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第二十七話
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『最後のニュース』はつづいた。
最後の朝餉の途中だったが粗糙なるラジオの放送を静聴した金城しのぶと義母は廼時に襤褸襤褸の茶碗を卓袱台におき「御馳走様でした」と両手を合わせた。時刻は黎明六時五十分ほどである。金城しのぶと義母は朝餉の後片付けすらできずに廼時に『魂魄接続』の準備をはじめた。觳觫たる金城しのぶはまず居間の吉方にかざられた神棚のまえに彳亍し二礼二拍手一礼して祈禱した。「九頭龍大明神様。どうか日本神國をお救いください」と。つづいて莞爾たる義母とともに座布団すらしいていない黒褐色の畳のうえに正座した。金城しのぶは防國婦人会用の割烹着をはだけて腹部の『接続機関』をあらわにする。義母は『もんぺ』の上部を脱いでおなじく『接続機関』を露呈した。ふたりは鏃状の電極を左脇腹に挿入する。金城しのぶはいう。「お義母さん。わたしはこの家に嫁げて幸せでした」と。義母はいう。「なにを今生の別れみてえなこというがあてえ。魂は永遠らっけんのう」と。ラジオからこえがひびく。『全国民『魂魄接続』マデ十秒ナリ 五 四 三 二 一 神州日本ニ永遠ノ栄光アレ』と。
爾時時報が響動めいた。
全日本国民は『ハラキリ』をした。
最後の朝餉の途中だったが粗糙なるラジオの放送を静聴した金城しのぶと義母は廼時に襤褸襤褸の茶碗を卓袱台におき「御馳走様でした」と両手を合わせた。時刻は黎明六時五十分ほどである。金城しのぶと義母は朝餉の後片付けすらできずに廼時に『魂魄接続』の準備をはじめた。觳觫たる金城しのぶはまず居間の吉方にかざられた神棚のまえに彳亍し二礼二拍手一礼して祈禱した。「九頭龍大明神様。どうか日本神國をお救いください」と。つづいて莞爾たる義母とともに座布団すらしいていない黒褐色の畳のうえに正座した。金城しのぶは防國婦人会用の割烹着をはだけて腹部の『接続機関』をあらわにする。義母は『もんぺ』の上部を脱いでおなじく『接続機関』を露呈した。ふたりは鏃状の電極を左脇腹に挿入する。金城しのぶはいう。「お義母さん。わたしはこの家に嫁げて幸せでした」と。義母はいう。「なにを今生の別れみてえなこというがあてえ。魂は永遠らっけんのう」と。ラジオからこえがひびく。『全国民『魂魄接続』マデ十秒ナリ 五 四 三 二 一 神州日本ニ永遠ノ栄光アレ』と。
爾時時報が響動めいた。
全日本国民は『ハラキリ』をした。
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