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二人の夢

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「父上、なぜサニアと婚姻してはいけないのですか!」

「女が巫女だからだ。我らは神殿には不干渉。巫女を領主の血に入れることは許されない。」

「それが分からないのです。何故ですか!?」

「彼らは浄化する力を維持するために、血の濃さを特に重視している。それは近親間で子供をもうけ血を残す事だ。だから、神殿の人間が外に出ていくことは掟で禁じられている。
嫁にしたいからという理由で神殿は許可しない。」

「そこまで神殿に顔色を窺わなければいけないのですか⁈」

「そうだ。我らと神殿は盟約で縛られている。
お前には悪いが、希望を叶えることはできない。」

「……」

納得できるわけがなかった。何が盟約だ。古いしきたりでがんじがらめになって取り残されて何が生み出せるというのか。古きを重んじる程度はもう超えており、異常だと言わざる得ない。

しかし、父上の承諾も得ることができないまま俺は領地を出ていくことも考え出していた。
しかしそれが、父には分かっていたらしく知りもしない女をあてがわれた。

俺も時間がないと思ったが、父上が手を回し俺を監禁した。







「覚悟はできたか?」
父上が、部屋に訪ねてきたのは婚姻式の前日の朝だった。
今日はサニアと会う日だ。なんとしても今日出ていかなければ。

「父上、俺は彼女以外と婚姻するつもりはありません。」

「お前も頭が固いな。」

「あなたに言われたくありません。」

「婚姻についてはお前の好いた人ならば思っていたが、何故巫女を選んだ。市井の者でも反対はするつもりはなかったが、一番の禁忌タブーを選びよって。」

「市井の者がよくてサニアがダメだというのが納得できません。」

「はぁ…話にならんな…
明日は婚姻式だけでなく、大事な儀式があるというのに。」

「?とにかく俺は、今日サニアに会って彼女と出ていきます。」

「なんだ今日その女と会うのか…
今日まで監禁していたから、連絡も取れなかっただろ。
いいだろう…その女と会ってくるがいい。
現実を知るといいさ。」

そう言って父上は扉を開けて出ていくように促した。
突き飛ばしてでも出ていくつもりだったが、意外だった。
父上がどういうつもりで、会いにいく事を許したのか……
俺はサニアに会うべく出て行った。




しかし、父の意図はサニアと会って思い知らされた。







結局サニアは残る事を選択した。
父上が言うようになったのだ。彼女も神殿の掟には逆らえない。今後近親者と子供をもうけることも仕方がないと言うことも、分かっていた。

説得しようにも、自分たちの役目を言われると言葉を返せなかった。
彼女の役目、俺の役目。それは一個人が勝手にできるほど俺達は自由ではなかったのだ。

承諾せざるを得なかった。
彼女の意思は変わらなかったのだから。
そして、が約束されることなく俺達は別れた。



城に帰ってきた俺を父上は何も言わなかった。
明日の婚姻の流れについては家令から聞かされた。


眠れぬ夜が明けて、朝父上が部屋に入ってきた。
「今夜、神殿との儀式がある。心積りしておくように。」

「なんの儀式ですか⁈」

「それは直前に教える。今は婚姻式のことだけ考えていればいい。」

そう言い父上は出て行った。
家令に聞いたが、わからなかった。

俺の妻になる女は、身分もそこそこ釣り合う、大人しい人だった。
特に話す気にもなれず、淡々と式をこなした。
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