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第一世界 3章 学園編
37,決闘2戦目と特別講義
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決闘場の修復が終わってこの後は僕とキールヴァンの番になった。まずは『神眼』であいつのステータスを見てみよう。
name:キールヴァン・クリンゼン
種族:魔法族
mainjob:魔導士
subjob:槍使い
種族Lv:23
体力 C
魔力 B
筋力 D
知力 C
ふむ、魔導士兼槍使いか。そしてステータスは魔力型。ステータスのランクは同レベル帯での相対値と本人の能力から算出されるらしいから同レベル帯では優秀な方か。まぁ僕達召喚された異世界人は補正がかかるからこの考え方の例外だけど。
そんな風に思ってたら審判の合図で決闘が始まった。
「闇よ、炎よ、混じり合い槍となれ『黒炎槍』!」
キールヴァンは決闘開始と同時に4本の槍を魔法で作りだした。それは炎と闇の2属性、何気にこの世界基準では魔法を使う人にとって中難度以上の行為。
人格とかは置いといて能力自体はやっぱり優秀なんじゃないかな。まぁその魔法は僕には全く効かないわけだけど。
「『万蝕之龍皇』」
発動した『万蝕之龍皇』から生み出した泥と液体の間のような粘性の物質で龍の頭を模したもの作りそれで魔法を喰らった。
「纏い、喰らえ『煉獄顎』」
さらに龍の頭を作った物体で制服の上から体を覆い、ロングコートのように形を変えた。それから体の周りにさっき魔法を喰らったのと同じものを展開、さらにそれに紫灰色の炎を上乗せする。結果生まれるのは炎を纏ったあらゆるものを喰らう龍の顎。
「━━━っクソッ!!『詠唱破棄』『連続装填・黒炎槍』!!」
それを見てキールヴァンは最初に使ってきた魔法を4発から一気に16発に増やして同時に撃ってきた。
数も多く詠唱も破棄しているから隙も少ない。相当優秀なことが分かる。だが無意味だ。
「解体、圧縮、形成━━『破蝕ノ剣』」
龍の顎を1度解体して右手のひらに圧縮、そして形を剣状に整える。その結果生まれるのは装飾や色の派手さの無いドロドロとした剣の形をした鈍器とも言えるような何か。
それをキールヴァンが放った16発の魔法が着弾するタイミングに合わせて横薙ぎに振るうと剣の軌道上に射線が被る魔法と剣に直接当たった魔法の全てが一瞬にして空気中に解けるように消えた。
「なっ!?」
そしてそれを見たキールヴァンは驚きで動きを止めた。当たり前だけど間抜けな隙を晒した相手を咎めない理由は無い。
「闇よ、炎よ、混じり合いて螺旋を描け『黒炎螺旋槍』」
『黒炎槍』より込められた魔力が多く、さらにその規模も大きい渦巻く黒い炎の槍。それが僕に向かって放たれた。
「『魔力武器化』水氷複合『群青刀』」
それに対するは水と氷の魔力を合わせて作り出したひと振りの刀。刀身の先端と触れている地面が凍りつき始めている。
「『六柱氷壁』」
火精蜥蜴をその炎ごと斬り凍りつかせたその刀を逆手に持ち地面に突き刺すと周囲を覆うように6本の氷柱が生えさらにそれぞれを繋ぐように氷の壁が立つ。
出来上がった氷柱壁に渦巻く黒炎の槍が突き刺さる。その炎によって氷が溶けるもそれは瞬時に修復され溶けて刺さった槍を押し返す。さらに押し返された槍は接触している箇所から徐々に凍りつき始め末端までそれが進むと砕け散った。
さてと、ここら辺で決めに行くとしようか。
「『風束ねて嵐と成し、雷集いて核雷と成す』」
右手を前に伸ばしその周りに風と雷を纏わせ、それを合わせた物を圧縮して槍のような形に変化させる。
「『其は万物を焼き尽くす終末の火』」
それを腕を上げ、空に向けて撃ち放ち圧縮状態を解除することで炎と雷を内包した球状の嵐を作り出した。
「『天よその弓に矢を番え、地に向けその弦を引け』」
嵐は半月状に形を変え放った槍と同じサイズのものが矢として番えられた。
「『天より下りて地を焼き尽くす破滅の矢』」
そして手を振り下ろすとそれに合わせて矢が放たれる。
「『灼嵐之天弓・破浄之地矢』」
放たれた槍程の大きさの矢は真っ直ぐ地面に当たり嵐とそこに内包する雷を周囲に向けて解放した。暴風によって土煙が生まれその中から火炎と雷撃が相手を襲うという直撃しなくても周囲に大きな被害が出そうなこの魔法。さすがにこれで終わったでしょ。
そう思っていたら、
「『黒炎砲』!!」
生まれた土煙が晴れる直前、煙の奥から黒い炎が僕に向かって一直線に放たれた。それに対して僕の手はこれだ。
「『炎天下』」
このこっちの太陽神からの特典であるこのスキル。その性能はまだ正式に神になってない僕が使っても概念クラスに片足突っ込んでるレベル。控えめに言って世界のパワーバランスが壊れそう。
さすがに常時太陽と同じ熱さの炎ってわけじゃないけど温度を上げようと思えば鉄が蒸発するくらいまでは簡単に上げられる。
『炎天下』で生み出した炎を纏わせたままの腕を前に突き出し黒炎に対してその炎を放つ。それは一切の抵抗なく黒炎を飲み込み、それを終えると炎は黒炎に向けて放つ前と同じように腕の周りに再び纏われた。
「で、まだやるか?」
放ち終え手元に戻った炎を棒状に圧縮し、その状態でキールヴァンにある程度熱が届く距離まで突きつける。ほぼゼロ距離まで近づけたらその部分が炭化しそうだしね。
「ぐ・・・・・・こ、降参する」
それじゃこれで終わりか。まぁ炎の塊を押し付けられてるわけだけだから普通は諦めるか。僕みたいなぶっ飛んだ再生力かこの熱量を至近距離で受けても即死しない耐久力、あるいはその両方があれば『炎天下』を無視出来そうだけど。
今回の決闘は時間だけを求めるなら初手『炎天下』で焼却するのが最適解だったろうけどそれをすると敵判定ならとりあえず殺すって選択が増えそうだからさすがに自重した。
「真緒くんお疲れ様」
入ってきた方から戻ると悠灯が待っていた。凄いニコニコしてるな、可愛い。この後はネロの方にも行かなきゃ。面倒そうな後始末は用事が済むまで生徒会に任せておこう。
後始末を全て投げ出してネロのところに着くとちょうど僕達の方に走って来ていたネロが途中からゆっくり歩いて来て僕の前まで来ると倒れ込んで来た。
何も言わずにそのまま抱きしめてきた。だから僕の方も抱き締め返して軽く頭を撫でた。
「ネロ、帰ろっか」
決闘が終わって帰って来た。今は悠灯とネロの2人と一緒に『万物創造』で一時的に創れる異空間の中にいる。
この異空間の維持は今みたいにほとんど何もしないまま3人でいるだけでも数時間が限界で戦闘訓練だったり人数増やしたりしてリソースの使い先が増えると一気に維持出来る時間が短くなるから正直いってあんまり使い勝手は良くない。
だけど今みたいにネロに膝枕されてる状態はこうでもしないと学園に通ってる間はほぼ無理だからね仕方ないね。
ちなみにこの膝枕はネロの要望だから一応従者でもある僕には断れないわけで。まぁ今回みたいなのは僕の役得が大きいから嫌なわけじゃないんだけどね。
「ネロ、交代する?」
「ん、はい」
ネロに膝枕されていた状態から今度は交代して逆に僕がネロを膝枕する。そうしてる間の悠灯は僕の背中にもたれかかってどこから取り出したのかわからない本を読んでる。
そろそろ維持出来る時間が限界に近づいてきたな。2人に言って今日はここまでにしよう。
「今日はここまでかな。それじゃあ2人とも、また明日学園で」
「うん、真緒くんまた明日ね。おやすみ」
「マオさんおやすみなさい」
「2人ともおやすみ」
悠灯とネロの2人と別れて自室に帰還したわけだけど、ぶっちゃけやることは昨日の夜と変わらないんだよなぁ。ご飯作って風呂貯めて、克墨と剋久夜の3人でご飯食べて寝る。そして朝起きたら準備を済ませてまた学校。うん、癒しがある分全然マシだ。
さてと、今日の夕飯は何を作ろうか。異世界産食材で作る地球料理擬きか異世界産食材で作る純異世界料理か。個人的にはパスタ、特にカルボナーラが食べたいけどスパゲティとペペロンチーノに似たパスタはあるのにカルボナーラは無いからなぁ。
パスタさえ茹でればサクッと作れるインスタントソースが恋しい。とりあえずミートスパゲティ作ったけどやっぱり食べ慣れてるのと若干違う。
はぁ、やっぱりパスタは作るの楽だしバリエーションもそこそこ多い優秀だわ。パスタ最強。コスパも最強。
朝ごはんはパンとベーコンと目玉焼きのテンプレセット。こっちに来てから朝も結構食べるようになった気がする。
食べ終わったらそのまま教室に行った。そして教室に入ると僕とジークと決闘したキールヴァンとその取り巻き2人とケーニッヒの机は無くなっていた。
4人消えたからクラスの係分担のうち保健委員、図書委員、学習委員、選挙管理委員の人数が減って1人ずつになった。
あと朝礼前に入ってきた担任から決闘の掛け金は明後日までに払われるって聞いたから払われたら悠灯とかネロと一緒に夜ご飯食べに行こうかな。
そして今日の授業はいつもの座学に加えて3限目にゴーレム講義なるものがあるみたい。
「ねぇ、昨日の決闘で使った炎の剣。あれ太陽に類するものよね?」
ん?誰かと思えばローザさんか。やっぱり天然の吸血鬼は太陽に敏感なのかな?
でも悠灯は太陽神だけどその辺どうなんだろう?今は人に紛れてるから吸血鬼の太陽系等感知の感知範囲外?
「あれ、私と模擬戦する時は使わないでくれるかしら?いくら日光に対して耐性があるって行っても影響を無効化してるわけじゃないんだから。
それに再生力ゆえの不死性を売りにしてる吸血鬼でもアレは再生しきれなさそうだし」
あー、普通はそうか。よくありがちな日光の影響を無効化するデイウォーカー的な吸血鬼は吸血鬼にとって1番の弱点を完全に克服してる時点で同族の中でも上位者扱いだろうし。
何よりローザさんの自己紹介を聞いた感じ耐性持ちなだけで同族からの期待を背負ってここに来るくらいだからそもそも無効化持ちが吸血鬼の国にいない可能性すらある訳で。
「オーケー、できる限り善処しますよ」
実際今の『炎天下』は対モンスター群用広域殲滅兵器だしね。多分アレは対人じゃフルスペック出せない類のスキル。全力を出さないといけない対人戦での使いやすさは最低クラスだし全力を出さなくてもいい対人戦でも殺しが不可なら使いやすさはほぼ最低クラスに近くなる。対人戦で使うなら基本は防御用が安定だ。
「えぇ、そうしてちょうだい。出来れば確約して欲しいところだけれど」
うーん、ジト目吸血鬼。1部界隈に特攻が入りそうなやつ。
その後午前中の授業が2時間分終わってゴーレム講座の時間になった。
「まずゴーレムそのものについて説明するわね」
「ゴーレムとは優れた魔法使いや技術者によって作られる人形のこと。その材質や用途は作り手によって様々。基本的に土人形の名の通り土製が多いけど中には木製や鉄製、場合によっては骨のゴーレムなんかもいるわね。
主な用途は家や工房のといった大事な場所の番人。人によっては護衛や従者、戦闘における駒の1つとして扱うこともあるわ」
そういえば奈落下の迷宮にも大きなゴーレムがボスとして出てきたな。あれは迷宮によって作られたゴーレムだろうから今回扱うゴーレムとは別なのかな。
「ホムンクルスと違ってゴーレムは完全に意思のない人形でしかないわ。もしゴーレムの形をしていて自我がある存在がいたならそれはゴーレムでは無くホムンクルスと言った方が正しいわね。よくゴーレムをオートマタの一種だと思っていたり逆にオートマタをゴーレムの一種だと思ってる人もいるけど実際は全然違うからその辺も覚えておくように」
ふむふむ、とりあえず今のところはゴーレムが主に忠実な意思が無く主の命令でのみ動く人形でオートマタが決められた動きを自動でこなす人形、ホムンクルスが意思のある人造生命体って認識でよさそうだ。
その後もゴーレムについてがメインで時々オートマタとホムンクルスについての説明もある講義は続いてお昼休み前の4時間目で終わった。ゴーレム、オートマタ、ホムンクルス、どれもちょっと興味が湧いてきた。学園に通ってる間に図書館でそれ関連の本を読み漁って出来そうなのがあったら自作してみよう。
name:キールヴァン・クリンゼン
種族:魔法族
mainjob:魔導士
subjob:槍使い
種族Lv:23
体力 C
魔力 B
筋力 D
知力 C
ふむ、魔導士兼槍使いか。そしてステータスは魔力型。ステータスのランクは同レベル帯での相対値と本人の能力から算出されるらしいから同レベル帯では優秀な方か。まぁ僕達召喚された異世界人は補正がかかるからこの考え方の例外だけど。
そんな風に思ってたら審判の合図で決闘が始まった。
「闇よ、炎よ、混じり合い槍となれ『黒炎槍』!」
キールヴァンは決闘開始と同時に4本の槍を魔法で作りだした。それは炎と闇の2属性、何気にこの世界基準では魔法を使う人にとって中難度以上の行為。
人格とかは置いといて能力自体はやっぱり優秀なんじゃないかな。まぁその魔法は僕には全く効かないわけだけど。
「『万蝕之龍皇』」
発動した『万蝕之龍皇』から生み出した泥と液体の間のような粘性の物質で龍の頭を模したもの作りそれで魔法を喰らった。
「纏い、喰らえ『煉獄顎』」
さらに龍の頭を作った物体で制服の上から体を覆い、ロングコートのように形を変えた。それから体の周りにさっき魔法を喰らったのと同じものを展開、さらにそれに紫灰色の炎を上乗せする。結果生まれるのは炎を纏ったあらゆるものを喰らう龍の顎。
「━━━っクソッ!!『詠唱破棄』『連続装填・黒炎槍』!!」
それを見てキールヴァンは最初に使ってきた魔法を4発から一気に16発に増やして同時に撃ってきた。
数も多く詠唱も破棄しているから隙も少ない。相当優秀なことが分かる。だが無意味だ。
「解体、圧縮、形成━━『破蝕ノ剣』」
龍の顎を1度解体して右手のひらに圧縮、そして形を剣状に整える。その結果生まれるのは装飾や色の派手さの無いドロドロとした剣の形をした鈍器とも言えるような何か。
それをキールヴァンが放った16発の魔法が着弾するタイミングに合わせて横薙ぎに振るうと剣の軌道上に射線が被る魔法と剣に直接当たった魔法の全てが一瞬にして空気中に解けるように消えた。
「なっ!?」
そしてそれを見たキールヴァンは驚きで動きを止めた。当たり前だけど間抜けな隙を晒した相手を咎めない理由は無い。
「闇よ、炎よ、混じり合いて螺旋を描け『黒炎螺旋槍』」
『黒炎槍』より込められた魔力が多く、さらにその規模も大きい渦巻く黒い炎の槍。それが僕に向かって放たれた。
「『魔力武器化』水氷複合『群青刀』」
それに対するは水と氷の魔力を合わせて作り出したひと振りの刀。刀身の先端と触れている地面が凍りつき始めている。
「『六柱氷壁』」
火精蜥蜴をその炎ごと斬り凍りつかせたその刀を逆手に持ち地面に突き刺すと周囲を覆うように6本の氷柱が生えさらにそれぞれを繋ぐように氷の壁が立つ。
出来上がった氷柱壁に渦巻く黒炎の槍が突き刺さる。その炎によって氷が溶けるもそれは瞬時に修復され溶けて刺さった槍を押し返す。さらに押し返された槍は接触している箇所から徐々に凍りつき始め末端までそれが進むと砕け散った。
さてと、ここら辺で決めに行くとしようか。
「『風束ねて嵐と成し、雷集いて核雷と成す』」
右手を前に伸ばしその周りに風と雷を纏わせ、それを合わせた物を圧縮して槍のような形に変化させる。
「『其は万物を焼き尽くす終末の火』」
それを腕を上げ、空に向けて撃ち放ち圧縮状態を解除することで炎と雷を内包した球状の嵐を作り出した。
「『天よその弓に矢を番え、地に向けその弦を引け』」
嵐は半月状に形を変え放った槍と同じサイズのものが矢として番えられた。
「『天より下りて地を焼き尽くす破滅の矢』」
そして手を振り下ろすとそれに合わせて矢が放たれる。
「『灼嵐之天弓・破浄之地矢』」
放たれた槍程の大きさの矢は真っ直ぐ地面に当たり嵐とそこに内包する雷を周囲に向けて解放した。暴風によって土煙が生まれその中から火炎と雷撃が相手を襲うという直撃しなくても周囲に大きな被害が出そうなこの魔法。さすがにこれで終わったでしょ。
そう思っていたら、
「『黒炎砲』!!」
生まれた土煙が晴れる直前、煙の奥から黒い炎が僕に向かって一直線に放たれた。それに対して僕の手はこれだ。
「『炎天下』」
このこっちの太陽神からの特典であるこのスキル。その性能はまだ正式に神になってない僕が使っても概念クラスに片足突っ込んでるレベル。控えめに言って世界のパワーバランスが壊れそう。
さすがに常時太陽と同じ熱さの炎ってわけじゃないけど温度を上げようと思えば鉄が蒸発するくらいまでは簡単に上げられる。
『炎天下』で生み出した炎を纏わせたままの腕を前に突き出し黒炎に対してその炎を放つ。それは一切の抵抗なく黒炎を飲み込み、それを終えると炎は黒炎に向けて放つ前と同じように腕の周りに再び纏われた。
「で、まだやるか?」
放ち終え手元に戻った炎を棒状に圧縮し、その状態でキールヴァンにある程度熱が届く距離まで突きつける。ほぼゼロ距離まで近づけたらその部分が炭化しそうだしね。
「ぐ・・・・・・こ、降参する」
それじゃこれで終わりか。まぁ炎の塊を押し付けられてるわけだけだから普通は諦めるか。僕みたいなぶっ飛んだ再生力かこの熱量を至近距離で受けても即死しない耐久力、あるいはその両方があれば『炎天下』を無視出来そうだけど。
今回の決闘は時間だけを求めるなら初手『炎天下』で焼却するのが最適解だったろうけどそれをすると敵判定ならとりあえず殺すって選択が増えそうだからさすがに自重した。
「真緒くんお疲れ様」
入ってきた方から戻ると悠灯が待っていた。凄いニコニコしてるな、可愛い。この後はネロの方にも行かなきゃ。面倒そうな後始末は用事が済むまで生徒会に任せておこう。
後始末を全て投げ出してネロのところに着くとちょうど僕達の方に走って来ていたネロが途中からゆっくり歩いて来て僕の前まで来ると倒れ込んで来た。
何も言わずにそのまま抱きしめてきた。だから僕の方も抱き締め返して軽く頭を撫でた。
「ネロ、帰ろっか」
決闘が終わって帰って来た。今は悠灯とネロの2人と一緒に『万物創造』で一時的に創れる異空間の中にいる。
この異空間の維持は今みたいにほとんど何もしないまま3人でいるだけでも数時間が限界で戦闘訓練だったり人数増やしたりしてリソースの使い先が増えると一気に維持出来る時間が短くなるから正直いってあんまり使い勝手は良くない。
だけど今みたいにネロに膝枕されてる状態はこうでもしないと学園に通ってる間はほぼ無理だからね仕方ないね。
ちなみにこの膝枕はネロの要望だから一応従者でもある僕には断れないわけで。まぁ今回みたいなのは僕の役得が大きいから嫌なわけじゃないんだけどね。
「ネロ、交代する?」
「ん、はい」
ネロに膝枕されていた状態から今度は交代して逆に僕がネロを膝枕する。そうしてる間の悠灯は僕の背中にもたれかかってどこから取り出したのかわからない本を読んでる。
そろそろ維持出来る時間が限界に近づいてきたな。2人に言って今日はここまでにしよう。
「今日はここまでかな。それじゃあ2人とも、また明日学園で」
「うん、真緒くんまた明日ね。おやすみ」
「マオさんおやすみなさい」
「2人ともおやすみ」
悠灯とネロの2人と別れて自室に帰還したわけだけど、ぶっちゃけやることは昨日の夜と変わらないんだよなぁ。ご飯作って風呂貯めて、克墨と剋久夜の3人でご飯食べて寝る。そして朝起きたら準備を済ませてまた学校。うん、癒しがある分全然マシだ。
さてと、今日の夕飯は何を作ろうか。異世界産食材で作る地球料理擬きか異世界産食材で作る純異世界料理か。個人的にはパスタ、特にカルボナーラが食べたいけどスパゲティとペペロンチーノに似たパスタはあるのにカルボナーラは無いからなぁ。
パスタさえ茹でればサクッと作れるインスタントソースが恋しい。とりあえずミートスパゲティ作ったけどやっぱり食べ慣れてるのと若干違う。
はぁ、やっぱりパスタは作るの楽だしバリエーションもそこそこ多い優秀だわ。パスタ最強。コスパも最強。
朝ごはんはパンとベーコンと目玉焼きのテンプレセット。こっちに来てから朝も結構食べるようになった気がする。
食べ終わったらそのまま教室に行った。そして教室に入ると僕とジークと決闘したキールヴァンとその取り巻き2人とケーニッヒの机は無くなっていた。
4人消えたからクラスの係分担のうち保健委員、図書委員、学習委員、選挙管理委員の人数が減って1人ずつになった。
あと朝礼前に入ってきた担任から決闘の掛け金は明後日までに払われるって聞いたから払われたら悠灯とかネロと一緒に夜ご飯食べに行こうかな。
そして今日の授業はいつもの座学に加えて3限目にゴーレム講義なるものがあるみたい。
「ねぇ、昨日の決闘で使った炎の剣。あれ太陽に類するものよね?」
ん?誰かと思えばローザさんか。やっぱり天然の吸血鬼は太陽に敏感なのかな?
でも悠灯は太陽神だけどその辺どうなんだろう?今は人に紛れてるから吸血鬼の太陽系等感知の感知範囲外?
「あれ、私と模擬戦する時は使わないでくれるかしら?いくら日光に対して耐性があるって行っても影響を無効化してるわけじゃないんだから。
それに再生力ゆえの不死性を売りにしてる吸血鬼でもアレは再生しきれなさそうだし」
あー、普通はそうか。よくありがちな日光の影響を無効化するデイウォーカー的な吸血鬼は吸血鬼にとって1番の弱点を完全に克服してる時点で同族の中でも上位者扱いだろうし。
何よりローザさんの自己紹介を聞いた感じ耐性持ちなだけで同族からの期待を背負ってここに来るくらいだからそもそも無効化持ちが吸血鬼の国にいない可能性すらある訳で。
「オーケー、できる限り善処しますよ」
実際今の『炎天下』は対モンスター群用広域殲滅兵器だしね。多分アレは対人じゃフルスペック出せない類のスキル。全力を出さないといけない対人戦での使いやすさは最低クラスだし全力を出さなくてもいい対人戦でも殺しが不可なら使いやすさはほぼ最低クラスに近くなる。対人戦で使うなら基本は防御用が安定だ。
「えぇ、そうしてちょうだい。出来れば確約して欲しいところだけれど」
うーん、ジト目吸血鬼。1部界隈に特攻が入りそうなやつ。
その後午前中の授業が2時間分終わってゴーレム講座の時間になった。
「まずゴーレムそのものについて説明するわね」
「ゴーレムとは優れた魔法使いや技術者によって作られる人形のこと。その材質や用途は作り手によって様々。基本的に土人形の名の通り土製が多いけど中には木製や鉄製、場合によっては骨のゴーレムなんかもいるわね。
主な用途は家や工房のといった大事な場所の番人。人によっては護衛や従者、戦闘における駒の1つとして扱うこともあるわ」
そういえば奈落下の迷宮にも大きなゴーレムがボスとして出てきたな。あれは迷宮によって作られたゴーレムだろうから今回扱うゴーレムとは別なのかな。
「ホムンクルスと違ってゴーレムは完全に意思のない人形でしかないわ。もしゴーレムの形をしていて自我がある存在がいたならそれはゴーレムでは無くホムンクルスと言った方が正しいわね。よくゴーレムをオートマタの一種だと思っていたり逆にオートマタをゴーレムの一種だと思ってる人もいるけど実際は全然違うからその辺も覚えておくように」
ふむふむ、とりあえず今のところはゴーレムが主に忠実な意思が無く主の命令でのみ動く人形でオートマタが決められた動きを自動でこなす人形、ホムンクルスが意思のある人造生命体って認識でよさそうだ。
その後もゴーレムについてがメインで時々オートマタとホムンクルスについての説明もある講義は続いてお昼休み前の4時間目で終わった。ゴーレム、オートマタ、ホムンクルス、どれもちょっと興味が湧いてきた。学園に通ってる間に図書館でそれ関連の本を読み漁って出来そうなのがあったら自作してみよう。
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けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
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