【完結】碧よりも蒼く

第2章

誰にも知らない町で⑨

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　バイトが終わり、家に帰った。
　祖父母の家で、かつて高校生の頃まで母が使っていたという部屋を僕は使わせてもらっている。
　築30年以上だというが、祖母がこまめに掃除などをしてくれていたからか、そこまで古さを感じさせない。以前は古いエアコンだったそうだが、僕が来るということでわざわざ買い替えてくれた。
　雨がひどい日は祖父は「車で送るぞ」と言ってくれるし、ごはんだって毎日祖母が用意してくれている。

　僕の勝手な都合なのに、ここまでしてくれているなんて本当に嬉しい限りだ。
　少しぐらい居候代をいれようと思った僕は、「Amy’s」でバイトを始めた。

＊
　シャワーを浴びてから、部屋に戻り、ベッドの上に仰向けに倒れ込む。
　天井を見上げながら、そういえば、と僕は思い出したことがあり、机の上に置いてあったスマホを手に取った。さっき平野と話していて、陸上部時代のことをいろいろ思い出していたのだが、今の富山ではどうなっているんだろう？　と少し気になった。

　僕が知っている奴らは高校に入り、陸上競技を続けているんだろうか。僕は、続けていないけれど。



　富山の陸上競技の結果をまとめてあるWebサイトを開く。
　高校の大会結果のリンクを見つけて、それを押してみた。高校総体の予選となる県大会の結果が表示された。
　3年生や2年生の名前が並ぶ中、1年生の名前もちらほらと見つかる。


　中学の同級生の名前が100ｍや200ｍに載っていた。
　へぇ岩崎は雄山北に行ってるんだー、中学よりタイム悪くなってないか？　なんて思いながら見ていたとき、僕は、ある存在を思い出した。
　あいつは、いまも陸上部なんだろうか。


　僕は検索機能で名前を打ち込む。

　『紗季』

　画面が一気に動き、ある名前にカーソルが当たり、名前が黄色で反転される。

　そこには小学校からの同級生、『山下紗季』の名前があった。


　あいつは、まだ走っているのか。