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第一世界 2章 魔国編

18,異世界から来た勇者が執事になるそうですよ

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 胸元に抱きとめる形になっていた王女様を半ば力ずくで引き剥がしたところでさっきまでフリーズしていたメリアさんが急いで降りてきた。


 そのあとは馬に乗っていた騎士団の人達の1部に先導されて城を進んで行った。そして巨大な扉の近くまで来るとその方向には行かずにその横の廊下を通って小部屋に通された。
 そして王女様と騎士の人たちとは別れて謁見の準備が整うまではこの部屋で待っているように言われた。


(ねぇ、僕謁見の作法とか何も知らないんだけど。召喚されてすぐの謁見の時は楽にしていいって言われたし)

(((あー)))

・・・・・・3人ともまさか忘れてた?いやそんなわけない……いやありそうだな、今の反応的に。


(とりあえず謁見の時に必要な作法で重要度が高いやつから教えて。最悪謁見中にリアルタイムででもいいから)

(((りょー)))

 いや反応かっる。ルキウスまで……3人とも初めてあった時と比べてキャラ崩壊が著しいな……







 その後は3人から色々教えて貰いながら時々メリアさんじゃないこの城に勤めてるっぽい普通のメイドさんが持ってきてくれた飲み物を飲んだりして過ごしていると準備が整ったみたいで呼びに来た。

 呼びに来たメイドさんの後をついていわゆる謁見の間らしき場所の扉の前に着いた。あー、どんな王様が相手なんだろうな。ルキウスとかアマテラスみたいな高い身分を振りかざすタイプでないことを祈ろう。まぁあの王女様の一般冒険者に対する対応から推測するにその確率はかなり低いと思うけど一応ね。






 はい、3人に言われた通り動いていたらいつの間にか謁見が終わってました。


 褒美に関しては元々決めてた通りにお金とこの国に滞在している間の宿、そして国の騎士団と魔道師団の訓練に参加する権利を挙げると全て許可された。

「実はもうひとつ話があるんだが・・・いまこの部屋にいる者はこの後ネロとマオ殿と我の3人で話すことがある故この部屋の外に出ていろ。全員話が終わるまで中に入ることは禁じる」

 えぇ、褒美以外に一体何言われるんだ?それもわざわざ貴族や国の重役を全員部屋から追い出してまでする話って……


「さてと、話だが……貴公には我が娘であるネロの執事になってもらいたい。本来はもう少ししてから学園に入学する前に城に勤めている者達から選ぶ予定だったんだが……この話をする前にネロが貴公に自分の執事になってもらいたいと言ってきたのだ。」



・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・



 はぁ!?専属執事?しかも貴族どころか一国の王女のって……僕は地球でもいたって普通の一般人だったから執事なんて出来ないと思うんだけど……王様はそこら辺どう考えているんのかな?

「もちろん給金は出す、さすがにタダで働けとは言わんよ。そして求めた褒美の中にあったこの国での拠点だが、王城の部屋を与える。それに騎士団、魔道師団との演習に参加するにも王城に部屋があるのは有用だと思うがどうだ?」

 いやどうだ?って、確かに朝起きてから準備して即演習に参加できるのは移動に割く時間がいらなくなるからメリットではあるけど執事って忙しそうだしそもそも演習に参加できないんじゃないの?

「専属執事と言っても丸一日ついている必要は無い、それにネロは学園に通うために毎日数時間勉強しないといけないからその分は空き時間になるぞ」

ふむ、空き時間と自由時間はあるのか。お金を稼ぐために働く条件としてはかなりいいけど……

「あぁそれと、初日から執事として働くのではなくメリアから執事としての振る舞いや作法なんかは叩き込まれるからその辺は問題にはならない」

 うわぁ、ほぼほぼ拒否権なんてないじゃないですか。さすが国のトップ、頼み事がもはや命令に近い。

「えぇ、分かりました。受けますよ。いつまで続けられるかわかりませんけどね」

「おぉ、受けてくれるか。あー、貴族以上の子息のほとんどは学園に行く時に自分の従者と一緒に試験を受けるから貴公もネロと一緒に学園都市にある学園に通うことになる」

 はぁ!?!学園に??ってか学園都市にある学園ってそれこの世界でもトップクラスのほとんどが貴族ばっかの学園じゃん。
 王城の書庫で気分転換に見つけた本に書いてあって読んだ時に絶対ここには行きたくないって思ったところだよ……貴族ばっかの学園とかどう考えても面倒事の予感しかしないし。



 それにしても、学園に行くなら勉強もしないとなぁ……王様から城の書庫を自由に使っていいって言われたけどこれは当分演習参加は出来ないだろうね。

 召喚されて数日後にダンジョンで奈落に落ちて召喚されてから通算2ヶ月くらいでダンジョンから脱出、そしてこれからまた2ヶ月後にはこの世界トップクラスの学園に通うための試験が待ってるって、この世界に来てから色々と濃すぎるでしょ。

 奈落に落ちる前に借り受けたこの短剣も、奈落での戦闘で何度か魔改造したけど元は森宮さんのだから返したいんだけど、それも少なくとも年単位で掛かりそうだなぁ……

 とりあえず今日は寝て明日になったらまた予定を立てようか。








 あれから最近はずっと自分に与えられた部屋で起きると最低限身だしなみを整えて食堂に、他のメイドさんや執事さんと一緒に朝ごはんを食べる。
 そのあとはメリアさんから従者としての様々なことの手ほどきを受けて終わるのは昼過ぎ。そしてそれまで終わればお昼からは学園試験に向けての勉強。

 国語はこの世界で多く使われている公用語、これは僕の言語理解の効果で余裕。
 次に数学はこの世界は地球のラノベにある異世界のように足し引きだけできればいい訳では無いらしく平民でも親から四則演算までは習うらしい。商会で働いたりいわゆる公務員であるギルド職員や文官になるためにはそれに加えて関数を学ぶ必要があるらしく試験には四則演算全てを使ったなかなかに難しい問題が出るらしい。
 まぁネロ様に頼んで実際に問題集を見せてもらったところ難しいと言ってもこの世界基準で地球で言えば高校試験レベルだったのでこれも何とかなりそう。

 あと王女様を名前で呼んでいるのは本人からの希望とメリアさんから

「貴方は顔はそれほど悪くないですしネロ様に変な虫がつかないように学園では名前で呼ぶんですよ」

って言われたことで学園では名前呼びが確定。そして学園に行く前に名前呼びになれるということで今も名前呼びしてる。

 それにしても、試験に物理科学と英語に該当するものがないのはよかったけど地理歴史がきつい。この世界の歴史とか地名なんて知らないし。一応それを知る前に読んだ物理の本によると魔法によって物理法則が書き変わることはあっても基本は地球と変わらない物理法則が働いてるっぽい。

 あっ既に僕が王国で召喚された異世界人ってこととアマテラスたちのことは紹介してある。
 ルキウスが出てきた時に王様と宰相と他貴族が全員まとめて跪いたのには驚いたけど今では色々手伝ったりしてて馴染んでる。初代魔王ってこともあって他人に指示を出したりするのは得意らしい。






「マオさん!お父様から聞いたんですが、王国の勇者様達が学園に来るそうですよ!」

 えっ嘘ん。それなら森宮さんに短剣返せたりするかな?そして今のセリフの最後の部分はラノベのタイトルっぽかったね。


 それにしても勇者達が学園に来るのか……もしかしたら勇者固定特別クラスみたいなのあったりするのかな?よくラノベとかであるような1クラスまるごと勇者オンリーのクラスみたいな。それと勇者だけ試験免除で特別枠合格とか。
 まぁそれで全体の合格者枠が減ったりしなければ何も言う気は無いけどさ。秋と森宮さんとの再会は楽しみだし。

 さてと、また地歴の勉強を再開しますかね。








 そして勇者が学園に通うことを知ってから1ヶ月半が経った。あと半月で試験日か。あれからメリアさんの毎日手ほどきと独学での勉強、そして少し時間がある時や気分転換したい時なんかには騎士団や魔道師団の演習に参加させてもらったり城の書庫で蔵書を漁ったりして過ごしていたからステータスは全然見れてなかったんだけどどうなってるかな?



name:九條 真緒
種族:吸血鬼(始祖級•根源種)
mainjob:魔神
subjob:神剣使い
種族Lv:256
体力 C(S)
魔力 B(SS)
筋力 C(S)
知力 B(SS)

スキル─────────────────
・ノーマルスキル
『肉体超強化 Lv50』『魔力武器化 Lv66』
『重金剛 Lv57』『飛翔 Lv50』
『龍王鱗 Lv89』『咆哮 Lv50』
『身体超強化 Lv50』『立体機動 Lv54』
『空中機動 Lv51』『無尽走破 Lv50』
『体力超速回復 Lv50』『召喚魔法 Lv50』
『呪術 Lv90』『礼儀作法 Lv12』
『家事術 Lv15』『料理人 Lv21』
『書類作成 Lv10』『書類処理 Lv12』
『魔法陣 Lv8』

・マスタースキル
『死霊魔法 Lv39』『闇支配 Lv80』
『恐怖支配 Lv50』『万能執事 Lv23』

・エクストラスキル
『全言語理解EX』『融合』『交換』
『紫灰の焔』『天霊化』『万纏』
『肉体変化:龍』『瘴気生成 』
『魔剣召喚』『聖剣召喚』

・レジェンドスキル
『風神雷神 Lv6』『森羅万象 Lv5』
『覇王 Lv1』

・ユニークスキル
『降神装・陽炎』『神剣召喚:叢雲剣』
『神眼』『神剣召喚:神焔剣』『炎天下』
『万物創造 Lv5』『スキル合成』
『自己改造』『始祖吸血鬼 Lv1』
『魔神 Lv3』『空間侵蝕』『万魔殿』
『七元徳』『七大罪』
────────────────────

称号──────────────────
『光の加護』『創造神の加護』『異世界人』
『精霊と絆を繋ぎし者』『絶望に抗いし者』
『槍嵐神の加護』『太陽神の寵愛』
『狂気に抗う者』『虹を宿す者』
『武の神髄』『魔導の神髄』『吸血鬼始祖』
『夜の王』『影を統べる者』『不死王』
『神剣の担い手』『陽の下を歩く者』
『神格』『魔神』『戦の神髄』『万魔殿』
『臨界者』『覇王』『聖剣の担い手』
『魔剣の主』『勇者の卵』『魔王の卵』
『万能執事』
────────────────────

 うん、地獄の扱きに耐えた結果が"万能執事"って目に見えるスキルになってるのは良かった。これで何も無かったら心折れてる。そして前見た時に既に持ってたスキルはどれもレベルは上がってないか。

 まぁこれまで毎日執事と試験の勉強だったから逆に上がってたらおかしいんだけどさ。

 息抜き感覚で城の料理人の人達に料理を教えてもらったり魔法陣の勉強してたけどそれがスキルになってるのは嬉しい誤算だね。それと書類仕事関係は自由時間に城内をウロウロしてたら王様に捕まって書類仕事手伝わされた時に生えたんだろうな。まぁ地球に帰ったあとに色々と役立ちそうだしいいか。書類作成はレポートみたいに魔法陣の解析結果をまとめてる時にも効果を発揮してくれてたっぽいし。


 だけど"万能執事"なんて従者としてはトップクラスっぽいスキルを手に入れてる僕でもメリアさんが唐突に後ろにいるのに気づけないんだよな。メリアさんのあれはメイド系スキルにももう一段階上のスキルがあってそれの恩恵?当面はメイド系統に上があるなら同じ従者スキルの執事系統にもありそうだしそれを獲得するのを目標に試験まで執事としての勉強に取り組もう。











それから一週間後、騎士団の演習に参加していると

「さてマオ、学園の試験まであと1週間を切ったけど騎士団と魔道師団との演習で成果はあったか?」

 なんでここに魔王様がいるんですかね、魔王が現れた瞬間騎士団の人達が速攻で跪いたし。

「ガルドさんと打ち合えるようにはなりましたよ。あと魔法面では思考詠唱が出来るようになりました」

 この世界の魔法は詠唱をすることで無詠唱より効果は出やすいんだけど詠唱すると隠密には向かないからそれをどうにかする術がないか調べてた時に見つけて何日か練習した後に演習で試してみたら最初魔道師団の人たちも驚いたけど次の瞬間には相手も思考詠唱で魔法を撃ってきたんだよね。
 この国の魔道師団のレベル高すぎかよ。

 それとガルドさんと打ち合えるようになったといってもこっちは自バフありで相手は自バフ無しの状態でなんだよな……そんなんだからステータスの制限も変わってないしね。

「……思考詠唱までマスターしたならある程度大丈夫か?」

 ん?成果を言ったらなにかブツブツ呟いてるんだけど……正直嫌な予感しかしない。

「よし、今から模擬戦するぞ。なに、本気は出さないから安心しろ。ただ最近書類仕事ばかりで体を動かしたいだけだからな」

 なんの脈絡もなく模擬戦って……それに本気は出さないからってそれ舐めプ?
 いくらステータスが本来より下がってるとはいえレベルアップで上がった分のステータスはあるしスキルも豊富だからいくら国のトップとはいえ舐めプで勝てるほど弱くはないと思うんだけど?

「・・・・・・分かりました、いいですよ。やりましょう。でも本気で来てください、それに僕は制限かかってるとはいえ同クラスのステータスを持つ人よりは強いと思いますよ?」

「はっはっ、そこまで言うならなら我に本気を出させるほど追い詰めてみろ。そうすれば力の2割程度なら出してやるかもしれないぞ?」

 この魔王、煽りおる。いいでしょう開幕ブッパでその慢心を打ち砕いてやりますとも。


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