は膝枕をご存じないのかしら?)
「あの・・・こちらのソファーで横たわっていただいて、私の膝を枕に午睡していただきたく・・・。」
「午睡?」
「はい。いつもお忙しくいらっしゃるので、少しでも心穏やかにお過ごしいただければと。」
ソファーに正座を少し崩した女座りですわり、王子の頭を誘導する。僅かに躊躇う様子だったが、促すとゆっくりと横たわってくれる。用意していた毛布を侍女に掛けてもらうと、ガゼボの外まで人払いをする。
ガゼボは、部屋と違い壁がなく視線は遮ることが出来ないが、声を張り上げなければ2人の会話までは聞こえない。
私は王子の眠りを妨げないように、ゆっくりブロンドの髪を撫でながら囁くように子守歌を歌った。
その日は美しい1日だった。私の名前の元になったアーリシア・ローズの薔薇が鮮やかに咲き誇り、様々な花々と共に幸せな空間に甘やかな色を添えていた。時折吹く爽やかな風が優しい香りを運んできた。
その日から、穏やかだった王子の眼差しに熱い情熱を感じるようになっていった。節度を保つ様、繰り返し注意を受けてはいたが、時おり抱きしめられたり、軽くキスされたりしながら「好きだよ。アーリー。」とささやいてくれる。常に人が付き添ってるので、それ以上は何も無かったが「私もです。クリス様」とささやき返す度に(でも、学園に入ったら変わってしまうのでしょう?)と思わずにいられなかった。
学園入学前、ゲームでは起こらなかった事が起こった。王子が卒業まで待たず、17歳で結婚しようと仰ったのだ。何故なら、女生徒は早く結婚することが多く、2年通って試験さえ通れば卒業資格を得られる特別な制度があったからだった。
だが、王族のしきたりから外れるとして陛下に許可を得られず、卒業後に婚礼式を行なうとされその願いは叶えられることは無かった。
「アーリーごめんよ。君を早く僕の妃にしたかったのに。」
「いいえ。仕方がありませんもの。お気になさらないでくださいませ(今決めてもどうせヒロインに邪魔されるし)」
「お詫びに、17歳の誕生日には素敵なプレゼントを贈るよ。楽しみにしててね。」
天使のような笑顔で、私を抱きしめていた王子。結局、その約束は果たされることは無かった。
「私はクリス様と1日過ごしたいと思います。」
「私と?宝石やドレスはいらないの?」
「いりませんわ。宝石やドレスは他の方からもいただけますが、クリス様との時間はクリス様と出ないと得られません。とても贅沢で我儘なお願いです。」
「アーリー…」
王子が真っ赤になって口元を抑えた。なんだか凄く可愛い。天使みたい。
「あと、1日の過ごし方は私が決めたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ。わかった。必ず時間を空けるよ。楽しみにしていて。」
キッラキラの笑顔で頷いてくれた。
誕生日当日、王子が公爵家へやって来た。
今日は1日公爵家で過ごしていただくことになったのだ。お気に入りの庭にあるガゼボに案内する。流石は公爵家、ガゼボといっても20人は軽く入れる大きさだ。豪奢なソファーやテーブルが備わって居て、美しい庭が一望できる。
「クリス様、こちらへどうぞ。」
「ありがとう。素敵な所だね。」
王子は機嫌が良さそうにニコニコと笑っている。私も微笑んで王子の隣に腰掛けた。
ガゼボのソファーは、ふかふかでかなり気持ち良い。お茶菓子などを勧めながら、思い切って自分のしたかったことを言ってみる。
「クリス様、お願いがあるのですが・・・。」
「なんだい?わたしにできることなら叶えてあげるよ。」
いざ、言おうとすると恥ずかしさが込み上げてもじもじしてしまう。
「アーリー?怒ったりしないから言ってご覧?」
「・・・。膝枕をしたいのですが。」
「膝枕?どのようにするの?」
(王族の方は膝枕をご存じないのかしら?)
「あの・・・こちらのソファーで横たわっていただいて、私の膝を枕に午睡していただきたく・・・。」
「午睡?」
「はい。いつもお忙しくいらっしゃるので、少しでも心穏やかにお過ごしいただければと。」
ソファーに正座を少し崩した女座りですわり、王子の頭を誘導する。僅かに躊躇う様子だったが、促すとゆっくりと横たわってくれる。用意していた毛布を侍女に掛けてもらうと、ガゼボの外まで人払いをする。
ガゼボは、部屋と違い壁がなく視線は遮ることが出来ないが、声を張り上げなければ2人の会話までは聞こえない。
私は王子の眠りを妨げないように、ゆっくりブロンドの髪を撫でながら囁くように子守歌を歌った。
その日は美しい1日だった。私の名前の元になったアーリシア・ローズの薔薇が鮮やかに咲き誇り、様々な花々と共に幸せな空間に甘やかな色を添えていた。時折吹く爽やかな風が優しい香りを運んできた。
その日から、穏やかだった王子の眼差しに熱い情熱を感じるようになっていった。節度を保つ様、繰り返し注意を受けてはいたが、時おり抱きしめられたり、軽くキスされたりしながら「好きだよ。アーリー。」とささやいてくれる。常に人が付き添ってるので、それ以上は何も無かったが「私もです。クリス様」とささやき返す度に(でも、学園に入ったら変わってしまうのでしょう?)と思わずにいられなかった。
学園入学前、ゲームでは起こらなかった事が起こった。王子が卒業まで待たず、17歳で結婚しようと仰ったのだ。何故なら、女生徒は早く結婚することが多く、2年通って試験さえ通れば卒業資格を得られる特別な制度があったからだった。
だが、王族のしきたりから外れるとして陛下に許可を得られず、卒業後に婚礼式を行なうとされその願いは叶えられることは無かった。
「アーリーごめんよ。君を早く僕の妃にしたかったのに。」
「いいえ。仕方がありませんもの。お気になさらないでくださいませ(今決めてもどうせヒロインに邪魔されるし)」
「お詫びに、17歳の誕生日には素敵なプレゼントを贈るよ。楽しみにしててね。」
天使のような笑顔で、私を抱きしめていた王子。結局、その約束は果たされることは無かった。
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