5 / 44
断罪ってどっちが断罪されたのですか?
しおりを挟む
明日は、人生最大の茶番劇だわ。既に王子からはエスコート出来ないと連絡が来ていた。お父様が凄い表情をしてて怖かった。
(確か、断罪される時に追放処分か修道院か言い渡されて、そのまま連れ去られるのよね。幾つか宝石を隠して持って行こう。)
明日着る予定のドレスに宝石袋ごと縫い付ける。縫い付けながら、この3年間を思った。
(3年間って長かった。乙女ゲームと分かっていても辛かった。)
ヒロインは何故か私を目の敵にして、あることないことをヒステリックに喚き散らしたりした。ごく稀に出会ってしまうと、ことある事に嫌がらせを仕掛けてきて、自分が被害者だと嘘をついて騒いだ。王子を含め攻略対象者だけはヒロインの言うことを鵜呑みにしていた。攻略対象者以外の人達は、私が何もしていない事を信じてくれたのが救いだった。そもそも、避けまくり、できる限り関わりを絶っていたのにどうやって虐めたりすることができると言うのだろう。
時には、第二王子であるアレン様も説得しようとしてくれたが無駄だった。
(アレン様は年下だけれど、男らしくて優しくて気遣いもある方なのよね。私、アレン様の婚約者だったら良かったのに。)
そんなこと絶対に有り得ないけど。宝石袋を縫い付け終わると追放処分後の生活ついて考え始め、眠れぬ夜を過ごしたのだった。
「アーリス・イソラ、君との婚約を解消する‼」
(まさに、テンプレですか?!)と口から出そうになって慌て唇を噛む。
卒業式の舞踏会がスチル通りに始まり、思わず笑いそうになったので、扇で顔を隠す。見る人によっては、笑いそうになってフルフル震えた様が泣いているようにも見えたかもしれない。しらっーとした空気の中、イッちゃった眼をした王子の断罪は続く。
「君はナターシャ・ブランタト男爵令嬢を身分が低いと貶め、時には紅茶をわざと掛けたり突き飛ばしたりして虐めたな!そんな根性の悪い女は国母たる王妃に相応しくない。よって婚約を破棄する。」
王子の腕にまとわりつくように身を寄せていたナターシャがニヤリと勝ち誇ったように笑う。王子に未練がない私はナターシャは全スルーして王子の次の言葉を待っていた。
(さぁさぁ!追放処分、修道院どっちなの?早く言ってさぁさぁさぁ!)
なんせ私の今後の人生が決まるのだ。昨夜から一睡もしていない血走った眼と、真剣な様子は周りも異常を感じたようだった。
しかしその時、ゲームではありえなかった出来事が始まった。
「ちょっとよろしいかしら?」
涼やかな声が響いた。隣国から留学に来ている第1王女 オリヴィエ・メシアン様だ。陛下の妹を母に持ち、王子の従姉妹にあたる。隣国でも、トバルズ国でも王位継承権を持つ、王子も無碍にできない方だ。
「なんですか?オリヴィエ王女」不機嫌そうに王子が答える。
「アーリス様がそこの下賎な女に手を上げたなど、本気で仰っているの?私はその女の方が、アーリス様を突き飛ばしたり紅茶を掛けた様を見ましてよ!」
シーンと静まり返った会場から、遠慮がちに私も見たわ!私も!虐めてたのはナターシャの方だ。と声が上がる。
「貴様、下賎な女だと!」狂信者の騎士団長の息子が顔色を変えて叫んだが、オリヴィエ様の騎士が聞き漏らすはずがなく、直ぐに膝をつかせられ取り押さえられた。
「アーリス様はいつも事を荒立てぬように必死に耐えてきていらした。淑女の鏡のように振舞ってこられたのに。婚約破棄とは!その下賎な女が沢山の殿方に色目を使い、どれだけのもの達を虐げてきたか。その者を王家に入れたら血筋も分からぬ下賎の輩の子を産むことになりましょう。」
王子が顔色を変え、剣の柄に手を伸ばした。
「ナターシャへの侮辱、許せぬ。謝罪しろ!」
「これでもまだ、目が覚めぬか!ひっ捕らえよ!」
オリヴィエ様の言葉を受けて騎士たちが王子達を捕まえて連れ去っていく。私は呆然とした。
「オリヴィエ様・・・一体・・・。」
「案じなくて大丈夫よ。陛下の許可は得ているの。実は少し前にこの騒動が起きることを知っていたのよ。色々あって取り押さえられるのがこの場しかなくて・・・嫌な思いをさせてしまったわね」
「いいえっ庇っていただき嬉しかったです‼ありがとうございました。」
私がオリヴィエ様に頭を下げると、会場から、アーリス様負けないでください。アーリス様頑張って!と励ましの言葉が掛けられた。今度は本当に涙が溢れてきた。その時、卒業式の舞踏会にはいないはずのお父様が駆け寄って来た。
「お父様?何故ここに居らっしゃるのですか?」
「オリヴィエ様にご連絡をいただいていたからだ。オリヴィエ様、ご協力いただきありがとうございました。これで取調べが出来ます。」
「いいのよ。私も原因を知りたかったから、同席させてもらうわ。」お父様がチラリと私をみると言った。
「アーリス、家に帰り私が帰るまで一歩も外にでてはダメだよ。」
「えッ?」
「謹慎していなさい。これは命令だ。」
「わかりました。」
その後、進展がないまま5日がすぎたのであった。
(確か、断罪される時に追放処分か修道院か言い渡されて、そのまま連れ去られるのよね。幾つか宝石を隠して持って行こう。)
明日着る予定のドレスに宝石袋ごと縫い付ける。縫い付けながら、この3年間を思った。
(3年間って長かった。乙女ゲームと分かっていても辛かった。)
ヒロインは何故か私を目の敵にして、あることないことをヒステリックに喚き散らしたりした。ごく稀に出会ってしまうと、ことある事に嫌がらせを仕掛けてきて、自分が被害者だと嘘をついて騒いだ。王子を含め攻略対象者だけはヒロインの言うことを鵜呑みにしていた。攻略対象者以外の人達は、私が何もしていない事を信じてくれたのが救いだった。そもそも、避けまくり、できる限り関わりを絶っていたのにどうやって虐めたりすることができると言うのだろう。
時には、第二王子であるアレン様も説得しようとしてくれたが無駄だった。
(アレン様は年下だけれど、男らしくて優しくて気遣いもある方なのよね。私、アレン様の婚約者だったら良かったのに。)
そんなこと絶対に有り得ないけど。宝石袋を縫い付け終わると追放処分後の生活ついて考え始め、眠れぬ夜を過ごしたのだった。
「アーリス・イソラ、君との婚約を解消する‼」
(まさに、テンプレですか?!)と口から出そうになって慌て唇を噛む。
卒業式の舞踏会がスチル通りに始まり、思わず笑いそうになったので、扇で顔を隠す。見る人によっては、笑いそうになってフルフル震えた様が泣いているようにも見えたかもしれない。しらっーとした空気の中、イッちゃった眼をした王子の断罪は続く。
「君はナターシャ・ブランタト男爵令嬢を身分が低いと貶め、時には紅茶をわざと掛けたり突き飛ばしたりして虐めたな!そんな根性の悪い女は国母たる王妃に相応しくない。よって婚約を破棄する。」
王子の腕にまとわりつくように身を寄せていたナターシャがニヤリと勝ち誇ったように笑う。王子に未練がない私はナターシャは全スルーして王子の次の言葉を待っていた。
(さぁさぁ!追放処分、修道院どっちなの?早く言ってさぁさぁさぁ!)
なんせ私の今後の人生が決まるのだ。昨夜から一睡もしていない血走った眼と、真剣な様子は周りも異常を感じたようだった。
しかしその時、ゲームではありえなかった出来事が始まった。
「ちょっとよろしいかしら?」
涼やかな声が響いた。隣国から留学に来ている第1王女 オリヴィエ・メシアン様だ。陛下の妹を母に持ち、王子の従姉妹にあたる。隣国でも、トバルズ国でも王位継承権を持つ、王子も無碍にできない方だ。
「なんですか?オリヴィエ王女」不機嫌そうに王子が答える。
「アーリス様がそこの下賎な女に手を上げたなど、本気で仰っているの?私はその女の方が、アーリス様を突き飛ばしたり紅茶を掛けた様を見ましてよ!」
シーンと静まり返った会場から、遠慮がちに私も見たわ!私も!虐めてたのはナターシャの方だ。と声が上がる。
「貴様、下賎な女だと!」狂信者の騎士団長の息子が顔色を変えて叫んだが、オリヴィエ様の騎士が聞き漏らすはずがなく、直ぐに膝をつかせられ取り押さえられた。
「アーリス様はいつも事を荒立てぬように必死に耐えてきていらした。淑女の鏡のように振舞ってこられたのに。婚約破棄とは!その下賎な女が沢山の殿方に色目を使い、どれだけのもの達を虐げてきたか。その者を王家に入れたら血筋も分からぬ下賎の輩の子を産むことになりましょう。」
王子が顔色を変え、剣の柄に手を伸ばした。
「ナターシャへの侮辱、許せぬ。謝罪しろ!」
「これでもまだ、目が覚めぬか!ひっ捕らえよ!」
オリヴィエ様の言葉を受けて騎士たちが王子達を捕まえて連れ去っていく。私は呆然とした。
「オリヴィエ様・・・一体・・・。」
「案じなくて大丈夫よ。陛下の許可は得ているの。実は少し前にこの騒動が起きることを知っていたのよ。色々あって取り押さえられるのがこの場しかなくて・・・嫌な思いをさせてしまったわね」
「いいえっ庇っていただき嬉しかったです‼ありがとうございました。」
私がオリヴィエ様に頭を下げると、会場から、アーリス様負けないでください。アーリス様頑張って!と励ましの言葉が掛けられた。今度は本当に涙が溢れてきた。その時、卒業式の舞踏会にはいないはずのお父様が駆け寄って来た。
「お父様?何故ここに居らっしゃるのですか?」
「オリヴィエ様にご連絡をいただいていたからだ。オリヴィエ様、ご協力いただきありがとうございました。これで取調べが出来ます。」
「いいのよ。私も原因を知りたかったから、同席させてもらうわ。」お父様がチラリと私をみると言った。
「アーリス、家に帰り私が帰るまで一歩も外にでてはダメだよ。」
「えッ?」
「謹慎していなさい。これは命令だ。」
「わかりました。」
その後、進展がないまま5日がすぎたのであった。
24
お気に入りに追加
614
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
この国の王族に嫁ぐのは断固拒否します
鍋
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢?
そんなの分からないけど、こんな性事情は受け入れられません。
ヒロインに王子様は譲ります。
私は好きな人を見つけます。
一章 17話完結 毎日12時に更新します。
二章 7話完結 毎日12時に更新します。
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
悪役令嬢、猛省中!!
***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」
――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。
処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。
今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!?
己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?!
襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、
誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、
誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。
今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる