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第十六話
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金城浩樹は死のうとする。
金城大尉はここで死ぬはずだった。
金城の走馬燈はやがて颱風状に消滅してゆき黯黮たる暗黒がおとずれる。そうかおれは死ぬのか。神州日本どころか家族もまもれずに死ぬのか。漆黒の惣闇のなかで澎湃たる嘔吐感をもよおす。やがて茫邈たる世界の最涯てから幻聴らしいこえがきこえてきた。「浩樹。浩樹。浩樹――」と。恁麼のこえも惣闇が白銀の虚無に変貌してゆくなかで神韻縹渺たる沈黙にかわってゆく。明鬯たる斃仆をさとった刹那金城浩樹は韓紅の鮮血を嘔吐して覚醒した。朦朧とした視界が天空のアマテラスオオミカミ畢竟太陽の光明によって廼時に闡明されてゆき怵惕惻隠する表情の実母と莞爾たる顔貌の祖母のすがたがみえた。金城大尉は喫驚する。ここは極楽浄土か。あるいはイザナミノミコトの幽閉された黄泉の国か。否。見覚えがある。滅茶苦茶に破壊された廃墟となっているがここは故郷である新潟だ。
金城大尉はここで死ぬはずだった。
金城の走馬燈はやがて颱風状に消滅してゆき黯黮たる暗黒がおとずれる。そうかおれは死ぬのか。神州日本どころか家族もまもれずに死ぬのか。漆黒の惣闇のなかで澎湃たる嘔吐感をもよおす。やがて茫邈たる世界の最涯てから幻聴らしいこえがきこえてきた。「浩樹。浩樹。浩樹――」と。恁麼のこえも惣闇が白銀の虚無に変貌してゆくなかで神韻縹渺たる沈黙にかわってゆく。明鬯たる斃仆をさとった刹那金城浩樹は韓紅の鮮血を嘔吐して覚醒した。朦朧とした視界が天空のアマテラスオオミカミ畢竟太陽の光明によって廼時に闡明されてゆき怵惕惻隠する表情の実母と莞爾たる顔貌の祖母のすがたがみえた。金城大尉は喫驚する。ここは極楽浄土か。あるいはイザナミノミコトの幽閉された黄泉の国か。否。見覚えがある。滅茶苦茶に破壊された廃墟となっているがここは故郷である新潟だ。
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