『奇-KISEKI-蹟』中篇小説

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

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第十九話

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なんじのねがいはかなえられた』と。
 金城は喫驚する。そんな破家な。これが『真実』なのか。はくいろたそがれどきをむかえたあいたいたるむらくもからすい色のこうぼうがさしてきた。刹那にして松島かいわいにはいんうんたる薫風がそよぎはじめふくいくたるけいこうがたちのぼり殺伐たる枯木の風景にばんのさくらがさきはじめた。しゆんぷうたいとうとなった公園にてぼうぜんしつとしてきゆう窿りゆうを仰視しながら金城たちは目撃した。扇状にふくしやしたすい色のこうぼうのなかから人かげうきぼりになっていった。全十三体が確認される。けんらんごうなる十二柱の『十二神将』があらわれたかとおもうとごうしやなる十二神将たちの中枢に巨大なる人間のふうぼうめいちようとなっていった。げんぼくなる白布を一枚まとっただけでけつをなされ左手に薬つぼをおもちになり右手で『印』をむすばれモンゴロイド特有のきれながの『まぶち』をもちかんとして微笑していらっしゃる。あつにとられていたTVクルーのなかでくだんのキャスターがけいれんする右手でマイクを掌握しTVカメラへとむかって絶叫する。「日本全国。いや。世界全土のみなさん。御覧ください。現在日本ではせきがおこっています。本統に仏様が御降臨なされました」と。つづいてクルーに随伴してきた宗教学者にマイクをむける。宗教学者は興奮うつぼつとしていう。「あれは薬師如来ですね。本来仏教という宗教は一切皆苦の現世において十二因縁から解脱して二度とりん転生しないつまり極楽浄土へと昇天することを目的とするのでしや如来や如来は一切衆生を極楽へときようどうするための仏様であるわけです。ところが薬師寺如来は『東方浄瑠璃界』つまりこの世での苦悩を治癒してくれる仏様であって『現世利益』を約束してくれるわけです。あの薬つぼが象徴するように薬師如来は医学の仏様であって――」
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