【完結】碧よりも蒼く

多田莉都

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第4章

体育大会の後 5

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*
 この間の週末に、陸上部の新人戦があったと聞いた。
 もしかしたら、富山でも行われたのかなと少し気になった。
 放課後、東棟と西棟をつなぐ中屋上廊下で僕は一人、スマホで結果がまとめられたウェブサイトを探した。すると同じくこの間の週末に富山でも大会が行われていたということがわかった。

 男子100mの結果をスクロールしていく。

「あった」

 『相沢碧斗』の名前がそこにはあった。100m走にあっちの相沢碧斗は出場していた。
 記録は、12秒32。
 予選の組内で5着、3着以内または各組の4着以下の選手のうち上位6名が拾われるいわゆる「プラス枠」にも拾われず、予選落ちだった。

「ま、そんな簡単に速くなってるはずはないよな」

 8月に見たときからまだ一ヶ月ぐらいしか経っていない。
 こんな一ヶ月で劇的に速くなる選手などいない。

 一方で、紗季もまた100mに出場していた。準決勝には進出しているようだったが、そこで敗退していた。

「続けているんだなー」

 勝てなくても、負けても続けている奴らが当然のようにいる。


 僕は神奈川の結果をまとめたページを開く。
 100mの予選も準決勝も見ない。ここは見る必要もない。が決勝に進出していないはずがない。見るとするならば決勝のタイムだけだ。

 神奈川の男子100m決勝、そこの一着には僕が予想していたとおりで、何の面白みを感じない名前がそこには載っていた。


『1 10.41 藤枝 真司(1) 横浜明風高』


 1位に入っていたのは藤枝の名前だった。
 この記録がいまの藤枝にとって本気のタイムであるのか、僕にはわからない。リレーをすぐ後に控えていたり、1位を確信して緩めたり、もっとタイムを出ることができるはずなのにタイムを出さなかった場合もあるだろう。
 何にしても、藤枝のこのタイムが本気であろうとなかろうと、中学二年の僕では勝つことのできないタイムだった。




『相沢くんは、何か理由があって本気で走らなかったんだって確信が持てた』


 この間、濱田さんの『Amy's』の前で言われた言葉が頭の中で蘇った。
 スポーツテストのときは、確かに本気で走らなかったかもしれない。それはそのとおりかもしれない。


 でも違う。


 本気で走ったとしても敵わないもの、それがあるから僕は走ることが怖いだけなんだ。もう記録が伸びない僕とまだまだ伸びていく藤枝、もう差はどれぐらいだろう。


 中学最後の大会を思い出すだけで震えそうな気分になる。


「情けないなぁ……」


 九月も終わりに近づき、夏の暑さが消え始め、風が少し緩くなってきた。
 

 僕はそれからしばらくの間、中屋上廊下から見えるサッカー部と陸上部が部活の様子をぼんやりと眺めていた。
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