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第一世界 3章 学園編

38,再会と修羅場

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 ふぅ。

 ゴーレムとオートマタ、ホムンクルスについての講義終わり。まぁ個人的には聞いてて楽しい講義だったかな。

 今は朝昼夜以外は勉強するにも他のクラスの友達と喋ったりするのにも自由に使える場所として解放されてる食堂で悠灯とネロと一緒にいる。

 さっきまでは他のクラスメイトとか他のクラスの同級生、先輩達もそこそこいたけど今はその時と比べて数が減ってる。

 だけどこの後は講義の内容を元にレポートをまとめないといけないっていう課題が少し面倒くさいな。まぁ普段からレポートみたいな書類は定期的に書いてるとはいえね。それでも面倒くさいものは面倒くさい。

 一応提出しないといけない期限までの日数はそこそこあるみたいだから放課後にちょこちょこ図書館に行ったりして悠灯とネロの予定が合えば2人と一緒にまとめようかな?

「真緒くんこの後どうする?レポート書く?」

「うーん、どうしよう。ネロは大丈夫?」

「はい、私は大丈夫ですよ」

 2人の予定も空いてるみたいだし今日のうちに進められるだけ進めていこうかな。

「真緒……だよな?」

 そう思って席を立とうとしたら誰かに声をかけられた。どこかで聞いたことがあるような気がするけど一体誰だろう。

 そう思って声のした方に振り向いたらそこに居たのは

「・・・・・・秋?」

 地球にいた頃のクラスメイトで小学校の時からの親友の秋だった。いやぁ。勇者も学園に通ってるって言うのは知ってたけど本当に会うとは。

「やっぱり真緒か。こないだのアナウンスで名前聞いた時にまさかと思ったが何はともあれ再会できて良かったな」

 再会できたのはいいけど森宮さんはどうしたんだろう。地球にいた頃は結構一緒にいるのが多かったけど今は近くに見当たらない。

「再会の挨拶は学園に通ってる間は時間もある事だし後回しにしてと。森宮さんは?珍しく一緒じゃないみたいだけど」

「あぁ。静は一旦いらない荷物を部屋に置いてくるって言って出ていったぞ。ノートと筆記用具だけ持って図書館でレポートやりに戻ってくる」

 それって逆に面倒だと思うんだけど……まぁ本人がいいなら何も言うまいよ。
 てか図書館でレポートやるなら僕達もこの後図書館に行く予定だしもしかしたら森宮さんにも会いそう。

「なるほど、秋はレポート後回し?」

「いや、俺も図書館に行くつもりだぞ。けど静が来るまではここで待ってる」

 ふむ、それなら僕達は先に行ってまとめていようかな。図書館にいれば勝手に来るから挨拶とかはその時にやればいいだろうし。

「じゃあ僕達はレポートやるから先に図書館に行ってる」

「おう、分かった。多分そんなに遅くならないと思うけどな」





 というわけで図書館にやってきたわけだけどかなり広いな。
 蔵書は見た感じだと城の書庫並に貴重なものは無いし同じタイトルの本が複数置いてあるからこそこの規模なんだろうけど広さだけなら城の書庫と同等かそれ以上ありそうだ。

 講習を聞いてからゴーレム、オートマタ、ホムンクルスにちょっと興味が湧いてきたから自作出来そうなのがあったらいつか自作してみたいって思ってたけど、図書館にも思ってたよりも資料が多いからそれを読んだ感じだと卒業するまでにオートマタまでならなんとか作れそう。


 そんなことを考えながらレポートをまとめていたら図書館の扉が開く音がしてそっちを見たらちょうど秋と森宮さんが入ってくるところだった。

 そして秋は入口で周りをキョロキョロと見渡すと僕達を見つけて手を挙げながらこっちに歩いてきた。

「よっ、さっきぶりだな」

「・・・・・・真緒くん?」

 あ、森宮さんもひと目でわかるのね。最後に会った時と比べてちょこちょこ変わってるところあると思うんだけど秋といい森宮さんといいよくひと目でわかるな。

(真緒くん身長もちょっと伸びたくらいしか変わってないと思うよ?)

 む、そう思ってたら悠灯から念話でそんなことを言われた。うーん、確かに身長はなんでか分からないけど少し伸びたけどそれ以外にも目の色が赤くなってるとか色々あると思うんだ?


「森宮さんも久しぶり」

 あと借りてた物を返さないと。ちょうどいいから今渡そう。

「それとこれ、元は王都で買った短剣。落ちてからそこの素材で色々強化して行ったら最終的にこうなった」

 そう言って空間系スキルで作った疑似4次元倉庫から2振りの短剣を取り出す。その時に秋が何かボソッと呟いてたけど聞こえなかったから今は無視。それより渡すのが優先。

「銘は森宮さんの持ってた方を元にしたのがニギミタマで僕のを元にしたのがアラミタマ」

「・・・・・・私でも知ってる単語が出てきた。一応聞いとくけど、この2本って実は神様の二面性を表すような対になってる神器だったりしないよね?」

 さすがは実家が神職なだけあってこの2振りの銘をすぐ思い出した。だけど森宮さんが心配してるようなことは無い。さすがに僕は神器クラスのアイテムを片手間で作れたりはしないからね。

 そういう訳でそのことを森宮さんに言うと、

「ふうん、ならいいけど」

 そう言って短剣の刀身をマジマジと眺めている。その横では秋も一緒になって眺めてる。2人ともレポート書く手が止まってるけどいいのかね。秋は少し眺めたらレポート再開したけど森宮さんは眺めたままだし。ちなみに悠灯とネロは我関せずって感じで2人が来てからもレポートに集中してる。

「てか真緒、今更だけどそこの2人とはどんな関係なんだ?」

「あっ、それは私も気になる」

 短剣を眺めてた2人が今度は悠灯とネロのことで質問してきた。

「あぁ、この2人は━━「自分で自己紹介するよ」」

 そして2人について話そうとしたらその途中で悠灯が遮ってきてそのままネロと一緒に自己紹介を始めた。

「私から自己紹介するね。名前は悠灯、苗字は・・・うーん、多分九條になるのかな?地球で天照大神って言われてたりする神の分霊で真緒くんの彼女の1人だよ」

「ふぇっ!?」

 なんか森宮さんがアワアワしだした。イベントで推しと会ったら推しのファンサが凄かった時のオタクみたい。

「次は私ですね。名前はネロ・フリードリヒです。種族は魔法族で魔国の第1王女でもあります。私もマオさんとは恋人同士です」

 ・・・・・・あれ、ネロそれってまだ色んな人に言ったらダメなんじゃ……

「あっ、このことはお2人以外の人にはまだ言わないでくださいね!」

 そう思ってたらこんなことを言った。しかもてへっ、なんて効果音がつきそうな感じ。うーん、あざと可愛い。

「・・・・・・うちの親友殿、もしかしてバカップルへの道を歩み始めてらっしゃる?」

 あざといネロを眺めてたら秋がそんなこと言ってきたけどそれほぼブーメランだからな?ていうかバカップル度合いではまだお前らの方が上だと思うんだけど。

 地球にいた頃からほぼ常時互いの手の届く範囲にいてイチャついてたしね。

 で、推し成分を過剰摂取したオタクみたいになってた森宮さんは今悠灯に絡まれてる。
 そういえば森宮さん家の神社って主祭神が天照大御神だから今の状況って森宮さんからすれば実家で小さい時からお祈りとかしてた神様が実際に降臨してなんかめちゃくちゃ絡んでくるって感じ?

「うぇへへ、森宮ちゃんかぁいいねぇ~」

 ・・・・・・悠灯、めちゃくちゃ撫でくりまわしてるな。いやまぁ、見た目だけなら同年代っぽい上にこの学園に通ってる今はどっちも同じ制服着てるからパッと見女子同士の戯れにしか見えないけど実年齢考えたら・・・・・・いや、一応分霊ならそんなに歳離れてない?

 まぁそろそろ悠灯を回収しないと。僕は『書類作成』スキルの効果がレポートにも適用されたおかげでサクッと終わらせられたけど悠灯は当然として絡まれてる森宮さんも全然進んでないし。

 そう思って悠灯の方に行こうとしたらちょうど悠灯が独り言を言っていた。

「それにしても、今の時代の人間で裏にも関わってないのにこんなに信仰心が高い子は珍しいねぇ。
最近は神職の家系の子でも神社なんて継がずにいる子も珍しくないのに」

 あぁ、神だからこその考えか。確かにそんなに大きくない神社とかは働いてる人もそこそこ歳いってる気がする。

 まぁ年明けの初詣以外にも旅行客が来たりするような規模の大きいところはまだ例外だけど近所の参拝客とか地域行事の一環としての掃除くらいしか人が来ないレベルのところはそれも仕方ないのかもしれないけど。

「あっ、真緒くん聞いてた?

・・・正直言うと今の時点でうちの末端にいる信仰が足りない神達のほとんどがギリギリ存在を維持できる程度の神格だけをもしもの時のための分霊として高天原に置いて本体は異界に隠れてるからね」

 ・・・・・・まじか。唐突に日本神話の裏事情を知ってしまった。ていうか信仰が足りない神が異界に移るって何となく既知感がある。まぁ異世界が実在するからああいう世界もどこかにあるんでしょ、知らんけど。

 悠灯の話を聞いて少し考え事をしてたらネロが立ち上がってテーブルから離れると小声で誰かと話し始めた。

 チラッと見えたけど念話石で話してるみたいだこの念話石、これでできることは劣化版ケータイ程度だけど高価だから普通は軍で連絡用小型無線機代わりに使う場合とか身分の高い人とそのお付きくらいしかそれを持ってる人はいない。

 だから相手はメリアさんの可能性が1番高いけどどうかな。

「━━━━━━はい、分かりました。まだ帰らないとは思いますけど出来るだけ早く来てくださいね」


 かなり短い時間で通話を終わらせたネロはテーブルに戻るとレポートの続きを再開した。

 そしてそれから少ししてネロのレポートが終わって悠灯達も残り少しのところで図書館の扉が開いた。そこから入ってきたのは僕の予想通りメリアさんだった。横では秋が口を半開きにして漫画とかならポカーンって擬音がつきそうな顔をしている。

 メリアさんって外見だけの時点で地球にいた頃の秋の最推しキャラにほぼ瓜二つレベルで似てるしね。仕方ないね。・・・・・・まぁその横にいる森宮さんがものすごいジト目で見てるのには早く気づけよと思うけど。

 あっ、森宮さんが秋の脛を軽く蹴り出した。そしてそれでようやくジト目に気づいたか。推しに似てて惚けるのはまぁわかるけど付き合い自体森宮さんの方が長いんだからもっと森宮さんの方にも気を配ってくれ……

 時々見せるラブコメ主人公属性が完治しないのは薄々察してるけどそれで森宮さん以外の秋に恋してる女子が増えるのはこのままだと僕が過労死するからその前に自覚しろ。

「真緒くんはもう過労死とは無縁になってると思うんだけど……極論睡眠もそろそろ必須じゃ無くなってくるよ?」

 そう思ってたら悠灯から突然爆弾発言が飛び出した。・・・・・・まぁ僕って一応神格持ちな上に種族は吸血鬼だし?それに加えて不死の王なんて字面的にアレな称号もあるから普通の理由で死ぬのかなって思わなかったわけじゃないけどいやぁ、まじかぁ……

 ていうか悠灯サラッと後々睡眠も必須じゃ無くなるって言ってたけど地球にいた頃と比べたら考えられないな。

「いっ、なんだよ静・・・・・・ヒェッ!?」

 あっ、森宮さん笑顔で苛立っておられる。おいおい、死んだわあいつ。
 触らぬ神に祟りなしってことで近寄らないでおこう。なんか森宮さんの後ろに巫女服と白装束を足して2で割ったような服を着た角が生えた女の人みたいな何かが見えるし。

 まぁ、うん、真横からジト目くらってるのにチラチラ見続けてたのが原因だろうから秋が悪いってことで。

「一緒にいるのに初めて見た人に一目惚れみたいな反応されると嫉妬くらいするんだからね」




 メリアさんが合流してから秋が軽く修羅場りかけた後は秋と森宮さんの2人に週末にあるらしいクラス会という名の定例会みたいなやつに誘われた以外は特に何も無く、悠灯とネロもレポートは終わらせれたみたいだった。
 レポートの残りは秋と森宮さんは残り少し、メリアさんは1番最後に来たのに残り半分切ってるあたり能力の高さがよくわかる。

 それにしても、クラス会、ねぇ。正直そこまで参加することにモチベーションがあるわけじゃないけど、秋達曰くアイリス様もいるらしいから顔見せと挨拶を兼ねて一応参加してみるか。

 地球の方のクラスメイトがどれだけ無事かも気になるし。



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