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小説家文章力ランキング~世阿弥の九位と世界文學
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個人的に、世阿弥が藝のレベルを九段階に分類した『九位』という概念に興味をもっていた。これで、文學作品も評価できるのではないかとおもったのである。九位は、『論外』とされる鹿鉛風から、強鹿風、強細風、浅文風、広精風、正花風、閑花風、寵深花風、妙花風までに分類され、広辞苑に簡略な説明がある。
以下、各段階の説明とともに、無知蒙昧ながら、愚生が髣髴する作家、および作品群を臚列したい。今回は、あくまでも『文軆』『文章力』のみを基準に品隲したにすぎないので御注意いただきたい。
◇
【第九位 あらくなまった『鹿鉛風』は論外である。】
――代表的作品
ブコウスキー『パルプ』
愚生九頭龍一鬼全作品
――コメント
ブコウスキーは、躬自ら『最悪の文軆』を目指していたと標榜していたはずなので、寧ろ、此処に列挙されることは光栄であろうと判断した。愚生自身は『讀みやすく美しい』文軆、畢竟、装飾体と平明体の止揚的文軆を追窮した結果こんなになった。
【第八位 強くあらい『強鹿風』も論外である。】
――代表的作品
セリーヌ『夜の果てへの旅』『なしくずしの死』
――コメント
セリーヌは判断がむずかしい。反藝術としての藝術だからだ。大江がセリーヌを讀んで『此処に一般国民の文軆があった』と感動したらしいが、一見、藝術的には論外な、一般国民の文章にも価値をみいだしたところに価値があると判断する。
【第七位 強い中にこまやかな『強細風』も目標ではない。】
――代表的作品
サド『美徳の不幸』『悪徳の栄え』『ソドム百二十日』
サルトル『嘔吐』
大江健三郎『万延元年のフットボール』
フォークナー『八月の光』『サンクチュアリ』
ガルシア=マルケス『百年の孤独』
中上健次『枯木灘』
――コメント
サドは澁澤訳では美文だが、原文は悪文で有名なので、他者の訳もふくめると、矢張りこのあたりかとおもわれる。サルトルと大江の文軆が類似することはいわずもがなとおもわれるので、此方にまとめる。フォークナーは『響きと怒り』においては『是非善悪をこえて自由自在な藝風を示す藝境』である寵深花風にあたるかとおもわれるが、基本的に悪文である。フォークナーに私淑したガルシア=マルケスや中上健次も此処にあげる。其其のファンには失礼だとおもったが、愚生は斯様な悪文もだいすきである。ゆゑに御容赦いただきたい。
【第六位 初学者は芸歴の浅さの中に美を示す『浅文風』を志すべき。】
――代表的作品
プルースト『失われた時を求めて』
メルヴィル『白鯨』
三島由紀夫『豊饒の海』四部作
――コメント
プルーストやメルヴィルや三島が浅文風だというと激昂されそうだが、ロラン・バルトのいうところの仏蘭西革命的エクリチュールとは、総体的に、装飾に耽溺しているところがあり、『多彩を洗い去った物静かな美を示す』閑花風にはあたらないと判断した。寧ろ、このあたりをみると、九位で文學を評価するのに無理があることが証明されかねない。
【第五位 物まねなどを体得して『広精風』に上る。】
――代表的作品
クノー『文体練習』
――コメント
クノーは『是非善悪をこえて自由自在な藝風を示す藝境』である寵深花風に分類されるかともおもう。読者諸賢の慧眼に判断をゆだねたい。
【第四位 観客の感動を呼ぶ正しい花を開く『正花風』で藝が安定する。】
――代表的作品
バルザック『人間喜劇』作品群
トルストイ『戦争と平和』
ヘッセ『車輪の下』
森鴎外「山椒大夫」「高瀬舟」
――コメント
鴎外は平明体で書かれた短篇二篇をえらんだ。個人的に、鴎外の最高傑作は「阿部一族」だとおもっているが、こちらは、愚生と同様、装飾体と平明体との融合、つまり、『難読語をもちいながら修辞法はつかわない』という倒錯的文軆で、第九位『鹿鉛風』か第八位『強鹿風』にあたるとおもわれる。デビュー爾時の文語体は美文だが、三島らと同様の理由で、第六位『浅文風』にあたるだろう。其処で、九位の定義ではもっとも高位である『正花風』に臚列しておく。
【第三位 『閑花風』は多彩を洗い去った物静かな美を示す藝境】
――代表的作品
ジョイス『ダブリン市民』
【第二位 『寵深花風』は是非善悪をこえて自由自在な藝風を示す藝境】
――代表的作品
ジョイス『ユリシーズ』
【第一位 『妙花風』はどこがよいと指摘できない言語を絶した美を示す藝境】
――代表的作品
ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』
◇
斯様に列挙すると、ジョイスの作品群が、見事に、発表順に上位三段階をかけあがっていることがわかる。論理的に、これをもって、九位による文學論が証明されるとはいえないが、読者諸賢の参考になればとおもう。
以下、各段階の説明とともに、無知蒙昧ながら、愚生が髣髴する作家、および作品群を臚列したい。今回は、あくまでも『文軆』『文章力』のみを基準に品隲したにすぎないので御注意いただきたい。
◇
【第九位 あらくなまった『鹿鉛風』は論外である。】
――代表的作品
ブコウスキー『パルプ』
愚生九頭龍一鬼全作品
――コメント
ブコウスキーは、躬自ら『最悪の文軆』を目指していたと標榜していたはずなので、寧ろ、此処に列挙されることは光栄であろうと判断した。愚生自身は『讀みやすく美しい』文軆、畢竟、装飾体と平明体の止揚的文軆を追窮した結果こんなになった。
【第八位 強くあらい『強鹿風』も論外である。】
――代表的作品
セリーヌ『夜の果てへの旅』『なしくずしの死』
――コメント
セリーヌは判断がむずかしい。反藝術としての藝術だからだ。大江がセリーヌを讀んで『此処に一般国民の文軆があった』と感動したらしいが、一見、藝術的には論外な、一般国民の文章にも価値をみいだしたところに価値があると判断する。
【第七位 強い中にこまやかな『強細風』も目標ではない。】
――代表的作品
サド『美徳の不幸』『悪徳の栄え』『ソドム百二十日』
サルトル『嘔吐』
大江健三郎『万延元年のフットボール』
フォークナー『八月の光』『サンクチュアリ』
ガルシア=マルケス『百年の孤独』
中上健次『枯木灘』
――コメント
サドは澁澤訳では美文だが、原文は悪文で有名なので、他者の訳もふくめると、矢張りこのあたりかとおもわれる。サルトルと大江の文軆が類似することはいわずもがなとおもわれるので、此方にまとめる。フォークナーは『響きと怒り』においては『是非善悪をこえて自由自在な藝風を示す藝境』である寵深花風にあたるかとおもわれるが、基本的に悪文である。フォークナーに私淑したガルシア=マルケスや中上健次も此処にあげる。其其のファンには失礼だとおもったが、愚生は斯様な悪文もだいすきである。ゆゑに御容赦いただきたい。
【第六位 初学者は芸歴の浅さの中に美を示す『浅文風』を志すべき。】
――代表的作品
プルースト『失われた時を求めて』
メルヴィル『白鯨』
三島由紀夫『豊饒の海』四部作
――コメント
プルーストやメルヴィルや三島が浅文風だというと激昂されそうだが、ロラン・バルトのいうところの仏蘭西革命的エクリチュールとは、総体的に、装飾に耽溺しているところがあり、『多彩を洗い去った物静かな美を示す』閑花風にはあたらないと判断した。寧ろ、このあたりをみると、九位で文學を評価するのに無理があることが証明されかねない。
【第五位 物まねなどを体得して『広精風』に上る。】
――代表的作品
クノー『文体練習』
――コメント
クノーは『是非善悪をこえて自由自在な藝風を示す藝境』である寵深花風に分類されるかともおもう。読者諸賢の慧眼に判断をゆだねたい。
【第四位 観客の感動を呼ぶ正しい花を開く『正花風』で藝が安定する。】
――代表的作品
バルザック『人間喜劇』作品群
トルストイ『戦争と平和』
ヘッセ『車輪の下』
森鴎外「山椒大夫」「高瀬舟」
――コメント
鴎外は平明体で書かれた短篇二篇をえらんだ。個人的に、鴎外の最高傑作は「阿部一族」だとおもっているが、こちらは、愚生と同様、装飾体と平明体との融合、つまり、『難読語をもちいながら修辞法はつかわない』という倒錯的文軆で、第九位『鹿鉛風』か第八位『強鹿風』にあたるとおもわれる。デビュー爾時の文語体は美文だが、三島らと同様の理由で、第六位『浅文風』にあたるだろう。其処で、九位の定義ではもっとも高位である『正花風』に臚列しておく。
【第三位 『閑花風』は多彩を洗い去った物静かな美を示す藝境】
――代表的作品
ジョイス『ダブリン市民』
【第二位 『寵深花風』は是非善悪をこえて自由自在な藝風を示す藝境】
――代表的作品
ジョイス『ユリシーズ』
【第一位 『妙花風』はどこがよいと指摘できない言語を絶した美を示す藝境】
――代表的作品
ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』
◇
斯様に列挙すると、ジョイスの作品群が、見事に、発表順に上位三段階をかけあがっていることがわかる。論理的に、これをもって、九位による文學論が証明されるとはいえないが、読者諸賢の参考になればとおもう。
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