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第二十話
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薬師如来は奇蹟をおこされた。
それぞれ右手に刀剣や薙刀をおもちになられた十二神将たちが左手の錫杖をかかげて空中につきたてると虚空にて鏗鏘として金属音が響動めいた。薬師如来が莞爾としておっしゃる。『爾らはいのちをたつとしとするものなり。爾らの希求にもとづき釈迦如来は『奇蹟』を容赦したり。ゆゑに爾らいのちをこそ大事にするべけれ』と。造次顛沛もなく松島湾から幾千の半透明の『球体』が浮游してきた。琳瑯たる『球体』は螺旋状の摩訶般若心経の文字列でできていた。般若心経の球体はゆらめきながらそれぞれの『遺族』のまえへと翺翔してくる。喫驚している遺族たちのもとに逢着すると般若心経の文字列は果敢無く消滅しそこに『犠牲者』たちがあらわれた。遺族たちは勿論界隈で『奇蹟』を目撃していた研究員たちやTVクルーのみならず敬虔なる僧侶たちも驚愕の顔貌となっていた。儵忽として蘇生された死者たちはみな茫然と界隈を見霽かしている。然様な状況で九頭龍かなえは蘇生された『九頭龍一鬼』くんを抱擁し号泣した。いわく「一鬼おかえりなさい。卒園おめでとう。みんなと一緒に学校にいこうね」と。九頭龍かなえの咆哮を切掛としてほかの遺族たちも蘇生された死者たちと交歓しはじめた。斯様なる状況で『β型システム』の情報を瀏覧していた研究員のひとりが金城浩樹に囁嚅した。いわく「これは『新種の素粒子』です。無我和尚の神経伝達物質の発火が『新種の素粒子』を観測したのだとおもわれます」と。跼天蹐地たる顔貌の金城浩樹はふたたび穹窿を仰視した。おれは負けたのか。おれは『真実』にふれたのか。
すでに薬師如来も十二神将もみえなかった。
公園では無我和尚がなおも般若心経をとなえていた。
それぞれ右手に刀剣や薙刀をおもちになられた十二神将たちが左手の錫杖をかかげて空中につきたてると虚空にて鏗鏘として金属音が響動めいた。薬師如来が莞爾としておっしゃる。『爾らはいのちをたつとしとするものなり。爾らの希求にもとづき釈迦如来は『奇蹟』を容赦したり。ゆゑに爾らいのちをこそ大事にするべけれ』と。造次顛沛もなく松島湾から幾千の半透明の『球体』が浮游してきた。琳瑯たる『球体』は螺旋状の摩訶般若心経の文字列でできていた。般若心経の球体はゆらめきながらそれぞれの『遺族』のまえへと翺翔してくる。喫驚している遺族たちのもとに逢着すると般若心経の文字列は果敢無く消滅しそこに『犠牲者』たちがあらわれた。遺族たちは勿論界隈で『奇蹟』を目撃していた研究員たちやTVクルーのみならず敬虔なる僧侶たちも驚愕の顔貌となっていた。儵忽として蘇生された死者たちはみな茫然と界隈を見霽かしている。然様な状況で九頭龍かなえは蘇生された『九頭龍一鬼』くんを抱擁し号泣した。いわく「一鬼おかえりなさい。卒園おめでとう。みんなと一緒に学校にいこうね」と。九頭龍かなえの咆哮を切掛としてほかの遺族たちも蘇生された死者たちと交歓しはじめた。斯様なる状況で『β型システム』の情報を瀏覧していた研究員のひとりが金城浩樹に囁嚅した。いわく「これは『新種の素粒子』です。無我和尚の神経伝達物質の発火が『新種の素粒子』を観測したのだとおもわれます」と。跼天蹐地たる顔貌の金城浩樹はふたたび穹窿を仰視した。おれは負けたのか。おれは『真実』にふれたのか。
すでに薬師如来も十二神将もみえなかった。
公園では無我和尚がなおも般若心経をとなえていた。
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