『奇-KISEKI-蹟』中篇小説

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

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第七話

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 そこでわたくしは『神』について勉強いたしました。 
 神は全知全能であり人類を愛していらっしゃる。がときに大洪水をおこしときに酒池肉林の国家をせんめつし最終的には人間を審判して世界を破滅なさるというのです。いつだんらんの家庭を喪失しいんいんめつめつたる感慨であったわたくしはおもいました。『神のせいだ。神のせいでわたしの家族は死んだんだ』と。しなことに当時のわたくしはそれでも『神』をしんじていたのです。やがて『神を憎悪』しながらわたくしはこうをしのぐためにくだんの教会のオルガン弾きにならんとけついたしました。満足なる教育も享受できなかったわたくしはげいをみがいて生活するしかありませんでした。某日のに教会で『主よ人の望みの喜びよ』を弾いていたときでした。めいていした浮浪者が一冊のペーパーバックをかかげて教会にちんにゆうしてきた。とおもったらこんなふうにさけんだのです。『ツァラトゥストラはおっしゃった。神は死んだのだと』と。わたくしは衝撃をうけながらオルガンを弾きつづけました。『神は死んだのだ』。なんてうつくしい言葉でしょう。がおわるとわたくしは教会のかいわいで泥酔していたくだんの浮浪者をみつけていんの言葉がニーチェの著作にごうしてあるとしりました。わたくしはらい図書館にかよって『無神論』者の著作をぎよろうすることになりました。ニーチェをへきとうとしてサルトルやカミュやのちにはドーキンスといったばんきんの著作までしようりよういたしました。天動説が地動説にはいじくした瞬間でした。『神は存在しない』『天国も地獄も存在しない』『『聖書』はたらだ』。なぜこれほど単純明快なる真実に気付かなかったのでしょうか。真実のらいていをうけたわたくしは教会からとんざんしてマンハッタンのレストランの皿洗いをはじめました。わたくしは四十年間真面目に皿をあらいつづけたのです。わたくしはしあわせでした。
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