『神々の黄昏』中篇小説

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

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第三十五話

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 ミカエルは激痛のがんぼうで絶叫する。
 操縦者のトヨヒコ・カガワも左腕を喪失したはずだ。金城大尉の微衷をれきするかたちでスサノオノミコトもえんのこえをあげる。「はずしたか」と。この一撃でミカエルをせんめつするはずだったのだ。作戦が失敗しふたたびえいごうつつやみになった世界にて一瞬のらいていで位置関係をしつしたウリエルが複雑怪奇にしようしたらしく大地よりうまれた聖剣でツクヨミの肉体を切りにした。ふたたびたいふう状に暗闇が渦巻き世界はさんらんたる太陽のもとに可視化される。ツクヨミはどくしようを断絶されてぼうたる鮮血をながしながら太平洋に墜落してゆく。へんぽんとして作戦を変更したタヂカラオは御名どおりのりよりよくと怪力でウリエルを羽交い締めにしウリエルのとうわしづかみにしへしおった。ウリエルもまた無力にも太平洋に墜落してゆく。タヂカラオが力戦している最中ふうと治癒の天使であるラファエルは左手の薬草の霊威によって上官ミカエルの左腕のそうを治癒した。ラファエルの治癒能力があっては不利だとさとったのかタヂカラオは臨機応変にラファエルをがんがらめにして脊椎をせつだんする。同時に生成と水の天使であるガブリエルがれんえんたる太平洋のとうをあやつり竜巻状の洪水にしてラファエルのきがらもろともタヂカラオを溺死させ太平洋のくずとならしめた。しゆつこつとして激怒したタケミカヅチは自家薬籠中のものであるらいていでガブリエルの心臓を一撃にした。そこに『隙』ができた。いつしかガブリエルのかげにかくれていたミカエルが白銀のやりでタケミカヅチの心臓をつらぬいたのである。ようにして最後にミカエルとスサノオがのこった。スサノオはさけぶ。「大明神様全日本人のみなさん。不肖金城がかならず『道』をひらきます」と。ミカエルはつづけてする。「邪宗のものどもよ。この賀川とよひこが『死線』を越えさせんぞ」と。そうきゆうにてミカエルとスサノオはおたがいの一瞬の『隙』をねらうために沈黙した。一分がたった。十分がたった。三十分がたった。三十三分がたったである。スサノオとミカエルは同時に光速と同等のじんさで二重せんをえがいてしようし脳天からふくはぎまでの筋肉を緊張させて意識を相手の一挙手一投足に集中させつるぎで斬ってやりでつらぬいて戦い戦ってつるぎやりでおたがいの心臓をつらぬいた。二柱の神と天使は抱擁しあうこいびとたちとおなじかたちでおたがいのしつこくとなったまま無涯無辺の太平洋へと墜落していった――。
 かみがみは死んだ。
 のこるはりゆう大明神ととの決戦である。
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