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二人の夢

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「姉様!!またお菓子を御神体に供えてたわね!」

巫女服を着た、妹のシェリスが怒ってきた。
「ええ、ミコトに供えてたの。喜んでたわよ?」

「またミコト様~?
もう!ここではミコト様が見えるのは姉様だけだけど、みんな怪しんでるよ?変な奴だって!
こんな小さな集落で、異分子にされたらまともな扱いされなくてなるよ?」

「ふふっごめんなさい。ミコトは本当に見えるのだけど、そうね…みんな見えないものね……気をつけるわ。じゃあもうお勤めの時間だから行くわね。」

私は神殿の中と、外の聖域と言われる場所しか知らない。
とても小さな世界しか知らないと思う。
一族は意図して、見聞を広めないようにしている。私達を外に出さないために、いずれ近い親族と婚姻を結ばせるはず。それがこの一族の決まり……
私はそれが決められた定めだと諦めている。だからなにも自分の意思なんてものは持つだけ無駄だと思っている。
私はただ浄化をするだけだ…


「こんにちはミコト。今日もよろしくお願いします。」
御神体の前で私はミコト挨拶をする。
するとミコトは姿を現してくれた。
成人女性くらいで、さすが神様。これが神々しいと言うものだろう。

「こんにちはサニア。昨日の菓子はなかなか美味しかったわ。
お前が供えてくれるおかげで、色々な発見があるの。不思議ね私はお前より長く存在するのにまだまだ知ることがあるなんて。」

「お気に召したのなら良かったです。
では、今日の浄化を始めますね。
今日のご希望はありますか?」
ミコトとの会話は日課だった。私がお勤めをするときは誰もそばにいない。
ミコトと話しているのを周りからすれば、誰もいないところに話をしてるものだから気味が悪いらしい。
私以外ミコトは見えていないが、力がその分強いらしい。一族では貴重な血として、それなりに自由にさせてくれる。お供えもその一つだ。それもこの神殿内での話だけど。

「では…始めます。」

私は浄化を始める。私が歌うと周りに光の玉が浮かび上がる。
それはいつ見ても幻想的で私は自分が作り出すその現象にいつか自分もこの中に溶け込みたいと思いをはせる。
それは、ただこの現象が美しいと酔っているのか。それとも、この狭い世界から抜け出たいと思う心なのか……私はそれ以上は考えないようにしているけれど。







そんなある日聖域の森の泉でぼーっとしてると声をかけられた。
「ねぇ、君大丈夫かい?」

「?」
後ろを振り向くと、質の良い服を着た青年が立っていた。なかなかに好青年だと思う。普段一族の人間しか知らないから妹が言うカッコイイ?とかはよくわからないけれど。

「はい?大丈夫です。私は巫女のサニアと申します。ここは聖域ですが、迷われたのですか?」

「俺はカイン。ちょっと散策してたら君を見かけたら、なんか元気なさそうと言うか…つい声をかけてしまったんだよ。」


「私は至って体調は普通ですが…心配してくれたのですね。ありがとうございます。
しかし、ここは結構森の奥です。一般の方がそうそう入り込めるところではないはずですが……」

「そうだね。俺は領主一族で、一応ここは入っても咎められることはないんだ。」

「そうでしたか。失礼いたしました。」
私は深々と頭を下げる。

「そんな、律儀に頭下げなくていいよ。君もここで休んでたんだろ?」

「休む…そうですね。今は特になにもすることがなかったので、ここで時間が過ぎるのを待っていました。」

「そう……ねぇサニアさん。巫女ってことは君は土地神様の浄化をする人なの?」

「はい。毎日お勤めさせていただいております。」



カーンカーンカーン

神殿の鐘の音が聞こえてきました。どうやら戻る時間のようです。

「カイン様。私は戻る時間ですので、これで失礼します。」

私はまた深くお辞儀をして去ろうとした。
すると片腕を掴まれた。

「カイン様?」

「あの……また君に会えることは出来るだろうか?」



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