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8月2日、午後
第1話 真夏のアスファルト
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見上げるぐらいにもならないぐらいに暑い陽射しを太陽はアスファルトを降り注ぎ続けている。
私はそのアスファルトの上を歩いている。
歩いているだけで、スニーカーの中まで熱くなり、歩いているだけで、額から流れる汗は止まらなくなる。身体中の毛穴から汗が吹き出ているような気がする。
夏、なんだな。もう八月だというなのにそんなことを私は思った。
この時間は、本当ならば、塾に行っているはずだった。夏期講習を受けている時間だった。
成績が急降下している私は塾をサボっていい身分などではない。もっと勉強しなくちゃいけない。Sクラスに戻らなきゃいけない。
――私は、こんなところで何をしているんだろう。
「ユカ、大丈夫ー?」
顔を上げると、よく日焼けしたショートカットの女の子・アカネがこちらを見ていた。アカネは私がついていけなくなってきたことに気付いてくれたらしい。声を出すのも億劫な私は右手を挙げて無事の意志を示す。
「もうすぐ着くからねー」
お団子頭の女の子・リサが両手の掌を顔の前で合わせながら言った。「もうすぐ」ってそれ何回目だよ。
二人ともなんでこの炎天下で平気な顔をしていられるんだろう。
真夏の陽射しは私だけに降り注いでいるのか? あの二人だけ体温が冷える服でも着ているのか? ありえない妄想を頭の中で描いては消した。
単純に、私は日頃、空調のききすぎた塾や家にばかりいるから暑さに身体が慣れていないんだろう。
「ユカー?」
リサの声に私はもう一度、右手を挙げる。
もうすぐ、って言うならもう少しだけ歩こうかな。もうちょっとだけこの身体、動かそうかな。
この先に何があるのかわからないけど、アカネ、リサ、私の三人で進めば、何か手に入るような気がした。
少しだけ涼しい風が前髪を揺らす。なぜか顔がゆるみ、笑顔が出た。
「もうすぐ追いつくからー」
ふり絞った私の声にアカネとリサは手を挙げて応えてくれた。
二人が待っているのは、少し先だけど、私は追いつくべく足を進めた。ついていったら何があるのか、それはわからない。わからないけど、アカネとリサも一緒だし、悪いことにはならないんじゃないかと思う。
明日起きることなんて想像の範囲内のことしか起きない昨今、先のことを考えないで行動をしているなんて本当に久しぶりのことだ。
不安と妙な高揚感が頭の中でごちゃごちゃしている。
思えば、昨日の午後までは、ここに来る予定すらなかった。
私はそのアスファルトの上を歩いている。
歩いているだけで、スニーカーの中まで熱くなり、歩いているだけで、額から流れる汗は止まらなくなる。身体中の毛穴から汗が吹き出ているような気がする。
夏、なんだな。もう八月だというなのにそんなことを私は思った。
この時間は、本当ならば、塾に行っているはずだった。夏期講習を受けている時間だった。
成績が急降下している私は塾をサボっていい身分などではない。もっと勉強しなくちゃいけない。Sクラスに戻らなきゃいけない。
――私は、こんなところで何をしているんだろう。
「ユカ、大丈夫ー?」
顔を上げると、よく日焼けしたショートカットの女の子・アカネがこちらを見ていた。アカネは私がついていけなくなってきたことに気付いてくれたらしい。声を出すのも億劫な私は右手を挙げて無事の意志を示す。
「もうすぐ着くからねー」
お団子頭の女の子・リサが両手の掌を顔の前で合わせながら言った。「もうすぐ」ってそれ何回目だよ。
二人ともなんでこの炎天下で平気な顔をしていられるんだろう。
真夏の陽射しは私だけに降り注いでいるのか? あの二人だけ体温が冷える服でも着ているのか? ありえない妄想を頭の中で描いては消した。
単純に、私は日頃、空調のききすぎた塾や家にばかりいるから暑さに身体が慣れていないんだろう。
「ユカー?」
リサの声に私はもう一度、右手を挙げる。
もうすぐ、って言うならもう少しだけ歩こうかな。もうちょっとだけこの身体、動かそうかな。
この先に何があるのかわからないけど、アカネ、リサ、私の三人で進めば、何か手に入るような気がした。
少しだけ涼しい風が前髪を揺らす。なぜか顔がゆるみ、笑顔が出た。
「もうすぐ追いつくからー」
ふり絞った私の声にアカネとリサは手を挙げて応えてくれた。
二人が待っているのは、少し先だけど、私は追いつくべく足を進めた。ついていったら何があるのか、それはわからない。わからないけど、アカネとリサも一緒だし、悪いことにはならないんじゃないかと思う。
明日起きることなんて想像の範囲内のことしか起きない昨今、先のことを考えないで行動をしているなんて本当に久しぶりのことだ。
不安と妙な高揚感が頭の中でごちゃごちゃしている。
思えば、昨日の午後までは、ここに来る予定すらなかった。
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