54 / 54
わたしの気持ち
8
しおりを挟む
アトス様の思いつきから更に数日。わたしとアトス様は、かつての思い出の場所あの湖に来た。
祠での浄化が終わった後なので、アトス様はわたしを休ませ手早く支度してくれる。
有難いような…申し訳ないような…ムズムズしながらわたしはアトス様を見ていた。
あれやこれやと世話を焼かれるのも随分慣れたよね。慣れていいのかわからないけど。
今までの時は、誰にも頼ることなく生きてきた。現世では孤児だったこともあり、自分がしっかりしてないと思った。前世では、姉だから妹を守らないといけないからと誰にも頼らなかった。
前世については、行き着いたのが生贄だったわけだけど。
あの事件の主犯達の刑が執行される前に、アトス様にお願いして彼等に面会した。アトス様はいい顔しなかったけど、傍にいることを条件に許してくれた。
わたしは主犯の人に聞いた。
「どうしてこんなことしたんですか?」と
返ってきた返答は「我らは古の血を守ってきた。そしてこの土地が栄えたのだ。我らの存在は尊ばれるべきだ。だから、我らのために糧になるものがあるのは仕方ない。」と
前世の神官達と同じ考えで変わらない。
「だから、浄化の力が使えなくなるんですよ。貴方はただの欲深い人間です。ミコトを見ることもできない。なんの力も何も無いただの人間です。だから…した事の責任はちゃんと取ってください。」
わたしはそう言うと、彼はこれ以上何も言わず、頭を垂れ肩を落としていた。
わたしは自分が犠牲になる事で守ろうとした。それが正しかったのかは答えはない。
でも、結果カイン様やミコトを傷つけていた。
妹も…もし知っていたなら絶対止めただろう…
「ユエ。準備できたよ。おいで。」
アトス様が手を差し出す。わたしは瞬時のうち、ふぅと諦めの息を吐き手を置く。
「お姫様じゃないんですから、ここまでしなくてもいいんですよ?」
「君だからしたいんだよ。俺の愛しい人。」
……くさいセリフさり気なくいれてきたな。
敷物に2人座り長閑に時間が過ぎる。前世もこんな感じだったなぁ。
ここは全く変わらない。まるで昔に戻ったみたいだ。
「ふぁ…」
アトス様が欠伸をしている。眠いのかな?
「横になりますか?」
ぽんぽんと自分の膝を叩く。
「えっいいの?」
「えっ?」
「いや…俺は嬉しいけど、それ膝枕…」
「っ!?ーーーーー」
あまりに自然に言ってしまったらしくわたしは赤面し、慌てる。
わたしなんてことーーーーー
「あ、あのっ…「じゃあ遠慮なく。」…っえ?」
ぽすっと膝を枕に寝転ぶアトス様。
「うん。いいね、これ。」
アトス様はにこにこしながら膝に頬擦りする。
「……左様ですか。」
恥ずかしいが、まぁしばらくこうしてるか……自分で言ったことだし。
また、静かな時間が流れる。今は2人に会話はない。アトス様は夢の中だ。規則正しく寝息を立てている。
顔のつくりはいいんだよね。
あっ…意外にまつげ長い。
わたしはアトス様の髪を撫でながら顔をしげしげと見ていた。
こんな自然に寄り添える関係も悪くないのだろうな。
この人今となっては、わたしがいないと暴走しそうだし。
いない時はちゃんとできてただろうに……
まぁ暴走して間違って怪我でもされたらわたしも気が気じゃないし…
わたしは寝ているだろうアトス様に向けて
「わたしの気持ち…これが恋なのかはわかりませんが、貴方のことは嫌いではありません。
貴方が一人で辛い思いをするのは心が痛みます。
貴方が悲しみの中にいるとわたしも悲しいです。
貴方が笑うとわたしも一緒に笑うことができるし、心があたたかくなります。
そして、貴方の側にいたいと思ってしまう自分がいます。
今は……それでいいですか?」
ざぁっと心地よい風が吹く中わたしはまだ秘密の心のうちを寝ているアトス様に打ち明ける。
また再会するなんて思わなかった。
でもカイン様とは違う貴方。
わたしも前世と違うの。
だから、貴方とまた新しく時間を過ごしたい。
心配症で、わたしが側にいないと不安がる貴方。今は時間の許す限り貴方の側にいるわ。
これを恋心と名前をつけないのは、まだ認めたくないわたしの意地なの。
だから……もう少し待っててねーーーーー
ミコトは遠くから二人を見ていた。アトスとユエがこの先、どうなるかはそばで見届けようと思う。
神の立場でありながら、随分入れ込んだものだとも、自分に呆れながら。
それでも今の二人を見ることがミコトの願いだった。まだまだこの先見たかった光景が見ることができるだろう。
しばらくはこのままで…この穏やかな時間を共に過ごそうーーー
文章が不出来ながら、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
祠での浄化が終わった後なので、アトス様はわたしを休ませ手早く支度してくれる。
有難いような…申し訳ないような…ムズムズしながらわたしはアトス様を見ていた。
あれやこれやと世話を焼かれるのも随分慣れたよね。慣れていいのかわからないけど。
今までの時は、誰にも頼ることなく生きてきた。現世では孤児だったこともあり、自分がしっかりしてないと思った。前世では、姉だから妹を守らないといけないからと誰にも頼らなかった。
前世については、行き着いたのが生贄だったわけだけど。
あの事件の主犯達の刑が執行される前に、アトス様にお願いして彼等に面会した。アトス様はいい顔しなかったけど、傍にいることを条件に許してくれた。
わたしは主犯の人に聞いた。
「どうしてこんなことしたんですか?」と
返ってきた返答は「我らは古の血を守ってきた。そしてこの土地が栄えたのだ。我らの存在は尊ばれるべきだ。だから、我らのために糧になるものがあるのは仕方ない。」と
前世の神官達と同じ考えで変わらない。
「だから、浄化の力が使えなくなるんですよ。貴方はただの欲深い人間です。ミコトを見ることもできない。なんの力も何も無いただの人間です。だから…した事の責任はちゃんと取ってください。」
わたしはそう言うと、彼はこれ以上何も言わず、頭を垂れ肩を落としていた。
わたしは自分が犠牲になる事で守ろうとした。それが正しかったのかは答えはない。
でも、結果カイン様やミコトを傷つけていた。
妹も…もし知っていたなら絶対止めただろう…
「ユエ。準備できたよ。おいで。」
アトス様が手を差し出す。わたしは瞬時のうち、ふぅと諦めの息を吐き手を置く。
「お姫様じゃないんですから、ここまでしなくてもいいんですよ?」
「君だからしたいんだよ。俺の愛しい人。」
……くさいセリフさり気なくいれてきたな。
敷物に2人座り長閑に時間が過ぎる。前世もこんな感じだったなぁ。
ここは全く変わらない。まるで昔に戻ったみたいだ。
「ふぁ…」
アトス様が欠伸をしている。眠いのかな?
「横になりますか?」
ぽんぽんと自分の膝を叩く。
「えっいいの?」
「えっ?」
「いや…俺は嬉しいけど、それ膝枕…」
「っ!?ーーーーー」
あまりに自然に言ってしまったらしくわたしは赤面し、慌てる。
わたしなんてことーーーーー
「あ、あのっ…「じゃあ遠慮なく。」…っえ?」
ぽすっと膝を枕に寝転ぶアトス様。
「うん。いいね、これ。」
アトス様はにこにこしながら膝に頬擦りする。
「……左様ですか。」
恥ずかしいが、まぁしばらくこうしてるか……自分で言ったことだし。
また、静かな時間が流れる。今は2人に会話はない。アトス様は夢の中だ。規則正しく寝息を立てている。
顔のつくりはいいんだよね。
あっ…意外にまつげ長い。
わたしはアトス様の髪を撫でながら顔をしげしげと見ていた。
こんな自然に寄り添える関係も悪くないのだろうな。
この人今となっては、わたしがいないと暴走しそうだし。
いない時はちゃんとできてただろうに……
まぁ暴走して間違って怪我でもされたらわたしも気が気じゃないし…
わたしは寝ているだろうアトス様に向けて
「わたしの気持ち…これが恋なのかはわかりませんが、貴方のことは嫌いではありません。
貴方が一人で辛い思いをするのは心が痛みます。
貴方が悲しみの中にいるとわたしも悲しいです。
貴方が笑うとわたしも一緒に笑うことができるし、心があたたかくなります。
そして、貴方の側にいたいと思ってしまう自分がいます。
今は……それでいいですか?」
ざぁっと心地よい風が吹く中わたしはまだ秘密の心のうちを寝ているアトス様に打ち明ける。
また再会するなんて思わなかった。
でもカイン様とは違う貴方。
わたしも前世と違うの。
だから、貴方とまた新しく時間を過ごしたい。
心配症で、わたしが側にいないと不安がる貴方。今は時間の許す限り貴方の側にいるわ。
これを恋心と名前をつけないのは、まだ認めたくないわたしの意地なの。
だから……もう少し待っててねーーーーー
ミコトは遠くから二人を見ていた。アトスとユエがこの先、どうなるかはそばで見届けようと思う。
神の立場でありながら、随分入れ込んだものだとも、自分に呆れながら。
それでも今の二人を見ることがミコトの願いだった。まだまだこの先見たかった光景が見ることができるだろう。
しばらくはこのままで…この穏やかな時間を共に過ごそうーーー
文章が不出来ながら、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
0
お気に入りに追加
38
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる