『天燃ゆ。地燃ゆ。命燃ゆ。』中篇小説

第四十七話

　この『グングニル』とよばれる『時空間デコヒーレンス機関』は名前のとおりに時空連続体や物質といわれるものを『デコヒーレンス』させます。『デコヒーレンス』とはききなれない言葉かもしれません。つまり『波動関数の聚しゆう斂れんによって観測されなかった量子論的現象が消滅する』ことです。なので『グングニル』とは『本来拡散されるはずの粒子の波動関数を一定値に聚しゆう斂れんさせることでいかなる存在も存在しなかった量子論的世界を実現させる』という代物なのであります。斯か様ようなる機関は悪用されるとそれぞれの膜宇宙すらも刹那のうちに『デコヒーレンス』つまり消滅させることができてしまいます。ここが問題です。実際に無限個の膜宇宙がつらなっている貴方あなたがたのしらない十一次元時空では膜宇宙同士の貿易の齟そ齬ごから『ほかの膜宇宙をデコヒーレンス』させて支配域を拡大せんとする膜宇宙が誕生しそれらの悪辣なる膜宇宙をまたデコヒーレンスさせるために『膜宇宙間戦争』通称『窮極集合大戦』が勃発しているのであります。