『神々の黄昏』中篇小説

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

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第二十五話

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 一粒も残してはなるまい。
 といえども元来の治療もあたわずにいる義母は「しのぶさん。おれのもおたべ」といい金城しのぶに神の白米を喰らわせようとする。金城しのぶは「ありがとうございます」といいひびれた義母のちやわんを頂戴する。しのぶはせいひつきよしながら白米をいただく。かんとして義母はいう。「最後の御飯らっていうのにひろさんがいんねえなんてのう」と。金城しのぶはしばらく沈黙してしようじゆする。「ひろは『親衛隊』としてわたしたちをまもってくれるそうです。これほど名誉なことはありません」と。かんたる義母は白米をしやくしながらいった。「なんらって。しのぶさん」と。金城しのぶはまたしばらく沈黙してつぶやいた。「なんでもありません。お義母さん」と。しゆつこつとして義母は真摯ながんぼうになりこたえた。「なんでもないことなんかねえろう。おれたちがたすかっても実の息子は死ぬかもしんねえがっけん」と。
 金城しのぶは泣いた。
 ほうはいとして号泣しはじめた。
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