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第一世界 2章 魔国編

23,名付け

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「はい!それじゃあ第1回幼女ちゃんの名前決め大会を始めまーす!」

 ゆうひの司会でみんなであの子の名前を考えることになったわけだけど・・・・・・なんかゆうひのテンション高いな。神様として結構長い時間すごしてるはずだけどこうしてみると見た目の年相応なんだよな……


「それじゃあみんな、思いついたこの子の名前を挙げていってね!

元々は真緒くんに名付けしてもらおうと思ってたんだけどせっかくだから」



「じゃあ私から、四羽よつばちゃんはどうかな?4つの精霊が合わさって生まれた子だからそこから考えてみた」

 ふむふむ、晴空が考えたのは四羽か。確かに4つの精霊が集まって生まれたのがこの子だからそれを名前に活かしてるのはいいと思う。

「他に案を出すやつはいないか?なら次は俺だな。俺はオスクロルって名前を出す。この名前は俺が最も尊敬しているかつての恩師の名から1部とった。ちょうど髪色も同じだし名にあやかって彼女のように成長すれば今の世では幸せになれるだろう」

 ほぅ、ルキウスも結構色々考えてくれたんだ。それにしてもかつての恩師か。あのルキウスがそこまで言うなんてどれだけの人なのか気になるな。まぁそれを知るのはルキウスから聞くしかないんだけど。

「えっと、次は私が。私はノクシーという名前がいいと思います。この世界で夜を表す言葉からとった名前ですが彼女の髪は夜空のような美しい黒ですし少しだけ見えた目は空の星々のような金色でしたから」

 ネロは夜空からとったか。確かに闇のような冷たい黒じゃなくて夜空のどことなく暖かさを感じる黒だしね。それに目の色まで見て考えてたとはね。

「それじゃあ残りは僕とゆうひだけだけど僕から先に言おうか。僕が考えたのはつどいって名前、名前の由来は晴空とほとんど同じだけど僕は4体が集まった、って言うところの集まったってところからとったよ」

 さて、残りはゆうひだけだけどどんな名前を考えてるのかな?

「ふむふむ、みんなよく考えてるねぇ。どれも理由までちゃんと考えてるしね。

あぁ、もちろん私も考えたよ。私が考えた名前は克墨かすみだよ。あの子の髪は墨色みたいで普通の黒とは違うしどことなく上品さも感じるしね。あとせっかくだから私が元いた世界で見守ってた国の言葉から取ろうと思ってね」


 ふむ、これで全員分名前が出揃ったな。ゆうひの考えた名前は克墨、か。確かにあの子の髪はただの黒って言える色じゃないからね。絵の具チューブからそのまま出したような黒じゃなくて赤青黄色に緑とか紫とか色んな色を混ぜ合わせて出来たような黒。この表現で普通の黒とは違うって言うのをすぐわかってくれるやつは今は周りにいないけどとにかくそんな感じ。


 ・・・・・・5個名前が出たのはいいけどこれ結局どうやって選ぶんだ?それぞれ自分が出した名前以外でいいと思ったものを挙げるとか?

「んー、名前案出したはいいけどどうやって決めてもらおうかな?」

「この子に決めてもらうのが確実だけど……メモとか取ってないよね」

 晴空がそう言うと僕含む全員が頷いた。やっぱりメモとかあるわけないよなぁ。製紙技術自体はそこそこ発達してるとはいえ地球みたいに使い捨てにできるようなものじゃないし。

「紙は一応ありますから書き出しましょうか?」

 そうネロが言ったけどここで使ったらその紙を再利用するのは不可能に近いんだよな……この世界万年筆もどきで文字書くから。



「うーん・・・・・・よしっ、こうしよう。一応私これでも八百万の神なんて言われてる数多の土着神のトップだから自分の神格で可能なこと以外にもある程度のことは出来るんだよ。さすがに専門神には劣るけど」


 そう言ってゆうひは指を弾くと粒子が集まりA4用紙を……ん?おいちょっと待てや。なんでA4用紙?かなり上質な紙を突然何も無いところから生み出したのを見てネロがぽかんとしてる。

「そしてもう一個こうっ!」

 また同じように指を弾くと今度はボールペンが……ってもう突っ込まないぞ。万年筆もどきか鉛筆が文字を書くものとしてメジャーな世界でボールペンって……また他人に見つかったら面倒事になりそうなものを。

「それじゃあ真緒くんこれにさっき出た名前を書いていって」

 「なんで僕が?ルキウスでも晴空でもネロでもゆうひ本人でもなく」

「あの子は精霊だから精霊界の共通語、精霊語は確実にわかるだろうけどこの世界の共通語が読めるかはわからないからそれなら真緒くんの"全言語理解EX"なら精霊語も読み書き出来るうえに話せるから適任かなって。"言語理解EX"とか"言語理解"なら晴空ちゃんとルキウスも持ってるみたいだけどそれだとスキルの対象の言語がこの世界のもの限定だから」

 なるほどね。普通の言語理解系統とは違う"全"言語理解系統なら精霊語にも効果があると。
 そういうことなら言われた通り書きますか。ゆうひ曰く僕が書いた文字は相手がわかる文字に自動翻訳されるらしいし。

それにしても文字を対象ごとに自動翻訳とかこれが異世界クオリティー。



 四羽……オスクロル……ノクシー……集……克墨……っと、よし書き終わった。

「うん、真緒くんありがと。

さてと、それじゃあこの5つの名前の中であなたが好きな名前が書いたものを選んでね。あなたが選んだそれがあなたの名前になるから」


 そうゆうひに言われた彼女が選んだのは・・・・・・





「ん、わかった。えーっと・・・・・・これがいい」


 そう言って彼女が指さしたのはゆうひが考えた名前の克墨かすみだった。



「あっ、私が考えたやつだ。それじゃあこれからよろしくね。克墨ちゃん」


「ん、こちらこそよろしく」

 ・・・・・・口数が少ない少女と活発系少女、何気に2人とも見た目の年は近いんだよね。今もゆうひが克墨の手を掴んで上下に両手を振ってるけどなんとなく姉妹と言われても信じられそう。
 髪の色は桜色と黒髪で全然違うけど雰囲気とかが似てる気がする。ゆうひが今よりもう少し成長した見た目だったらこの世界なら親子でも通った可能性があるかもしれない。


 そう言えばゆうひって名前は思い出したけど漢字が分からないんだよな。

「ゆうひ、今更だけどゆうひってどんな漢字書くんだ?」

「んー?私の名前ねー・・・・・・あの時その場で決めた名前だから漢字は何にするかまで決まってないんだよね」

 ふむ、漢字未定か。せっかくだしこの際だ、晴空も混じえてゆうひの漢字も考えたらどうかな?

「せっかくだし今ゆうひの名前にあてる漢字考えない?」

「んー、私はいいよ。真緒くんが考えてね?」


「あぁ、わかった」

 さて、どんな字にしようか……ゆうひは天照なわけだからせっかくだし明かりとか火に関連する字を使いたいな。





 ・・・・・・少年思考中・・・・・・





「・・・・・・まぁありきたりかもしれないけど、悠灯、はどうかな?

悠は想うとかゆったりしてるみたいな意味がある字だからゆうひに合うと思う。そして灯は何かを導く灯りみたいなイメージがあるから使った。

ゆうひは僕がほとんど覚えてなくてもずっと想ってくれていてダンジョンで再会してからは目的を明確にしてある意味導いてくれたとも言えるしね」


「・・・・・・気に入らなければ他のを考えるけど・「んーん、すごくいいと思うよ!!」」

 おぅ、途中で食い気味に割り込んでくるくらい喜んでくれたなら考えた身としても嬉しい。


「~♪~~♪♪~~~♪♪♪」


 今もなんかご機嫌に鼻歌歌ってる。


「~~~」

 そして今は横に座って僕の方に軽く体を預けてきてる。僕はそんな悠灯の髪をいつもみたいに梳いてるけどほんとに全然引っかからないな……さすがは神、多分手ぐしでも一切引っかからないんじゃないかな?艶もあって柔らかくて1本1本が細い上にハネやクセもないし。


 ・・・・・・そういえば僕いま克墨に名付けして悠灯の漢字を決めたけどこれ2人への贈り物扱いになる?もしなるならネロだけ何も無いってのも後々響くかもしれないよな……さすがにその程度では怒らないって言われるかもしれないけど1人だけ何も無しって言うのもね、恋人なんだし。

 地球にいた頃も法律で一夫多妻と多夫一妻が認められてるからっていわゆるハーレムとか逆ハーみたいなことしてる奴が高校にもいたけど相手が多いとそのうち1人に構う時間が減ったりしてそれが原因で崩壊したって話を聞いたことあるしね。




「あ、そう言えばマオさん、試験の結果は試験から1週間後にそれぞれの試験会場前に掲示されるみたいですよ」

 あぁ、そうなのか。昨日が試験だったから今日入れてあと六日後か……早く結果を知りたいのと結果を見るのが怖いな。落ちたら悠灯とネロが行くのに僕は学園に行けないわけだし。

 ・・・・・・まぁ半分はここで落とされて上位半分が剣術や魔法の試験を受けることになるって聞いたしそれなら最悪上位5割以内に入れてればいいんだ。それならまだ可能性がある。剣術と魔法の試験を上位で抜ければいい。


 色々考えても結果は覆らないからあと六日間これまで通り陛下に修行を付けてもらって過ごそう。一応試験までの準備になるし。



 あぁ、もちろん悠灯とネロを放置したりなんてしないよ。それに2人だけじゃなくて克墨も僕の精霊だからコミュニケーションを取らないと。





・・・・・・少年修行&交流中・・・・・・





 あれから5日経った。明日はとうとう結果発表日だ。今日はなかなか寝られないかもしれないから早めにベッドに入るとしよう。




 あぁ……結局昨日はなかなか寝られなくて最終的に魔力を消費して強制的に寝たな。

 それにしても、学園の第1試験合格者発表は高校入試の合格者発表の時より緊張する。







 もうすぐ発表される時間だしそろそろ準備しないと。

 ネロもさっき食堂で別れたから今準備してるだろうし。悠灯は魔国とは別の場所で試験を受けたらしくそこに向かうみたい。

 そして今僕はネロと恋人関係だけどまだそれは発表されてないから発表されるまでは街中で人の目がある時は前みたいに従者とその主のような関係に見えるようにしないと。


 さてと、着替え終えたことだしネロの部屋の近くで待ってようかな。



「ごめんなさい真緒さん。お待たせしました」


「ん、僕も今来たところだから大丈夫だよ。それじゃあ見に行こっか」

「はい行きましょう」


 あっ、そうだ。あのことも事前に言っておかないと。万が一外で普段と同じようにしてたら確実に面倒なことになる。僕がこの国の貴族で何か功績を残したりしてるならそれもないんだろうけどね。

「ネロ、外に出る前に言っておかないと行けないことがあったんだった」

「?何かありましたっけ?」

「まだ僕とネロが恋人関係なのは公表されてないし僕はこの国の貴族でもないから下手すると貴族に餌を与えることになるかもしれない。
だから正式に婚約発表が出るまでは従者とその主の関係に見えるようにしないといけないねって」

「あっ……でも・・・・・・いえなんでもありません。

確かにそうですね……でも外に出るまではこうしていてもいいですか?」

 ネロが何か言いかけたみたいだけどそれは口には出さないでやめた。もしかして一国の王女なんて立場だから目先の利より後々の利益と不利益を天秤にかけて発言しないといけないのが体に染み付いちゃってるのかな?

 だけど言うのを辞めた後に言った言葉の後突然ネロが腕を組んできた。まだ城内とは言え一応城に来てる貴族に遭遇する可能性もあると思うんだけど……すれ違うメイドさんや文官さんからは生暖かい視線を向けられる、まぁこれにはもう慣れたからいいんだけど。

 それにしてもネロは付き合いたての頃より積極的にアピールして来るようになってきたな。もちろん嫌じゃないけど。


「ん?もちろん。・・・・・・でも公表されれば街中でも堂々と腕を組んだりできるのに……学園の入学試験が合格したら在学中に何か功績上げて最低限騎士爵になるのを目指そうかな」

 この世界は地球にもかつてあった所謂五爵位と言われる爵位の他、辺境伯、騎士爵、そして魔法が実在する世界故か魔法に秀で国に貢献した者が就く魔法爵なんてのもあるけど僕はその中で1番なれる可能性がある騎士爵をとりあえずの目標にしよう。

 もちろん最終的には公爵になって他の貴族を勇者としての身分と公爵位としての権力で二重に牽制出来るようになるのが1番なんだろうけどね。


「マオさん……ごめんなさい・・・・・・いえ、謝るのは違いますね。マオさんありがとうございます。私に出来ることは少ないですが精一杯のことはやりますよ」

 ん、やっぱり謝られるよりありがとうって言われた方が嬉しい。ていうかネロが出来ることが少ないって言ってもネロがいるだけでそれがモチベーションになるんだから何もしなくてもいるだけで最大限の効果を出してるんだよね……これは気負い過ぎないように見とかないといけなさそうだ。






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