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第九話
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白銀の剱をかまえた増長天に対峙して毘沙門天が彊梁なる宝棒をかまえると二柱の神神はしばらく双方の双眸を睥睨しあった。毘沙門天すなわち知盛が「これはいかに。おじけづくのも詮無いこと」というと増長天すなわち景時は「おじけづきたるはいずれか。あかしてみよ」と咆哮し櫓櫂船の舳先を蹂躙して太陽の赫奕たる穹窿へと翺翔していった。廼時に毘沙門天も大船の舳先をけって蒼穹のもとの虚空へと飛翔してゆく。蒼白なる天空にて浮游した増長天と毘沙門天は百骸九竅の筋肉を緊張させてたがいの間隙を窺窬した。知盛すなわち毘沙門天の風丰に『間隙』ができた。千載一遇の時宜であった。さきに攻撃したのは景時の増長天である。白銀の剱を背後から天空へとかかげ刹那のうちに毘沙門天の脳天を截断せんとふりおろした。無論毘沙門天もむざむざころされるわけにはゆかない。毘沙門天は彊梁なる宝棒を横向きにかかげて増長天の剱をうけた。宝棒と剱の衝突により界隈にまで翡翠色の雷霆がきらめく。増長天としても予測済みのことであった。たがいに右腕の自由がきかぬ状態で増長天はひだりの鉄拳を毘沙門天の腹腔にたたきつけた。毘沙門天の堅韌なる甲冑すらもつきやぶって増長天の鉄拳は毘沙門天の腹部につきささる。毘沙門天の肉体は剔抉され五臓六腑が露呈される。毘沙門天は口腔から血反吐をはき剱を宝棒で防禦している右手の膂力がゆるむ。毘沙門天の腹腔から鉄拳をぬいた増長天はいまいちど白銀の剱をふりかざして毘沙門天の脳天をかちわらんとする。勝目あり。これが油断となった。毘沙門天は邃古の呪文を読誦し霊験あらたかなる左手の宝塔により増長天のまわりを囲繞し廻転する火焰の颱風をつくりだした。増長天は刹那のうちに視界がさえぎられいきおいあまってふりおろした剱も眼前の火焰をきりさくのみであった。火焰のむこうがわに毘沙門天はいない。景時はさとった。これが『敗衄』なるものかと。予想どおりに増長天の背後の火焰の絶壁をうちはらって毘沙門天の宝棒が増長天の脳天を打撃した。増長天を操縦する景時は増長天とたましいがつながっているがゆえに増長天とともに意識を喪失する。増長天の肉体はふたたび半透明の文字列となって熄滅され景時は壇ノ浦の穹窿から自分の櫓櫂船へと墜落していった。
平家方の水軍からは澎湃たる鬨があがる。
黎明のたたかいは平家方の圧勝となった。
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