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第5章
冬の放課後
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秋も終わり、冬が近づく。
僕らは教室で合唱コンクールの準備を手伝っていた。三吉と僕は、またもや「選挙管理委員だから」という謎の理由で駆り出されていた。この学校の選挙管理委員は便利屋のように使われる運命なんだろうか。まぁたしかに前期も後期も選挙なんてなかったのだけど。
今日の手伝いが終わり、解散となった。
窓の向こうはもう真っ暗だった。まだ17時なのに。
愛知もすっかり冬だ。
雪の降る富山とは違い、ただただ愛知は寒かった。僕の勝手な勘違いだったが愛知はもう少し暖かい場所だと思っていた。しかし、実際住んでみると十二月の愛知は寒かった。
コートも手袋も必要だった。
雪こそ降らないからって寒くないわけではなかった。
「あー、でも年に一回か二回か雪は降ったりするんよね」
雪が降らないことを話していると三吉が言った。
「へぇ、降るんだ?」
「うん、富山ほどじゃないと思うんだけどねぇ」
普段、ふわふわしているような三吉も富山は雪が多く降ると知っているらしい。
「なんか降るイメージってなかった」
「たまにしか降らんけどね、でも何年かに一回は休校になるぐらい降るときもあるかなぁ」
「休校かぁ……雪で休校ってオレは経験ないかも」
「え? 富山って何センチ積もっても学校あるの?」
「何センチ積もっても、ってことはないけど……5センチとか10センチ降ったぐらいなら学校はあるかな」
「ええ、10センチ降っても? 歩けんやん」
「だって毎日10センチのときとかあるし、そしたら毎日休校になるだろ」
「それはぁ……そうだねぇ……」
そんなことを話しながら僕たちは片付けをしていた。一通り終わり、僕たちは教室を出た。
「さっすがに今から部活はいけないなぁ」
三吉が言った。冬季期間は17時までしか部活できないらしい。
「じゃあ今日は行かない?」
「んー、一応、体育館に顔出す。相沢くんも来て」
「え、なんで?」
「準備が長引いたって言い訳がわり」
「そんなのオレがいなくても説明すればいいだろ」
「説得力増し増しのため」
僕は三吉に引っ張られ、体育館に連れていかれた。
近づくにつれて体育館からバスケットボールが床で弾む音が聞こえてきた。もう17時は過ぎているのに部活は続いているのかもしれない。
体育館に到着し、重たい扉を開く。廊下とは違う体育館にしかない冬の空気がこちらに流れ込んでくる。
体育館はガランとしていた。部活をしている様子はなくて、一人だけが練習していた。
「あー、伊藤くんしかおらんねぇ」
三吉が僕の横で言った。そのとおりで、伊藤が一人で練習をしていた。
伊藤が三吉と僕の姿に気がつき、左手を挙げた。
「細谷さんたちならもうあがったよ」
伊藤が言った。「あー、そうかぁ」と三吉が肩を落とす。
「結衣ー?」
後ろから声が聞こえた。僕たちが振り返ると細谷たち女子バスケ部のメンバーがいた。声をかけてくれたのは細谷だった。もう制服に着替えて、コートも着た帰宅準備ができた状態だった。
「あー、立夏、ごめんなぁ、今日は合唱コンの準備が長引いちゃって」
「全然いいよー。そんなの仕方ないし」
三吉が細谷たちのほうへと駆け寄ってく。
合流してから三吉が僕へと振り返る。細谷たち女バスのメンバーも僕を見ている。
「オレ、ついでだし、伊藤と話してくよ」
「え……そうなん?」
「うん。たまにはありかなって」
「……そっかぁ。ごめんね、体育館まで来てもらって」
「全然OK。じゃ」
「またあしたー」
三吉が手をぶんぶんと横に振った。細谷も「じゃあねー」と声をかけてくれた。女バスのメンバーたちも「またねー」とか「じゃあねー」と言ってくれた。正直、誰が誰なのか名前も知らないけれど。
単に三吉や細谷たちの女子集団と正面玄関まで歩くほうがしんどいのもあって、僕は体育館に残っただけだった。
僕らは教室で合唱コンクールの準備を手伝っていた。三吉と僕は、またもや「選挙管理委員だから」という謎の理由で駆り出されていた。この学校の選挙管理委員は便利屋のように使われる運命なんだろうか。まぁたしかに前期も後期も選挙なんてなかったのだけど。
今日の手伝いが終わり、解散となった。
窓の向こうはもう真っ暗だった。まだ17時なのに。
愛知もすっかり冬だ。
雪の降る富山とは違い、ただただ愛知は寒かった。僕の勝手な勘違いだったが愛知はもう少し暖かい場所だと思っていた。しかし、実際住んでみると十二月の愛知は寒かった。
コートも手袋も必要だった。
雪こそ降らないからって寒くないわけではなかった。
「あー、でも年に一回か二回か雪は降ったりするんよね」
雪が降らないことを話していると三吉が言った。
「へぇ、降るんだ?」
「うん、富山ほどじゃないと思うんだけどねぇ」
普段、ふわふわしているような三吉も富山は雪が多く降ると知っているらしい。
「なんか降るイメージってなかった」
「たまにしか降らんけどね、でも何年かに一回は休校になるぐらい降るときもあるかなぁ」
「休校かぁ……雪で休校ってオレは経験ないかも」
「え? 富山って何センチ積もっても学校あるの?」
「何センチ積もっても、ってことはないけど……5センチとか10センチ降ったぐらいなら学校はあるかな」
「ええ、10センチ降っても? 歩けんやん」
「だって毎日10センチのときとかあるし、そしたら毎日休校になるだろ」
「それはぁ……そうだねぇ……」
そんなことを話しながら僕たちは片付けをしていた。一通り終わり、僕たちは教室を出た。
「さっすがに今から部活はいけないなぁ」
三吉が言った。冬季期間は17時までしか部活できないらしい。
「じゃあ今日は行かない?」
「んー、一応、体育館に顔出す。相沢くんも来て」
「え、なんで?」
「準備が長引いたって言い訳がわり」
「そんなのオレがいなくても説明すればいいだろ」
「説得力増し増しのため」
僕は三吉に引っ張られ、体育館に連れていかれた。
近づくにつれて体育館からバスケットボールが床で弾む音が聞こえてきた。もう17時は過ぎているのに部活は続いているのかもしれない。
体育館に到着し、重たい扉を開く。廊下とは違う体育館にしかない冬の空気がこちらに流れ込んでくる。
体育館はガランとしていた。部活をしている様子はなくて、一人だけが練習していた。
「あー、伊藤くんしかおらんねぇ」
三吉が僕の横で言った。そのとおりで、伊藤が一人で練習をしていた。
伊藤が三吉と僕の姿に気がつき、左手を挙げた。
「細谷さんたちならもうあがったよ」
伊藤が言った。「あー、そうかぁ」と三吉が肩を落とす。
「結衣ー?」
後ろから声が聞こえた。僕たちが振り返ると細谷たち女子バスケ部のメンバーがいた。声をかけてくれたのは細谷だった。もう制服に着替えて、コートも着た帰宅準備ができた状態だった。
「あー、立夏、ごめんなぁ、今日は合唱コンの準備が長引いちゃって」
「全然いいよー。そんなの仕方ないし」
三吉が細谷たちのほうへと駆け寄ってく。
合流してから三吉が僕へと振り返る。細谷たち女バスのメンバーも僕を見ている。
「オレ、ついでだし、伊藤と話してくよ」
「え……そうなん?」
「うん。たまにはありかなって」
「……そっかぁ。ごめんね、体育館まで来てもらって」
「全然OK。じゃ」
「またあしたー」
三吉が手をぶんぶんと横に振った。細谷も「じゃあねー」と声をかけてくれた。女バスのメンバーたちも「またねー」とか「じゃあねー」と言ってくれた。正直、誰が誰なのか名前も知らないけれど。
単に三吉や細谷たちの女子集団と正面玄関まで歩くほうがしんどいのもあって、僕は体育館に残っただけだった。
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