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第二章 にっくき法狼機女 4
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翠玉と婢たちの集団脱走を報せると、飛燕はハッと息を吐いた。
「小娘たち、何と浅はかなことを! 率いているのが世間知らずの翠玉だったらそう遠くへはいくまい。すぐに洛中の呉家に報せにいけ。婢三人の生家にもついでに報せてこい」
「承りました」
月牙は大急ぎで房へ戻ると、緋色の帯をほどき、ふくらみのあるくくり袴を幅の狭い藍染めの袴に履き替え、髪を男髷に結いなおして黒繻子の布で覆った。
王宮の兵衛か宿駅の武官のような男装である。
そのなりで箙を背負って厩へ急ぐと、小柄な体を弓なりに反らしてえっちらおっちら水桶を運んでいた小蓮がギャっと叫んで桶を取り落とした。
「何やっているんだ」
「あ、なんだ頭領か」
最年少の妓官は心底ほっとしたように応じた。
「ああ吃驚した。いつ見ても似合いますねえ! 役者にだってそんな美男は滅多にいませんよ。だけど箙を背負っていたら一目で武芸妓官って分かっちゃいますよ?」
「いいんだよ分かって。身を隠すために変装しているわけじゃないんだから」
「じゃ、なんでわざわざ男装するんですか?」
「武芸妓官が他行する際には必ず男装すること。後宮典範にそう定められているんだ」
「それは何でかってことですよう」
「そんなこと考えたって仕方がないだろう。昔からそう決まっているんだから」
月牙はおざなりに応え、古なじみの大きな黒馬に鞍をおいた。
と、小蓮が残った水を馬の水飲み桶に移しながら小声で訊ねてきた。
「ねえ頭領――」
「どこへ何しに行くかという質問なら、答えられないぞ?」
「技官の他行は内密にって典範に定まっているんでしょ? 分かっていますよそんなの。分かっていますけど」
小蓮は焦れたように言い、うつ向いたまま小さく続けた。
「翠玉姉さん、無事ですよね? 他の子たちもみんな、ただ生家に帰っただけですよね?」
「――ああ。きっとそうだよ」
小蓮の小さな肩が微かに震えていた。
月牙はその肩を抱き寄せて慰めてやりたい衝動をこらえた。
この子はたった十四とはいえ立派な柘榴の妓官だ。
ありふれた女子供のような慰めなど必要ない。
――われらは柘榴の妓官なり。
十八で任官の夢をかなえて以来、その言葉が月牙の呪文だった。
柘榴の妓官は心弱い女子供とは異なる。
心身ともに鍛え抜かれた力ある存在――「外の世界」の男たちと比して何ら遜色ない存在なのだ。
心に女々しい感傷が萌しそうになるたび、月牙は自分にそう言い聞かせている。
麗明が一人で守っている外砦門を出れば、まっすぐな幅三丈の石畳の道が南へと伸びている。
ここはまだ洛外だが、左右には瓦屋根の家々が連なって立派に町場の風情だ。
月牙が馬を進めていると、蹄の音に気付いたのか、路傍の水路で布を踏んでいた洗濯女が顔をあげ、白鷺の羽矢を見とめるなり顔を綻ばせた。
「あれあれ武芸妓官様だよ。おーい皆みろ、お久しぶりに妓官様のお出ましだよ!」
「おおどなたかの。飛燕様か?」
「いやだねあんた、飛燕様は四年も前に内宮へあがられたんじゃないか。当代の頭領様だよ。ほれ、あの器量よしの」
三人集った洗濯女が物見高くも親しみの籠った視線を向けてくる。月牙は馬上で背筋を正した。
やがて差し掛かる大辻を右へ折れると東橋へ出る。
京を囲む大環濠に架かる石橋である。渡ればその先が洛中だ。
橋の口に設けられた馬蹄型の門は、平時には自由に出入りできる。
翠玉の生家は左京区にあった。
表通りから一本奥へ入ったややさびれた立地で、宅地を囲む築地がところどころ崩れて骨組みが露出していた。
髷に黒い絹の頭巾を被せてゆったりとした白絹の袍をまとった呉家の当主は娘の出奔の報せを告げられるなり眉をよせ、しばらくじっと黙り込んでから思いがけないことを言った。
「柘榴庭さま、ご案じ召されるな。実は娘はこの父の意向で家へと呼び戻したのだ。報せが前後して相すまぬが、内宮へは改めて当家から宿下がりを乞う。婢三人についてもすべて当家が引き受けるゆえ、このうえ何もご詮索なさるな。お詫びに例の媽祖大祭への寄進の件、一族をあげて検討する旨内宮へお伝えくだされ」
呉家の当主の言い分が方便であることは明白だった。
年頃の娘が家長に無断で在所を出奔したとなったら一族を巻き込む醜聞になる。
月牙はせめて内々によく捜して欲しいと頼み込んで呉家を辞すほかなかった。
呉家の当主がまずは橘庭宛にとしたためた私信を携えて宮へ戻ると、外砦門の露台の上に桂花が立っていた。開門を命じて中へ入る。弁えすぎるほど典範を弁えている桂花は何も訊ねなかったが、視線だけがもの言いたげだった。
黒馬を厩へ戻し、その足ですぐさま内宮北院へと急ぐ。出てきた祐筆に取り次ぎを頼むとすぐに督が現れた。
武芸妓官すべての督である宋金蝉は、月牙と同じく一目でカジャール系だと分かる容貌の老女だ。
髪は雪のように白いが、面立ちは老いてなお煌びやかなまでに端麗である。美麗な老女は美麗な顔を沈鬱に曇らせていた。
「督よ、呉家から内々の文を預かってまいりました」
「然様か」
金蝉は受け取ってざっと目を走らせるなり、安堵と諦めの入り混じった表情を浮かべた。
「なるほどのう。いずこも同じ家の誉れか! 呉家は口止めの見返りに何をと申しておった?」
「媽祖大祭への寄進を一族挙げて検討するそうです」
「となると、主計所は喜んで賂に応じるじゃろ。よいか月牙、東院からじきじきのお達しじゃ。呉家の娘の出奔については今知る者以外他言無用にせよ。宮のあまりの困窮に外宮の婢が夜逃げしたなど洛中で面白おかしく囃されては桃果殿様のご名誉に関わるからの。生家が宿下がりとして処するのであれば、おそらくそのまま受諾されるであろう。柘榴庭にはそのように伝えておけ」
「承りました」
月牙も深い諦めとともに応じた。貴顕の家の姫君からなる東院の歴々からすれば、男装して町場を一人歩きする外宮の妓官など勝手にそこらをほっつき歩く犬猫みたいなものなのだろう。まして庭付きの婢など、備品の鍋程度にしか思っていないのだ。
――しかし、あの子らだって生家に戻ればそれなりの娘さんだ。いなくなったのに捜しもしないなど、正しいことなのだろうか?
しきりと湧き上がるそんな思いを、月牙は無理やりに押し殺した。内宮のお達しに異を唱えるなど、宮仕えの身にはもってのほかだ。
「それからな」と、金蝉が言いにくそうに言った。「これも今しがた達しがあった。柘榴庭の妓官は一両日中に庭を引き払ってこの橘庭へと移るようにと」
「では、外砦門の警備は?」
「四名ではどうにもできなかろう。杏樹庭と柿樹庭は幸い築地で囲まれておのおの門があるゆえの、当面は閂をかけさせて凌ぐ。芭蕉庭に残る針女は家財ごと西院の芙蓉殿に移るそうじゃ」
「すると、外砦門は開け放しとなるのですか?」
「当面はの」
「われわれの兵庫の品と厩の馬はいかがいたしましょう?」
「馬は分散させる。この庭で二頭と、紅梅、白梅、内膳所の後庭でそれぞれ一頭ずつ。兵庫の品は茉莉花殿の西蔵に移すことに決まった。これはもう明日やってしまおう。主計所からどなたか立ち会ってもらわねば。――ああ月牙、何をぼさっとしておる。さっさと行って兵庫の品の一覧を筆写せんか!」
「あ、はいただいま!」
月牙は慌てて柘榴庭へ戻ると、書き物道具を引っ張り出して不得手な筆の仕事に励んだ。
兵庫に納まる品の名を「一 長弓 一 長弓」と延々写し続けているあいだに、翠玉の出奔を案じる気持ちが徐々に薄れてしまった。
武芸に長けていようと、結局のところあの子は世間知らずの令嬢だ。
婢たちの生家を頼ろうとして呉家に伝えられてしまうのがおちだろう。
もしまた戻ってきたら、そのときは叱って迎え入れてやればいい。
月牙はそう思おうとした。
「小娘たち、何と浅はかなことを! 率いているのが世間知らずの翠玉だったらそう遠くへはいくまい。すぐに洛中の呉家に報せにいけ。婢三人の生家にもついでに報せてこい」
「承りました」
月牙は大急ぎで房へ戻ると、緋色の帯をほどき、ふくらみのあるくくり袴を幅の狭い藍染めの袴に履き替え、髪を男髷に結いなおして黒繻子の布で覆った。
王宮の兵衛か宿駅の武官のような男装である。
そのなりで箙を背負って厩へ急ぐと、小柄な体を弓なりに反らしてえっちらおっちら水桶を運んでいた小蓮がギャっと叫んで桶を取り落とした。
「何やっているんだ」
「あ、なんだ頭領か」
最年少の妓官は心底ほっとしたように応じた。
「ああ吃驚した。いつ見ても似合いますねえ! 役者にだってそんな美男は滅多にいませんよ。だけど箙を背負っていたら一目で武芸妓官って分かっちゃいますよ?」
「いいんだよ分かって。身を隠すために変装しているわけじゃないんだから」
「じゃ、なんでわざわざ男装するんですか?」
「武芸妓官が他行する際には必ず男装すること。後宮典範にそう定められているんだ」
「それは何でかってことですよう」
「そんなこと考えたって仕方がないだろう。昔からそう決まっているんだから」
月牙はおざなりに応え、古なじみの大きな黒馬に鞍をおいた。
と、小蓮が残った水を馬の水飲み桶に移しながら小声で訊ねてきた。
「ねえ頭領――」
「どこへ何しに行くかという質問なら、答えられないぞ?」
「技官の他行は内密にって典範に定まっているんでしょ? 分かっていますよそんなの。分かっていますけど」
小蓮は焦れたように言い、うつ向いたまま小さく続けた。
「翠玉姉さん、無事ですよね? 他の子たちもみんな、ただ生家に帰っただけですよね?」
「――ああ。きっとそうだよ」
小蓮の小さな肩が微かに震えていた。
月牙はその肩を抱き寄せて慰めてやりたい衝動をこらえた。
この子はたった十四とはいえ立派な柘榴の妓官だ。
ありふれた女子供のような慰めなど必要ない。
――われらは柘榴の妓官なり。
十八で任官の夢をかなえて以来、その言葉が月牙の呪文だった。
柘榴の妓官は心弱い女子供とは異なる。
心身ともに鍛え抜かれた力ある存在――「外の世界」の男たちと比して何ら遜色ない存在なのだ。
心に女々しい感傷が萌しそうになるたび、月牙は自分にそう言い聞かせている。
麗明が一人で守っている外砦門を出れば、まっすぐな幅三丈の石畳の道が南へと伸びている。
ここはまだ洛外だが、左右には瓦屋根の家々が連なって立派に町場の風情だ。
月牙が馬を進めていると、蹄の音に気付いたのか、路傍の水路で布を踏んでいた洗濯女が顔をあげ、白鷺の羽矢を見とめるなり顔を綻ばせた。
「あれあれ武芸妓官様だよ。おーい皆みろ、お久しぶりに妓官様のお出ましだよ!」
「おおどなたかの。飛燕様か?」
「いやだねあんた、飛燕様は四年も前に内宮へあがられたんじゃないか。当代の頭領様だよ。ほれ、あの器量よしの」
三人集った洗濯女が物見高くも親しみの籠った視線を向けてくる。月牙は馬上で背筋を正した。
やがて差し掛かる大辻を右へ折れると東橋へ出る。
京を囲む大環濠に架かる石橋である。渡ればその先が洛中だ。
橋の口に設けられた馬蹄型の門は、平時には自由に出入りできる。
翠玉の生家は左京区にあった。
表通りから一本奥へ入ったややさびれた立地で、宅地を囲む築地がところどころ崩れて骨組みが露出していた。
髷に黒い絹の頭巾を被せてゆったりとした白絹の袍をまとった呉家の当主は娘の出奔の報せを告げられるなり眉をよせ、しばらくじっと黙り込んでから思いがけないことを言った。
「柘榴庭さま、ご案じ召されるな。実は娘はこの父の意向で家へと呼び戻したのだ。報せが前後して相すまぬが、内宮へは改めて当家から宿下がりを乞う。婢三人についてもすべて当家が引き受けるゆえ、このうえ何もご詮索なさるな。お詫びに例の媽祖大祭への寄進の件、一族をあげて検討する旨内宮へお伝えくだされ」
呉家の当主の言い分が方便であることは明白だった。
年頃の娘が家長に無断で在所を出奔したとなったら一族を巻き込む醜聞になる。
月牙はせめて内々によく捜して欲しいと頼み込んで呉家を辞すほかなかった。
呉家の当主がまずは橘庭宛にとしたためた私信を携えて宮へ戻ると、外砦門の露台の上に桂花が立っていた。開門を命じて中へ入る。弁えすぎるほど典範を弁えている桂花は何も訊ねなかったが、視線だけがもの言いたげだった。
黒馬を厩へ戻し、その足ですぐさま内宮北院へと急ぐ。出てきた祐筆に取り次ぎを頼むとすぐに督が現れた。
武芸妓官すべての督である宋金蝉は、月牙と同じく一目でカジャール系だと分かる容貌の老女だ。
髪は雪のように白いが、面立ちは老いてなお煌びやかなまでに端麗である。美麗な老女は美麗な顔を沈鬱に曇らせていた。
「督よ、呉家から内々の文を預かってまいりました」
「然様か」
金蝉は受け取ってざっと目を走らせるなり、安堵と諦めの入り混じった表情を浮かべた。
「なるほどのう。いずこも同じ家の誉れか! 呉家は口止めの見返りに何をと申しておった?」
「媽祖大祭への寄進を一族挙げて検討するそうです」
「となると、主計所は喜んで賂に応じるじゃろ。よいか月牙、東院からじきじきのお達しじゃ。呉家の娘の出奔については今知る者以外他言無用にせよ。宮のあまりの困窮に外宮の婢が夜逃げしたなど洛中で面白おかしく囃されては桃果殿様のご名誉に関わるからの。生家が宿下がりとして処するのであれば、おそらくそのまま受諾されるであろう。柘榴庭にはそのように伝えておけ」
「承りました」
月牙も深い諦めとともに応じた。貴顕の家の姫君からなる東院の歴々からすれば、男装して町場を一人歩きする外宮の妓官など勝手にそこらをほっつき歩く犬猫みたいなものなのだろう。まして庭付きの婢など、備品の鍋程度にしか思っていないのだ。
――しかし、あの子らだって生家に戻ればそれなりの娘さんだ。いなくなったのに捜しもしないなど、正しいことなのだろうか?
しきりと湧き上がるそんな思いを、月牙は無理やりに押し殺した。内宮のお達しに異を唱えるなど、宮仕えの身にはもってのほかだ。
「それからな」と、金蝉が言いにくそうに言った。「これも今しがた達しがあった。柘榴庭の妓官は一両日中に庭を引き払ってこの橘庭へと移るようにと」
「では、外砦門の警備は?」
「四名ではどうにもできなかろう。杏樹庭と柿樹庭は幸い築地で囲まれておのおの門があるゆえの、当面は閂をかけさせて凌ぐ。芭蕉庭に残る針女は家財ごと西院の芙蓉殿に移るそうじゃ」
「すると、外砦門は開け放しとなるのですか?」
「当面はの」
「われわれの兵庫の品と厩の馬はいかがいたしましょう?」
「馬は分散させる。この庭で二頭と、紅梅、白梅、内膳所の後庭でそれぞれ一頭ずつ。兵庫の品は茉莉花殿の西蔵に移すことに決まった。これはもう明日やってしまおう。主計所からどなたか立ち会ってもらわねば。――ああ月牙、何をぼさっとしておる。さっさと行って兵庫の品の一覧を筆写せんか!」
「あ、はいただいま!」
月牙は慌てて柘榴庭へ戻ると、書き物道具を引っ張り出して不得手な筆の仕事に励んだ。
兵庫に納まる品の名を「一 長弓 一 長弓」と延々写し続けているあいだに、翠玉の出奔を案じる気持ちが徐々に薄れてしまった。
武芸に長けていようと、結局のところあの子は世間知らずの令嬢だ。
婢たちの生家を頼ろうとして呉家に伝えられてしまうのがおちだろう。
もしまた戻ってきたら、そのときは叱って迎え入れてやればいい。
月牙はそう思おうとした。
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