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力にだって限界があるんです

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ユエを部屋に送ってから、俺はミコト様を呼んだ。
普通神様呼びつけるなんてことはできないが、ミコト様は来た。
余程ユエが心配なのだろう。


「ユエはどうでした?」

「今は寝てる。一応マリンと代ってきた。」

神様ってここまで1人の人間にかかりきるんだろうか…
普通は見守るのみで、みなに公平だと思ったんだが…

「どうして、そこまでユエに心を傾けられるんですか。
それに……どうしてユエはここまで浄化に力を注いでくれるんでしょうか。」

「……私を守ることが、あの子の存在意義だから…かな。」

「そんな。まだ会ってそんな間もない彼女にそこまで…「マリンにも言ったが、付き合いはお前達より長いよ。」…⁈」

「お前も不思議だったんだろう?
なぜ、ユエが修行もなしに浄化ができたのか。そして、祠の場所を知っていたのか。
……あの子は前世で私の巫女として、そして死後は神徒だったんだよ。
今はあの試験をきっかけに前世の記憶も呼び起こされている。」

「……死後も仕えていた?そんなことできるのですか?」

「ああ。私が認めればな…
昔…領主の血筋にはない力を、ある時代から、私が見えるようになった。お前は、理由を知っているか?」

「はい…代々領主にのみ伝えられている一つなので。
300年前に巫女の血を飲んだ領主がいたと。それからあなたを見ることができるようになったと。」

「その巫女が前世のユエだ。」

「⁈」

「私から詳細は話さないが、ユエはこの地を誰より守ってきた者だ。だから私はユエにつらい思いはして欲しくない…」

長い付き合い…だから余計に気にかけているのか。それだけなのだろうか…
しかし、昔の悪習が、彼女とこんな形で繋がってるなんて思っても見なかった。
巫女の血を飲む。その儀式には外部には知られてはいないほど禁忌だ。
領主のみが伝えられている一つに昔、領主は婚姻の時に巫女の血を捧げられる。そしてその巫女は土地神のもとへ捧げられる。すなわち人身御供だ。彼女はその犠牲者だっだというのだ。

これが慣例として行われてきたのだ。だからミコト様もあいつらに再び力を授けることはしなったのかもしれない…

そんな過去を持つ彼女に俺達は力を使えをという……人間はなんて傲慢なんだ……
自分の中で、彼女に対しての申し訳なさと、自分たちに対する不愉快な気持ちが胸を占める。



「あんな無茶を続けてたらいつか身体を壊すかもしれませんね。」

「…ああ、あの子はいつも無茶をする。私のこととなると自分のことは二の次だからなぁ。」

「……何かいい方法はないのでしょうか。」
聞きたいことはまだあるが、今は状況が全てユエにのっかかったようなものだ。少しでも彼女の助けになることがあれば…助けになりたい。

「……方法はある……けど、あんまり進めたくない……」

「何故ですか?」

「間違いなく、ユエは嫌がる。」

「……命には変えられません。方法を教えてください。」
ーー嫌われるわよ?ーー
母に言われた言葉が頭をよぎる。
俺だって嫌われたくはないよ……




**********



「あなたも、普段やる気ないのに無茶すると命がけね。」

わたしは今マリン様と二人にされている。

「本気出したらこんな感じです。」

「褒めてません。こんな無理して。自分を大事になさい。」

ぴしゃりと言われた。怒ってらっしゃる…
この人言葉は厳しいけど、優しいんだよね。
領主もマリン様も気にかけてくれるのはよく分かってるんだ。
胸の内で謝るしかできない。




コンコン


「ユエ。起きてるかい?」
領主がやってきた。

「はい。こんな格好で申し訳ありません。何か御用ですか?」
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